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第117話 カラードキャメオ迷宮04

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朝一に身支度を済ませ。ロール君に3層以降の情報は無いかを問い合わせた。

「更に下層ですか…。いえ、我らは剣を取ったら引き返せと言われただけで何も」
フィーネにも確認したが嘘は感じないと言うので取り敢えず信用する事にした。

下には興味が無い?入るのは危険?知らない?
剣を持って入ったら駄目だとか。

色々考えられるが行ってみよう!


サンタギーナ隊も全員復調。今日も水筒を配り2から3層の中間で打ち合わせ。

「昨日の出来事は綺麗に忘れて迷宮に集中。魔剣に通用した物が下でも通用するとは限りません。初見はこのままで行きます。

リビングメイルの難点はパーツに分離と結合を繰り返す点です。持っている盾も立派な鈍器。隣接と合体されて壁になるのも、腕で掴まれ取り込まれ圧殺されるのも脅威。

指揮者になるデュラハンも同じ場所に居たら更に厄介。隊列と編隊を組立て、尚且つデュラハン自体が相当強い。

目前の敵の総数がこちらの10倍を超えていたら全て諦めて撤退します。それでいいかい、ニーナ」

「異議は有りません」

「今後は2層の棍棒レイスが壁になってくれる。1層さえ定期的に掃除をしていれば氾濫はまず起きない。陣頭指揮は君になるだろうから頑張れ。好き好んで突入する奴は好きにさせればいいさ」
「はい!」

「皆気合いを入れろ!」
全員気合い充分なお返事。
「と言わせて置いて!最初はこの有り難い通話器で交渉から入ります!」

綺麗に転けましたわ。

肘を地面に打ったソプランが。
「やる気が削がれる!お前は何をさせたいんだ!」
「怒らない怒らない。使える手は何でも使おうってさ。折角手に入れたんだし」


整え直し突入した3層奥の大扉。

長い下り階段。片付けた3層と同じく静寂だけが漂う。

不気味な静けさ。嵐の前触れのような。

再下段まで降りると、少し先にまた大扉。左手の壁には現代語の石碑が刻まれていた。

「~愚かな先人たちに捧ぐ~

神へ挑もうなどと笑止千万。

一時の栄華に酔い、己の歩も弁えず挑もうとは。
結果苦労したのは後の我ら子孫。

腐り果てた先人たちの思想に我らの鉄鎚を。

愚か者が造りし魔剣が引き抜かれた時の為に、対抗為得る防具を用意した。

英雄の到来を待つ。
どうかこれで悪しき魔剣を滅ぼして欲しい。

魔剣の崩壊と共に消え去る様に制作した。
悪用せぬ様に願い、この碑を刻む」

あれ?何かイメージしてたのと違うぞ。
「ん?まさか…終わり?」
「うっそ、でしょ」フィーネが勢い良く扉を押し開いた。

そこには何も無い巨大空間が広がっていた。

中に全員が入っても扉は自動で閉まりもせず止まったまま静止している。

歩を進めても何も発動する様子は無かった。

呆然状態のニーナが。
「魔剣を手に突入していれば…戦闘になっていたのでしょうか。守護する兵と」

「どうやら…それっぽいな」

終わっちゃてた…。カラードキャメオの迷宮が。


空間の中央に佇むのは2つの装具。

1つは片方だけの肩当て。

名前:渇望の魔装(古代兵器)
性能:全ての装備品と人体を透明化する
   透過可否は任意(気絶時、装備解除時透過不可)
   防御力+3000(露出部含む)
   装備品の重量7割減
   被即死系攻撃、被致死毒無効
特徴:女風呂と更衣室付近では透過効果が消失する
   無理に使うと装備者の何処かの骨が複雑骨折
   ざまあ見ろ!!

「なんか俺に恨みでもあるのか!」
「真面目な使い方すればいいのよ。潜入調査とかさ」
「ぐうの音も出ない…」


もう1つは額冠。

名前:希望のサクレア(古代兵器)
性能:装備者のカリスマ性上昇
   装備者と身近な者の運気上昇
   弓矢、投擲武具類に対し完全回避機能搭載
   防御力+1000(首から頭頂部)
   強魔法攻撃耐性(全属性)
   外因に依る隊列分離防止機能搭載
特徴:未来のプリンセスに捧げるべき秀作

「あぁ悩ましい。今俺の脳裏に4人位浮かんだ」
「でも今近くに居るのは1人だけでしょ?古代人の繋がりを考えると彼女しか居ないじゃない」
それもそうか。

「じゃあニーナ。その宝剣繋がりでこれもあげるよ。後は血石とパレオはそのまま使って。部下の兵士さんに配った分も合わせてそれだけあれば1層で困る事は無い筈だ」
「何と、お礼を申せば良いのやら…」

「礼なんて要らないよ。王都に帰ればあの欲張りな王様がそれらを寄越せって必ず言うから。そっから君がどうするのかは自由だ。でも出来れば渡さないで欲しいと願う。
折角皆で掴み取った宝物だからさ」
「誓います。もう誰にも渡しません。譲渡を迫られたら国を出る…。若しくは北の諸島にでも逃げます」
この国を捨てるか。そこまでしないくても思うが。

「紹介しちゃった立場でもあるから応援するよ。しかし迷宮の踏破を示す物がまだ無い」

他に何か無いかと見渡しても静端な風景が広がるばかりで何も見付からなかった。

4層で終了かと思いきや。

クワンが一鳴きして天井に向かって飛翔した。

皆で天井を見上げると。中心部に紅い宝石が垂れ下がっていた。

「あの迷宮の感じによく似てるな」
「ええ。本来あれで操っていたのかも」

状況がスフィンスラーに酷似していた。あの宝石でアンデッドの操作を操っていたのなら。

飛び上がったクワンが宝石を根元から引き千切ると。ドスンと言う地鳴り音と共に最奥にまたも大扉が現われた。

「お手柄だクワン」
「クワッ」

持ち帰った紅玉。

名前:傀儡の紅玉(古代兵器)
性能:手勢の最大500騎を自在に操れる(無機物対象)
   人形、土塊、意志の無い装具等
   本体防御力1500(任意で振り分けも可)
   同類と対峙した場合、魅力値、カリスマ性で
   上回れば操作権利を奪う事も可能
   剥奪可能範囲:所有者の視認限度範囲内
特徴:あの忌々しい傀儡士に対抗心を燃やした工作師が
   執念で拵えた逸品

「今、何となくベルさんの姿が脳裏に浮かんだ」
「奇遇ね。私も」

「マジでかよ…」
「似た様な時代に生まれていたとしたら。充分に有り得るお話ですね」
「クワッ」

簡単な相談の結果。俺が試してから魅力値と魔力量最大のフィーネが持つ運びと相成った。



休憩時間を挟む序でに全員で扉以外に何か無いかと探ってみたが特に無し。

いよいよ大扉を開ける時が来た。

これもフィーネが率先して押し開き、目前に広がる光景は手前の4層と似た四角い空間。

5段階段を降りただけのその空間は4層に比べて狭く、壁には茨の紋様がびっしり張っていた。

層内の中央に鎮座する1枚の石版と、その上に置かれたハンドベル。

「~この廃棄迷宮踏破者たちに捧ぐ~

ここへ辿り着きし勇敢なる者たちにこの石版を贈る。

願わくば後世の子孫たちの暴走が止められていると夢見ながら我らは静かに眠る。

この石版が踏破者たちの証明に成れば良いと願う。

  ~忘れられたアルカンレディアの血脈を継ぎし者より~」

ハンドベルも石版も難無く持ち上げられた。
「踏破完了報告に使えるな。有り難く頂戴しよう」


謎のハンドベル。

名前:呼び水の鈴(古代兵器)
性能:任意の対象を近場に引き寄せられる
   効果範囲:発動者の視認限界範囲内
特徴:対象が全裸の場合は発動しない
   ざまあ見ろ!!

「俺に喧嘩売ってんのか!」
「真面目にって言ってるでしょ。好い加減本気で怒るよ」
「調子に乗ってすんません…」


念には念をと探索を重ねたがそれ以上は何も出なかった。

「良し!今夜は迷宮終わっちゃてた踏破記念で祝杯だ!帰ろう」

「おおーー!!」




---------------

昼過ぎに砦に戻り軽い昼食後。夕食用の食材を提供して夕食作成依頼。

その間を利用し借り物道具の返却行脚をした。

タツリケさんにタペストリーを。
「3層の魔剣を破壊した時点で迷宮終わってました。それ以降は空っぽでした」
踏破記念の石版も見せて。

「アルカンレディア…は聞いた事もないが。下層が空っぽならいよいよ美味しくない。私たちは大人しく引き下がるとしよう」

「もし本気でタイラントに興味があるなら。俺たちが帰る時に一緒に運びますよ。ちょい先の話になりますが」

「有り難い。タイラント行きは隊員の総意も得ている。
順当にギルドの仕事を熟しながらシャインジーネで気長に待っているよ」

もしもの時は助っ人お願いしますと付け加えて。
「私たちで協力出来るなら喜んで。とは言えあんまりな無茶振りは止めてくれ」

「お願いするなら見合った報酬をお支払いします。仕事として」

フフッと小さく笑って手を振り返してくれた。心強い!



回復したのに落胆を見せるマホロバさんに数珠を。
「踏破完了しました」

「まっさか本当に遣り遂げてしまうとはねぇ。ウチらも入らなくて済んで万々歳だけどさ…。何て報告すれば良いのかなぁ。ニーメンちゃん」

「存じませんな。有りの侭をお伝えするしかないかと」
「はぁ…。このままサンタギーナに逃げちゃおうか」

「私は家族が居りますので帰ります。何でしたら団長は迷宮で果てたとご報告しましょうか」
「…目撃者が大勢居るのに?無理だよ。生存報告上げちゃったしさ。今更単独でレイスと戦いたくもないし。帰るよ帰ればいんだろ」
毛布をすっぽり頭から被り嫌嫌してる。
あんたは子供か。年上っぽいんだけどね。

「この見苦しい者は無視して下さい。首都まで来られるかは存じませんが。呪いの代価のお支払いは如何致しましょうか」

「あーそれね。あれ言い出したのはモメットだから。
モメット、ちょっと来て」
「はいな♡」相変わらず気持ち悪い。慣れるんだろうか。

「呪い解除の代金をモメットの口座に振り込ませるよ。
その代わりに君に調べて貰いたい事があるから後で話をしよう」
「お仕事ですかぁ。なら喜んで」

モメットとニーメンでササッと証文を取り交わしていた。
「手を、離して頂けますかな」
「もう。恥ずかしがり屋さんなんだからぁ」
好みなら誰でもいいのが良く解った。俺を外してくれ!



砦に戻り、モメットとの話の前にロール&カールと報告打ち合わせ。

モチモチニーナも同席で。
「3層の魔剣だっけ。風呂敷に包めばいいって話だったけど激しく抵抗されちゃってさ。俺がぶっ壊した」
「塵一つ残さず」とニーナ。

「何と!」
「申し上げて良いやら」あんたらコンビだろ。

「陛下へのご報告は私から伝える。光景を目の当たりにしたのは同行者のみ。迷宮踏破の証拠の品もある。それは私の役目であろう」

ロールの眉が僅かにロールした。
「しかし…宜しいのですか?」

「私の素性の事か。それならばとっくにスターレン様はお見通し。安心して私に付け。時期尚早だがこれを決起に現政権を追い落とす方針だ」

「もうそこまでお考えでしたか。為たらば私は何も申せません。死地の果てまでお供致しましょう」
「私も同意します」
「二人共有り難う。スターレン様のご配慮が無ければ昨日に斬り捨てている所だった。貴様らも感謝をせよ」

昨日とは打って変わってペコペコしてる。掌返し過ぎだ。

「報告会には俺も当然同席する。大事には成らないように協力するよ。先ずは王が何を言い出すのか見てやろうじゃないか。それからでも遅くはないと思う」
「感謝します」



ややこしく成る前に退席してモメットと個室へ移動した。
「何ですの?内密のお仕事とは」

「とても危険な仕事だ。断ってくれても構わない。
単刀直入に。南東大陸との航路を開きたい。伝手があるなら密航船でもいい。何か安全に渡れる方法を探ってはくれないか」

モメットが真顔になり姿勢を正した。
「何となく。そんなお話をされるのではないかと思って居りましたわ。ですがそれはとても厳しい難題。

一番の問題は東の隣国ギリングス王国まで女神教側に取り込まれている点。例えそれを切り抜けても。南東大陸側の全港町が封鎖されている状態で。教団の所有する船以外の一切を排除しているです」

「教団員としてじゃないと船にも潜り込めないのか」

「それも上層の幹部連中のみ。正規ルートは略不可能でしょうねぇ。

たった一つ、今直ぐ使える危険が伴う手段としては。ローメインが所有していた海賊船を奪取して最寄りの港を強行突破する以外に浮かびませんわ」

「やっぱそれしか無いかぁ。じゃあここが落着いたらローメインの海賊船が何処に集められてるかだけ調べて貰えるかな。俺たちがペカトーレに行ってる間に」

「それならお安い御用ですぅ♡
大体の目星は付いてますし。でもそれだけで金六千枚以上頂いちゃっても良いんですか?」

「俺にはその価値がある。女神教の連中を欺く為には安いもんさ。時に金だけで動く奴の方が扱い易い。下手な信者よりはね」

「流石は私のスターレン様♡相性ピッ」
「スタンは私の物!可笑しな事言ってるとパパさんここへ呼ぶわよ」
物って言い切っちゃうのはどうかと。
「ヒィィ。それだけはご勘弁を。私の可愛いお尻が二倍になるまでペンペンされたくないの。堪忍してフィーネ様」
「金輪際妄言は吐かないと約束しなさい」
「約束しまーす」
「心が籠ってない!」
「そんなにイライラすると小皺が増えますよぉ」
「あんたの所為だろが!」
「ふーんだ。私の所為じゃないもーん」
子供の喧嘩かいな。

雰囲気ぶち壊しだけど。賑やかなのはいいな。


そんなこんなで迷宮踏破完了の打ち上げが始まった。
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