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第89話 アッテンハイム外務01

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すっきりした朝を迎えた。が空は曇天模様。

朝食を早めに作り、クワン用のお弁当も用意した。

「西寄りはもう雨期だったか」
「失念してた」
「クワァ…」

「ピラリエで傘でも買うのか?」
「私とソプランは車内で待機ですかね」

「レインコートを買おう。逆に服を隠せて好都合だと考えよう。雨でしか売ってない物もあったりするかも知れないしさ」
「ポジティブにだね。屋内の停車場空いてるかなぁ」

「屋根付きが無かったら最悪宿屋で一泊に切替える。馬に風邪引かせちゃ拙いし」
「だね」
「しゃーねえな」
「馬用の掛け物も必要ですね」
「クワァ」


「まだ降ってないけど。ソプラン外嚢1つしか無いから御者頼める?」
「当たり前だろ。何の為に従者連れてるんだ。
主賓に遣らせたら後で俺が上から怒られるだろうが」

申し訳ないと思いつつ。これ以上同行者を増やす気は今の所無い。頑張って貰おう。


だからノイちゃんは環境変化に強い馬を用意してくれてたんだなと感謝しながらの出発。


11時には関所へ到着。

車列の最後尾に並んだが、国賓待遇で検問はスルー。

「スターレン様の馬車とお見受けします」

ソプランが対応。
「そうだが何か」

「レインコートと馬用の面をご用意しております。アッテンハイム側で少々お待ち頂けますでしょうか」

「助かる。雨期用の備品準備を怠ってしまってな」

まだ雨は降っていない。有り難や。

領内に入り雨天対策品を頂いて馬に装着。
長い首下までを覆う目出しフード。イヤイヤする事もなく素直に従ってくれた。結構賢いな。


ピラリスへ向かう途中の砦からワラワラと兵士たちが湧いて来て街道沿いに並んだ。

索敵でも敵意は感知しなかったが、これには勲章を胸に自分が出た。

「この状況は何用か。私は教皇グリエル様よりお招きに預かったタイラント王国の特使である。邪魔立てすれば後に問題となるぞ」

「邪魔をする意は一切ありません!スターレン様でお間違いないでしょうか」

「そうだが」

各所から「本物だ」「あの方が」「お若く見える」などの言葉が聞こえて来た。

「失礼致しました。我らが聖女様をお救いして頂いた英雄様を一目でも拝見したいと表に立ってしましました。
どうかお気に為さらずお進み下さい」

「そ、そうか。今回は外部調査の仕事も兼ねている。程々に弁えよ!」

「志かと。この先でも御目障りでしょうが同種の状況である事は何卒お許し下さい。しかし進路を妨害する輩は居らぬと断言致します」
それが邪魔だって言ってるんだが…。


雨も降り出して来たのでソプランの肩を叩いて馬車を走らせた。

「これピラリスで一泊コースだわ」
「有名人も大変だな。その従者になった俺たちもだが」


車内に戻り。
「どうやら短縮は無理そう」

「有名に成るって面倒臭いね」
「その点は言葉もありません」
「クワァ」

「無理せずピラリスで宿を探そう」
「うん」



ピラリスに到着後。最上級の宿(前回塩撒かれたとこ)に2部屋取りソプランのシャワーを待ち、朝に作ったお弁当で遅い昼食。

こちらの部屋で食事中。

ソプランが。
「サッパリしたぜ。しかしあの女主人の態度は何なんだ」

「水竜教に個人的恨みでもあるんじゃない」
「前は塩撒かれたもんねぇ」

「それは酷いですね」
「クワッ!」


「間違いがあったら問題だからここでの飲食はせずに…
折角だから2組に分かれて夜集合で雨の町を散策しますか」
「クワンティは私が抱えて歩くわ」
「クワッ」

「夕食も含めてね」

「食事も仕事の内ってか。まあやるか」
「庶民の食文化を知るのも重要ですね」

気怠そうなソプランに滋養酒を進呈。
「なんだこれ」
「人間も風邪引かれると困るから。グイッと」

そうかと言って一息。
盛大に咽せながら水をガブ飲み。
「キッツいもん出すなよ。これ何かで割るやつだろ」

「俺たち何時も大体ストレートだし」
「ねー」

「お前らと同じにすんな!」
ソプランの背中を撫でながら。
「お二人は信じられない位にお強いですからね。お酒も」

「絶対美味いもん引いてやるぞ」
「はい」



解散後に馬の拭き上げと餌やりに降りると、既に従業員さんたちが荷車まで綺麗に磨き上げてくれていた。

「何か済みません」
「申し訳ないです」

「お客様であり国賓でもあらせられるスターレン様の馬車です。お手伝い出来るだけで光栄ですとも。
主人の指示とは無関係にやらせて貰ってますんで、気にしないで下さい」

何かありそう…。そうですかと深く追求せず、その場を任せて外へ向かった。

「絶対何かあるね」
「と思って突っ込むの止めた」


ソプランとアローマは北側に行くと言っていたので俺たちは南側を攻める。

タイラントとの交易拠点でもあるピラリスは、街並みこそ真っ白であるけれど、まだ品物としてアッテンハイム色は前面に出ていない。

ロロシュ商団でも多くの取扱のある火の下級魔石も、タイラントと同等なお値段で店売りされていた。

氷はコマネンティ商団がギルドから高値で買い占めているので市場に出回っていない。

「特別珍しい物は売ってないねぇ。強いて言えば壁掛けタペストリー?くらいで」

「教団のロゴ入り…信者しか買わないし。ここじゃあんまし売れないでしょ」

2人言が店主に聞こえてしまったのか。
「お察しの通り。此処いらじゃサッパリ売れませんぜ。
でも何かしら置いてないと出店許可が降りないってなもんです。はぁ…」

「西街道沿いだったらやっぱり売れますか?」

「そりゃもう雲泥の差で。クワンジアからの巡礼者が何でもバカスカ買って帰りますから。私も女神教徒なんで文句はありませんがね。格差ですよ格差。はぁ…」

「文句にしか聞こえない」
「本音と建て前って奴ね」

可哀想になってきたので色付きの蝋燭を何個か買った。

「毎度です。…最近タイラントに向かうお客さんがよく蝋燭買ってくれるんですが。何かあるんですか」

「どうでしょう。みんな淡い色の灯火が好きなんじゃないですかね」
若干心当りはあります。


店の外へ出てもしっかり雨。

「ちゃんとした雨も久し振りだな」
「タイラントやマッハリアではずっと晴天続きだったもんねぇ」

「俺たちって基本的に」
「南北しか移動してないね」

「もう少し回ってご飯屋さん探すか」
「そうしますか」

特色の薄い露店を見て回り、表通り近くで郷土料理ぽい店を発見。

山菜の素揚げにキノコパスタ…しか無かった。

肉類はジビエ物。

フィーネがパスタを食べながら。
「バター醤油…」
「それは心の内に留めましょう」

鹿肉も血抜きが上手く処理されてないのか、獣臭が残って胡椒で誤魔化されていた。

小腹に収める程度ならこんなもんかと腹は満たされたのでクッキーをお土産に購入して帰った。



宿で合流後。お土産を摘まみながら報告会。

「こっちのクッキーはパッサパサ」
「モサモサする」
「グ…」急ぎ檸檬水で飲み下していた。

ソプランペアの揚げパンは。
「質の悪い油でギトギト」
「ベチャベチャですね…」

2組とも撃沈。

「俺らの方は山菜パスタと猪肉の焼き物」
「何方も矢鱈と胡椒臭かったです」

「こっちも似た様な感じ。獣臭い鹿肉だった」
「どっちも似たり寄ったりね」

胸焼けしそうだったので解毒剤を5分割して飲んだ。

「食文化のレベル低すぎだろ」
「判断するのはまだ早いよ」
「前回買ったお惣菜は普通だったもん」
「時期的なものでしょうか」
「クワァ…」

地図を広げながら。

「どっかで物流が寸断されてるのかな…」
「橋とか幾つか壊れてたりして…な」
「ソプラン…。それは余計な発言では?」
「…プイエーラでそっちの確認もしてみよっか」

クワンが首を垂らしながら。
「プイエーラに到着してから西側を飛んで見て来ます」

「お願い。嫌な予感が当たりませんように」
「「祈りましょう」」
「俺もう何も言わねえぞ」




---------------

翌日も変わらずの雨。

英気を養うため、こっそり蛇肉入りの豆腐味噌汁を作り食パンで朝食とした。

「落着く味だな。味噌スープ」
「昨日の夕食が消えて行くような気がします」
「昼は雨宿り出来る場所があったらちょっと料理するかな」
「水は幾らでも降ってるし。浄化してやるわ」
「クワッ」


いざ出発。

ゆっくり休憩しながら行っても14時過ぎにはプイエーラへ到着出来る。

前回走り抜けた道なのでよく覚えている。

何カ所か雨を凌げる場所も在った。

「南で先客が居ないといいけど」
「クルーガーは今大人気だから冒険者が居そう」

「場所の宛てはあるのですね」

「前回クルーガーキングを討伐した時に通った場所があってね。そこで昼休憩しようかなって」

アローマが不安げに。
「やはり…魔物が出るのですね」

「魔物の巣窟はもっと南とか西の深い場所だから余っ程大丈夫だよ。
今のアローマさんの武装ならキングすら雑魚だし」

「何分実戦経験が少ないもので」
「私たちも居るんだから心配ないよ」

フィーネが優しく背中を摩っていた。いいなぁ。


頃合いを見て御者台に移り道案内。
運良く街道から最寄りの場所が空いていた。

人と馬も休憩タイム&お昼。

本日初出しの南国フルーツ。バナナとキウイと生クリームでフルーツサンドにした。

お馬には木桶に貯めた雨水と。藁と人参を与えた。

「シンプルイズベストね」
「スターレン様のお料理には何時も感心させられます」
「ラフドッグで売ってた果物か?」

「そう。食パンに挟んだだけで料理とも呼べないよ。パンも少なくなってきたからどっかで一瞬戻るかな」
「パスタがあるならパン位売ってるよ」

「そう願いたいね」

クワンが一鳴きして。
「馬がバナナを物欲しそうな目で見ています」

「馬ってバナナ食べるのかぁ」
試しに2本ずつ与えてみた。

嬉しそうに鳴いている。

「有り難う御座います。ご主人様。だそうです」
チョロいな…。

フードの上から頭を撫でてみると。興奮してデッカいウンコを生み出してしまった。

スコップで掬って森の奥へぶん投げた。

様子を見ていたこちらも…。
男女に分かれてトイレも済ませて出発。と思いきや。


「智哉。とても残念なお知らせがあります」
スッキリした後に何で御座いましょうか。
「アッテンハイムの冒険者は…学習能力が無いのでしょうか。
南から逃走中の一団が真っ直ぐこちらに。そしてその後方に…居ます」
…それってキングよりも上?
「上…ですね。ゴッズよりは大きくありません」


「みんな。とても残念な知らせがロイドちゃんから入った。
直ぐ南から逃走中の冒険者の一団と…。
クルーガーのエンペラー級が追い掛けてるってさ」

「「「はぁ!?」」」
「クワァ?」

「ついこないだやらかしたばっかだろ。ここの冒険者はアホの集まりか」

「知らないよ。武装して迎撃準備。
クワンは悪いけど上空で馬車を見ながら街道に漏れ出る奴らを狩り飛ばして」

「クワッ!」

飛び立つと同時に岩場の上に布陣。

双眼鏡で覗き見るまでもなく。木々を薙ぎ倒すエンペラーの姿が肉眼で捉えられた。

「取り敢えず俺は人員救出を優先するから。フィーネは頭潰して。2人はフィーネの後方で雑魚狩り。アローマさんは無理せず出過ぎずに」

「解りました。出過ぎず…出過ぎず…」
「ガチガチじゃねえか。危ないと感じたら直ぐに後ろへ回り込め。雑魚は所詮雑魚だ。俺たちを信じろ」
「はい!」

「円月輪を飛ばすから跳躍だけはしないで。
色々試したいからソラリマは温存。最後の一刀だけよ」
『御意に』

ソプランとアローマがソラリマの声に驚いていたが。
構わず南正面から激戦地帯へ突入した。


敵陣中央の体長7m越えのエンペラーはフィーネと向き合った瞬間に追跡行為を止めて立ち止まった。

エンペラーが放ったブレスのお陰で辺りは一面銀世界。

接近戦はノーマルブーツでは危険だ。


対峙している間に逃走中の一団を馬毎捕縛。
後方に流れた雑魚は一切無視。

フィーネが円月輪を放つと同時に後の2人が左右に展開した。

円月輪はエンペラーの薄皮を刻むに留まり。
「やっぱり止めは無理か」

エンペラーのブレスは意に介さず。魔力を込めたハンマーで地面の氷を叩いて足場を広げた。

聖属性のソラリマを装備して接近し、
首元目掛けて横一閃。
抵抗虚しくエンペラーは崩れ倒れた。


出会ってから数分間の出来事。

生き残りの冒険者たちは、全員言葉を失っていた。

「フィーネ。南に逃げた奴は追わなくていいよ」
「解ったー」

フィーネがエンペラーの遺骸を回収して討伐完了。




---------------

祠に戻り、焚き火で暖を取りながら事情聴取。

「リーダーは誰?」

挙手をした人物に向き合う。
「偶々俺たちが近くに居たから良い様なものの。エンペラー町に連れ帰ってどうすんのさ」

「申し訳ないです…」

「どうしてこんな事に?また欲張ったの?」

「違います。数量調整も含めて討伐隊の割り振りも厳しく定めて狩ってました。昨日までは」

「誰かが違反したとか?」

「少なくともギルド登録者じゃありません。聖騎士軍からも重大なペナルティが科せられるんで。

微妙に予定数を下回ってましたが…。てっきり分断しているだけかと勘違いしてしまって」

「誰かが故意に数量弄ったのか…。それでも数匹残せば良かったのに」

「そこは欲を出してしまいました。済みません」

「人的被害は?」

「運良く全員生還出来ました。感謝します」

「それは良かった。
俺たちの素性は知ってると思うんで。このままエンペラーだけ貰って内緒にします。ここら一帯の魔石を持ち帰ってギルドに原因不明の増殖を報告して下さい。

当然俺たちの事は内密に。皆さんもいいですね」

「はい!」全員いい返事。元気そうだから大丈夫だろう。



馬車に乗り込む前に。
「激甘だなぁ」
「国に介入されると冷蔵庫の事業まで影響するんだよ」

「まあそう言う事にしとくか」


馬車の中で。
「街道から南周辺100km圏内には誰も居ない」
「もっと遠距離から見られてるのかな。それが道具なら奪いたい」

「それこそ欲張りでは?」
「クワァ」ウンウン言ってる。

そのクワンをタオルで拭き拭きしながら。
「誰だろうと邪魔するなら排除するだけさ」
道具はその序でだ。

「アローマさんも初陣お疲れ様」
「お疲れ様。良い動きだったけど。私の後ろからは余り離れないで」

「自重します。エプロンの効果が高すぎて。まだまだ修練が必要です」

「無理せずゆっくりとね。
所でフィーネさん。エンペラーの素材をシュルツに渡そうと思うのですが如何でしょう」

「異議は全く御座いません。クリップだけじゃなくて角ももう1つ欲しいね」




---------------

プイエーラに到着して宿に入った時には16時手前。

馬車の管理は従業員さんに任せ。
降りしきる雨を前に、取れた大部屋でご相談。

「クワンティ飛べる?」

一鳴きして。
「飛べます。ご主人様たちがお風呂に行っている間に戻ります。桶にお湯を貯めていて貰えると嬉しいです」

「解った。夕食もここで頼むからそれまでに」
「クワッ」

クワンを窓から放ち、自分たちも身体を拭きながら。
「先にお風呂行って来て。荷物見とくから」

「はーい」
「早めに上がる様にします」


タオルと着替えを小鞄に詰めて出て行く2人を見届け、滋養酒の檸檬水割を男同士で飲んだ。

地図を横目にポーカーをしつつ。

「贅沢な話だが内風呂が無いのは不便だな」
「それ贅沢に慣れてしまってる証拠」

……

「ソプラン強いなぁ。全然顔に出ない」
「カジノで大分鍛えられたからな。王都に戻ったらチラッと覗きに行くか」

「いいねぇ。次の予定は決まってないし。真夏の海にも行きたいし。フィーネに水没周回して貰いたいし。ソプランたちの結婚式もあるなら行きたいし」

「…遊んでる場合じゃなかったわ。居残りの八人でなんか考えるって言ってたが…不安だ」

「会場はカメノス邸で決まりでしょ」
「まあそうなんだがな」

女性陣が戻る前に。
洗面台横に設置した木桶に水を張り魔石を投入。

温度を確かめながら、洗面台で自分たちの下着類を石鹸で手洗い揉み洗い。

「冒険者っぽくなってきたな」
「可笑しいな。外務中の筈なのに」

送風機付きの物干し台に濡れた服と一緒に吊した。

「アローマとお嬢もパンツ干すのか?」
「それ突っ込んじゃダメでしょ。多分フィーネが速攻で乾かして仕舞っちゃうよ」

残念なのか安心なのか…。


干し終わる頃に髪を濡らした2人が戻って来た。

チェンジして大浴場へ。




---------------

風呂から戻った頃には、着替えは綺麗に畳まれベッド脇に置かれ、クワンもフィーネの膝の上で寛いでいた。

俺たちもドライヤーで髪を乾かし、食堂に向かった。

出された料理は山菜コロッケと小魚のフライ。
オリーブオイルのペペロンチーノ。デザートは無し。

「めっちゃ普通に美味しい」
「ピラリスのあれはなんだったのかしら」
「外の飲食店だけが駄目だったのか」
「不思議ですね」
「クワァ」

料理を運んでくれた給仕のおばちゃんに聞いてみた。

「あんまり大きな声じゃ言えないけどねぇ。西側で良く解らない検問やっててね。食料品の供給が一部滞ってるんだよ。
大事な商品を買い叩いてるらしくって。馴染みにしてる商人さんが居ない所は結構な痛手を喰ってるらしいのよ。

ここでもデザート削ってる位さ。御免なさいね」

「いえいえ。全然気にしてないんで」

「なんだ、国のど真ん中で検問って」
「意味不明ね」
「検問の目的が…私たちと言う事は考えられませんか」

アローマさん鋭いかも。
「…有り得そうで怖いな」



部屋に戻ってクワンの報告を聞いた。

地図上でツイエラとブラッズイアの中間に在る大橋の西側を爪でなぞってから。
「アッテンハイムの兵士の鎧でも聖騎士の鎧でもない物を着込んだ部隊が三百人位居ました。
更にコルセアーツから首都に繋がる街道沿いの崖の上にも三十人程見掛けました」

「「「「………」」」」

アッテンハイムの兵士じゃない?

「駄目だ。全然理解出来ない」
「教皇様ですら口出し出来ない兵士たちって事?」
「崖の上に陣取ってる奴らも気になるな」
「ピラリス前の砦の兵士の方は、もしかしたらこの件をスターレン様に忠告されたのではないでしょうか」

アローマの勘が冴え渡る。

「そう言う事か。アローマさんの見立てが正解かも知れないな。アッテンハイムが口出し出来ないとなると…
クワンジア含めて西方三国の何処かの兵士だ」

「目的が私たちなら。首都に三国の重役が居るわね」

「今日のクルーガーの横槍も此奴らの仕業か」
「しかしどうして邪魔をするのかが見えませんね」

「そこだよなぁ。でもまだ2つ先だし。ツイエラに到着すれば向こうから来るでしょ。流石に他国の町中で戦闘始める馬鹿は居ないよ」

「ありがとクワンティ。とっても役に立つ情報よ」
「クワッ」


お疲れ気味のクワンは先に寝入り、今宵は4人部屋なので小テーブルを囲んでポーカーをして遊んだ。

ソプランの圧勝だったが。修学旅行気分で楽しかった。
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