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第64話 内戦の事後処理

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…フィーネです。

内戦終結から四日が経ちました。

勝利の宴から翌日以降。

自室に籠ったまま出ようとしません。

以降は仕方なくサンさんと寝ています。

私が何度声を掛けても。
「俺はやってない。俺は何もやってないんだ」
と繰り返して毛布を被ってしまう始末です。

でもそろそろタイラントへ帰りたいので。

ベッドの端に座り、出来るだけ優しく。
「スタンさん。いい加減諦めて帰ろうよぉ。事後処理まで付き合わなくてもいいって御父様も言ってるんだし」


旦那様を怯えさせているものは何なのか。


それは冒険者ギルドの連絡網。

ギルドは国には属してません。言ってみれば無関係。

内緒にしてと国民にお願いしてみた所で。
全部無駄でした。

目撃した多数の冒険者たちが、正確な情報を持ち帰り。
拡散してしまうのは早いものでした。

何羽の鳩が飛んで行ったか解りません。

それを彼が目撃してから。
事の大きさに気付いたと言う流れです。

まぁあれだけの討伐を黙っててと言うのが無理な話。

ゴッズを。聖剣で。軽々とバッサリ両断。
しかも視界の広い王城の真上で。


当然それは我が家の在るパージェントにも回ってしまう訳です。


「やっちゃったものはどうしようもないでしょ?」

「俺じゃない。俺に似た奴が俺を語ってやったんだ」
反論が幼稚になって行く。

何時もの格好いい旦那様が見当たりません。

これはこれで可愛いけれど…。

普通に帰りたい。家でゆっくりしたい。
早く帰らないと、情報はどんどん拡散されてしまう。
その前に。何としても。


もう一声掛けようとした時。
スタンの御父様が部屋に入って来た。

「フィーネ嬢。少し…スターレンを殴っても大丈夫か?」

愛の鞭宣言。
普段ならスタンを守る側だけど…。

御父様なら仕方ない。

「どうぞどうぞ。存分にやっちゃって下さい」

私がベッドから離れると、即座に毛布を剥がされ、
鉄拳の嵐がスタンに降り注いだ。

ロープ腰に巻いてるのに?
愛の拳は、どうやら貫通攻撃らしいです。

メモしとこ。

顔を腫らしたスタンが掴み上げられ。
「早く燻製と酒を置いて出て行け。貴族院の連中がお前を出せと五月蠅くなってきた。
このまま居座れば巻き込まれるぞ!」

最初の言葉が無ければ…。でもまあいいか。
お酒なら一杯あるし。家にも鞄にも。


愛の鞭は効果絶大。
「あぁ、父上。俺…何してましたっけ?」

「戦いに疲れ、三日間昏睡状態だった。
今、荷物を纏めて、酒と抓みを置いて、タイラントへ帰る準備をする所だったのだ。解るか?」

だから、その真ん中の言葉は…。
御父様って意外に剽軽な方みたいだ。

「あ!そうだった!?」
そうだったの?

「ごめん、フィーネ。直ぐに準備するけど…。
なんか顔が超痛いんだ。撫でてくれない?」
記憶まで飛んじゃうんだ。

「…解った。御父様。直ぐに着替えさせますので。
リビングでお待ちを」

「うむ。フィーネ嬢の手を煩わせるなよ」

「あーい」
子供に戻っちゃった。

何はともあれ、これでやっと帰れそうだ。




---------------

可笑しい。
勝利祝宴を開いて、寝てからの記憶が全く無い。

フィーネに聞いても。
「…寝てたよ。確かに三日間」

妙な間が気になる。
何故か痛い顔面も気になる。

クワンは窓からずっと空を見上げて反応してくれない。

ロイドちゃん。
「寝てました!間違い無く寝てました!爆睡でした!」
まだ何も聞いてないよ…。


顔も撫でて貰って痛みも消えたし。
兎に角帰り支度をしよう。


身支度を済ませて、リビングに行き、父上の前に好きそうな赤と燻製を数種類置いた。

「今度。食べ物を低温で保存出来る冷蔵庫とワインセラー持って来ますね。俺が共同開発したやつなんで無料で手に入ります」

「それはいいな。後、魔導コンロと浄水器があれば買って来て欲しい。幾つでも構わん」

「解りました。それで…結果ってどうなりました?」

「第一王子で現政権存続を願う保守派と、スタルフを立てようとする穏健派の二極に分かれてるが…。
第一王子はお前の名前を聞く度に、審議場で小便を漏らしてしまうらしい。

昨日は糞まで漏らしてたぞ」

「「うわぁ…」」

「あれはもう駄目だろう。

しかしスタルフも未成年。
このまま暫定で踏み切るかは微妙な所だ。

懸念していた帝国も、今の所動きは無い。

兵器の輸出もお前が潰してくれたお陰で、全て無かった事にしようとしている様子だ」

「良かったです。これで安心してタイラントへ帰れます」

「どっちで帰るんだ。乗って来た馬車か?転移か?」

「流石に国境越えは馬車を使わないと…。
父上あの馬車気に入ったとか?」

「鋭いな。あれは荷車も馬も上当品だ。欲しがる者も多いだろう。大切にしろよ」

「まああれはタイラントの国から借り受けたので。貰えるかどうかは…。
許可が降りたら、序でに運んで来ますよ」

「え?馬車毎転移出来るの?」

「馬を眠らせてからなら行けると思う」

「おぉ。その手があったか。荷車も装備品と言えば装備品になるのかぁ。成程成程」


「俺たちが助けた捕虜は」

「家族の居た者は家族の元へ。身寄りの無い子供たちは女神教の寺院に分散された。

王都内の奴隷商と共に、加担していた貴族共の粛正も始まったばかり。

それらを潰し切れば、奴隷層解放も近いだろう。

聖女様も。養う金が無いならアッテンハイムから融資させると豪語して去って行ったそうだ。

今後は大国としての誇りをどう見せられるかが争点になって来る。

お前たちは二カ国を正しい方向へ導いた。

犠牲はそれなりに出たが、お前たちが気に病む事はない。

胸を張って歩き出せ」

「「はい」」

「次は何処へ向かうのだ」

「取り敢えずゆっくりフィーネと過ごして。改めて考えてみます。

タイラントが俺たちを自由にさせてくれるのかの問題もありますし。

行くとしたら。南西か東になると思います」

「何時でも帰って来い。
良い土産話を期待しているぞ」

「「はい!」」

「あ、そう言えば。
圧死した事になっている第二王子だが…。

胴体は無傷だったのに。頭部だけが綺麗に消し飛ばされていたそうだ。

何か知らない…」

父上がクワンを凝視している。
クワンは知らんぷりを決め込んでいた。

「…知りません。全く以て」

「そうか。気の所為だな」



スタルフは審議場に張り付けにされて居なかった。

サンとペリルに挨拶して馬車に乗り込んだ。

サンがキラキラした瞳で俺を見て。
「フィーネ様。どーーーしても駄目な」
「駄目ですって言ってるじゃないですか!」

何の事かは解らないが、そんな遣り取りがあった。



帰りの馬車の御者台で。

「あー。何も食わずに出て来ちゃった…」

「ちゃんと食料買っておいたから。次の宿場で食べよ…

て言うか。自宅より、ご実家より、
宿場が一番落着くって…とっても微妙なんですけど?」

「笑えねー」



最寄りの宿場にて。

「さて。お寝坊さんのスタン君。
今後のご予定は?」

「う~。今は先々の事は置いておいて。

またまた中身の見えない黒い鞄を拾ってしまったので。
闘技場を借りて確認するのと。

ラフドッグでの休暇は絶対に取ります」

「黒い鞄は、嫌な予感しかしませんが?」

「でもベルエイガさんが、門を潜る前にきっといい物が入ってるって言い残したんだって。ロイドから聞いた」

「オマケで恥ずかしい物が入ってない事を祈りましょう」
「祈りましょう」


「まあいいわ。
豚肉と牛肉とキャベツと馬鈴薯が、何故かご実家に大量に届いてしまって処理に困った御父様から一部を頂いております。

夕食は何にしますか?」

「それなら…。醤油とショウガと大蒜で焼肉ではどうでしょうか」

「自宅でやると。大蒜大嫌いになってしまった不幸な子が居ますからねぇ。

盛大にやってしまいますか」

「おー」
「クワッ!」


本当に。久々の夫婦とクワン水入らずの焼肉は、とても楽しく心暖まるものとなった。

あぁ、ご飯が欲しい…。




---------------

ラフドッグの港の桟橋で。

ゴーギャンが釣り糸を垂らしていると。

「後ろで垂らしても宜しいでしょうか。ゴーギャン様」

そこに立っていたのは、ウィンザートの情報を涙ながらに求めていた青年。

「兄ちゃんか。海は誰の物でもねえさ。
好きにやれよ」

「有り難う御座います。少し、お話しても?」

「いつかみたいに泣かなきゃな」

青年は糸を垂らし細く笑った。
「必死だったんです。
スターレン様に命懸けで情報収集をしてみろとご助言を受けて。

不思議な夫婦でした。

目の前に居るのに、とても遠くに感じました。

それはそうでしょうね。

人間と同化した巨大なゴッズを、聖剣で一刀に斬り伏せた方々なんですから」

「…」

「俺は雑草です。
昔から何をやっても駄目で。

冒険者になったのも。その日暮らしの金を稼ぐ為。

道具の呪いで死んだ妻は、俺ならきっと大丈夫って励ましてくれたんですが…。

出来もしない復讐を果たそうと、ウィンザートへ向かう直前で、お二人に出会いました。

今にして思えば、妻が導いてくれたように思います。

それでも躊躇していた間にクインザは討伐されてしまって。

目標を失った俺は、お二人に縋ってしまいました」

「…兄ちゃん。お二人に名前聞かれたかい」

「名前?…いえ。今は聞きたくないと、スターレン様に言われ。そのまま名乗れずに居ます。

もう二度とお会い出来ないのが残念です」

ゴーギャンは暫しの間考え。
「スターレン様は兄ちゃんに死ぬなって言ったんだろ?」

「…」

「だったら生きてみろや。

兄ちゃんが集めた情報があったからこそ、軍部も粛正が綺麗に出来て、お二人の手間も省けたんだ。

自信持てよ」

「…生きるって辛いですね」


「兄ちゃんは独り身か?」

「ええ。天涯孤独の身になりました。
もう俺には何もありません」

「お二人に恩義はあるかい?」

「それは勿論。
…でも、ご恩返しの方法が見付からないんです」

「だったら…俺らの養子になる気はねえか?」

「養子?俺が…ゴーギャン様のですか?」

「幸いにして。俺たちには子供が居ない。
仕事は山程ある。ある意味冒険者稼業よりも辛いかも知れん。一から商売を覚えるんだからな」

「ゴーギャン様の言っている意味が…」

「今のロロシュ財団には総師が引退された後。
財団全体の運営管理を引き継げる人材が少ない。

実子の二人では少々役不足。

このまま行けば、スターレン様がその重荷を背負ってしまうに違いない。

お二人に何かを返したい気持ちがあるなら。

その大荷物を背負う役目を目指してみねえか、って聞いてんだよ。

俺の養子になれば。その入口が開けるのさ」

「!?」

青年は驚いた拍子に釣り竿を落としてしまった。

「あー勿体ねえ。
初釣りで巨大鮪を三匹も釣ってきたスターレン様に呆れられるぞ」

「…本当ですか?」

「嘘じゃねえよ。本当は素潜りで獲って来ました、なんて冗談言ってたが」

「そ、そっちも凄いですが。そっちじゃなくて。
本当に、俺がゴーギャン様の養子に…」

「兄ちゃんの名前。
今は聞きたくないって言われたんだろ?」

「…はい」

「だったら、次があるんだよ。きっとな」

「!?…そのお話。おう」

「まあ焦るな。まずは上さんと…今日も坊主だが。
何か買って飯にでもしようや」

「はい!」

「あ、そうそう。上さんの前で、軽々しく命を賭けます何て口にするなよ」

「ど、どうなるのですか?」

「まあ前歯が折れる位には殴られる。
海の女を嘗めるなってこった」

「気を付けます…」


冗談を言いながら、ゴーギャンは思う。

総師。これは中々の掘り出し者かも知れません。と。




---------------

ここタイラント王国、王都パージェントでも。

シュルツは冒険者ギルドでソプランが貰ってきた号外を、何度も何度も読み返しては胸に抱き締め、二人の自宅の玄関と中を行ったり来たり。

「お二人はまだですか?」

「まだだって。
今頃はまだマッハリアでのんびり移動してるさ」

「そうですよ、お嬢様。国から預かった馬車があるのです。放置しては帰って来れないでしょう」

「転移も出来るのに…。早くお会いしたいです」

そう言ってまた玄関の外へ出てしまった。

「昨日までが嘘みてえ」
「ですねぇ」

念の為の一部をソプランも見返した。

「ホント。あいつらなら…。
世界丸ごと救っちまうんじゃねぇか、これ」

「タイラントだけでは収まらないのは確かでしょう。
王宮でも大きな騒ぎになりそうです」

「城下でこれだもんな…。

アローマ。真面目な話がある。座ってくれ」

何の話だろうと、対面席に座った。

「はい」

「俺と結婚しないか?いや違うな。
結婚して下さい!」

「…ソプラン。お二人が帰って来られるからですか?」

「それもある。もしもあいつらが死んだら…。
俺はここを出ようと考えていた。ここに在る物全て
アローマも。全部あいつらから貰ったものばかりだ。

自分の手で手に入れたのは何も無い。

でもそんなのはどうでもいい。

本気でアローマに惚れました。

正直執事なんて俺には向いてない。
頼りない俺を支えて欲しい」

アローマも姿勢を正し。

「謹んでお受けしたいのですが…」

「が?」

「人様のお屋敷でプロポーズされましても…」

「あ!?ごめん…。だよな。そうだよ。
ここは違うわ。明日以降で外の店でやり直す」

アローマはクスクス笑う。
「お答えしたのに?」

「あー。順番間違えたわー」

「普通にデートに誘って下さいまし。お二人の様な仲睦まじく自然体が、私の理想なのです」

「うおぉ。あれやるのか?マジか?」

「マジです」

ソプランは頭を抱えてしまった。

「まぁいいや。それは努力しよう。徐々にな。

それとは別に少し先の話をするが、
他のメンバーもいい感じになってるから、式を全組一度にやってしまうのはどうだ?」

「お二人のお時間の為ですか?」

「端的に言えばそうだな。
何か不満があったら、二人切りでやり直そうとか考えてる。

俺には身寄りがないから。自由だし」

「大変善いお考えだと思います。私も、孤児ですから」

「…」

「ソプランはメンバーが家族。
私はここで働く仲間たちが家族。

私たちを結んでくれたのはお二人。

その恩人様のお手間を省くのですから。
何ら問題は在りません。

寧ろ私もそうしたいです」

「…そうか。
こっから先の話は、デートしながら考えるか」

「ですね」

二人で大きなリビングを見渡した。

「さてと。ここはあいつらの家だ。
戸締まりして、シュルツ拾って本棟に帰ろう」

「はい。旦那様」

「それは…。まだ早えよ。てかずっと呼捨てでいい」

ウフフとアローマは笑いながら席を立った。




---------------

パージェント王城。後宮。
ヘルメン王私室。

私室の主は、冒険者ギルドから送られて来た号外と、
報告書を読み終えると。

力の限り絶叫した。

その声を聞きつけ、慌てて王妃ミランが入って来た。

「どうされたのですか。その様な大声で」

「これが喜ばずに居られるか。これを見よ」

紙の束を受け取り、ミランが目を通した。

「素晴らしい!本当に素晴らしい知らせですわ!」

「だろう。そうであろう。彼らは約束を果たした。
タイラントの為ではないにしろ。
我らの恨みも晴らしてくれた」

「しかもこの短期間で。…何か褒美を与えないと」

「そこなんだ。悩ましいのは。

宝物庫はあれ以上興味を示さない。
変に役職を与えれば、彼らの自由を奪ってしまう」

「取り敢えず…。王宮料理で持て成すのはどうでしょう。

先日。彼らの出発前だと言うのに…、調子に乗って手料理を作らせてしまったので。

心苦しい限りです…」

ヘルメンは唸る。
「まずはそこからか。うむ。考えてみよう。

その時は何を出されたのだ?」

「初日はカレーと本鮪の塩焼き。
二日目はイカ墨海鮮パスタと蟹足のしゃぶしゃぶなる物を出して頂きました」

「二日も居らんと思ったら、その様な物を…」

「反省しております」

「魚介は彼らに買って来て貰って、王宮で調理する方向がいいな」

「それで参りましょう」


タイラントの国王と王妃は唯々浮かれていた。




---------------

約2週間ぶりのツンゲナ。

国王と王妃が亡くなった為、国葬ムードかと思いきや
当面の間、重税の免除で町はとても賑わっていた。

お祭りムードと言っても…過言では無い雰囲気だった。

「賑やかだねぇ」
「今まで抑圧されてたのが一気に爆発してる感じだな」

「宿屋…空いてるかな」
「まだ時間早いから、空きが無かったら次の宿場に行こう」

「それしかないか。行きは気持ちが曖昧だったけど。
出来ればゆっくり見物したかったなぁ」


出会いの町ツンゲナ。
行きは確かにデートはしたが、軽い散歩に留めていた。

残念がるフィーネと共に、行きで泊まった宿に行くと
丁度一部屋空いているとのこと。

行きと同じくストアレン商会で部屋を取った。

商会名よりも名前の方が一人歩きしているので、騒がれないだけマシだと割り切る。


馬車を宿の裏に預け、部屋に入って暫く寛ぎながら。

気になっていた事を打ち明けた。

「どうしても気になる事があるんだ」

「気になる?…野盗が減ってない事?」

「それは王都が正常に機能し始めれば自然に消えて行くと信じたい。

それよりもパージェントのモヘッドたちの様子が気に入らないんだ」

「どんな風に?」

「冷静に思い返すと…俺たちの結婚式からだな」

「あー。誰も呼んでなかったのに無断で乗り込んで来てたよねぇ。

ノイツェさんとライラさんは、国防としての立場があったから仕方ないとしても…。

確かに変だったね」

「考え過ぎかも知れないけど…。
モヘッドもエドガントも、フィーネの素顔を確認しに来てた様に思えて仕方ない」

「…そう考えると気持ち悪ッ」

「で。男子会でモヘッドと3人の元上級で少し話したんだけど。

前に依頼してたギルド本部への照会事案が一つも返事が無いだとか。

南西の新ダンジョンの話をした時は、デュルガが行くなら必ず連絡をくれと言ったり。

あの時はソラリマの事は内緒だったから、有り難うで済ませたんだけど。

何かが違う気がする…」

「む~。微妙ですねぇ」


「改めて握手した時に見えたんだけど。
モヘッドの奴、統一教会の会員だったんだ」

「女神教の半分が解決出来たと思ったら…今度は統一教会かぁ。それは怪しさ満点だね。

水竜教と二重取りは問題ないの?」

「無くは無い。とても珍しいのは確か。
特に統一教会は本部が何処にあるかも解ってなくて
会員になろうとしても手続きする場所が不明」

「何か寒気してきた…。ひょっとして…」

「まだフィーネが狙われてる可能性がある」

フィーネが身を寄せて来た。
それを優しく抱き締める。

「もう嫌だよ。
なんでそこまで狙われなくちゃいけないの。
力以外は何の変哲も無い村娘なのに…」

それが一番問題と言えば問題だが、フィーネ1人だけだと思ってた治癒魔法は、聖女様も使える事が解った。

狙われる理由が召喚士としての能力だけじゃないとすればいったいそれは何なんだ?
「自然信奉の山神教はさて置き。全容が丸で掴めていない統一教会ですから。何を考えているやら…」
確認事項がまた増えたな。


「パージェントに帰ったら。ちょっとあいつらを絞めてみますかね」

「うん!折角のお祭りなんだし。警戒全開で楽しもう!」
「クワッ!」

それは楽しめるのか?

「俺も索敵しながら歩くから。出店を回ってみよう」


新たな不安の種を押し潰し、お祭り騒ぎのツンゲナを無理矢理楽しんだ。
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