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第8話 商業都市って難しい

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来たれり王都、パージェント。
商業ギルドが国と直で提携し、商売が根付き、商人が行き交い、活気と商品が溢れる巨大都市。

あれから一度だけ真っ昼間に野盗に襲われたが、難無くクリア。
その時も教会との繋がる物は何も出なかった。
野盗の人数は12。余裕ではないが、ゴンザたちだけで対処出来た。
町の外での遭遇戦の場合は、殲滅対象。
これ以上は…。俗に言う正当防衛だ。

連携の取れていない烏合の衆で、手練れの冒険者を落とせると考える方が間違いだ。50、100人規模が押し寄せて来たら話は別。

ゴンザたちの委任状引き渡し、専属契約手続き、依頼達成報酬の支払い等々。隣り合う建物の行き来でメメットとゴンザたちは時間を取られていた。2時間経ったが終わる気配は無い。

俺たちは実質メメット商隊の仮従業者登録だけなので、時間が余った。折角余ったので、本名名義で貸金庫を借りて王妃の像を収めた。
この貸金庫と王宮以外にセキュリティー万全な場所は国内には存在しない。
国としても大事なビジネスの要を逃すまいと、厳重な警備が敷かれている。よく居る成らず者たちも見当たらない。
イキった冒険者も見掛けない。

肩が打つかって。
「何処に目付けとんじゃゴラァ」も聞けなかった。
冒険者の対応も実にスマート。喧嘩した相手が明日の依頼主だった何て話だと笑えるでしょ。

商業ギルド支部のロビーで、威勢の良い人たちの声を聞き眺めていた。
隠語の使い方も人それぞれ。
実りの無かった商談の話。仮に仮を重ねた話。
資金運用をどうするかの相談。
接待商談の為の酒場は何処にするかの話。
色々聞こえて来て面白かった。
全て聞かれても困らない内容を話している。
崩して言えば、商人の自慢話だ。


フードを目の下まで下げたフィーネが隣で退屈そうにしていた。そんなんでよく見えるねと尋ねたら、気配で人の動きが感じ取れるとの返答が返って来た。
俺のド下手な索敵なんて目じゃないぜ。
「メメットさん。俺たち先にローゼッパの宿に戻ります」
ローゼッパはメメットの定宿。低料金で泊まれる半賃貸ウィークリー物件。
メメットの持ち家は在るが、今は人が上げられない位汚れてるらしい。見られたくない物も沢山在るんだろう。
「すまんな、そうしてくれ。申請類だけは今日中に済ませておきたくてな。遅くなるが、王都内なら安全だ。警備の巡回がわんさと歩いてる。ただ間違っても貧民街には夜に行くな。解ったな」
「「解りました」」

夜に差し掛かっても商業ギルド内外は人で溢れていた。
「凄いなこの活気は」
「ホントね。流石にこれだけ多いと人に酔いそう」
「エスコートしたいけど、この町は初心者だから。隣の冒険者ギルド覗いて、ちらっと露店見てから宿に行こう」
「冒険者にも成るの?」
「依頼掲示板を見るだけさ。今どんな依頼が在って、どれだけの薬の量が出回るのかを想定したい」
商業と冒険者を両立兼任する猛者も稀に居るらしいが、お馬鹿な俺は商業だけで手一杯。
「ふーん」少し口元が綻んだ。
「率先して死ぬ様な真似はしないよ」
「だといいけど」

隣とは違い、本日の業務は終了の冒険者ギルド。
ロビーにも人は居らず、受付のお兄さんがこちらを面倒臭そうに見ていた。
商業ギルドの登録証を見せ。
「ちょっと掲示板見せて下さい。眺めるだけなので」
「ご勝手に。何か依頼出すなら昼に来な」
了解ですと心で返す。
蝋燭台を借りて掲示板に向け掲げた。

モンスター討伐は極少数。王都から西に行った森にオークっぽい猪の化物が居て、囲い込みには成功しているが現状維持で慢性的な人手不足。
何故討伐しないのか。その理由は猪肉は豚肉の代用品に成るから。以上。
人間様の考える事は怖いよね。
魔物も家畜同然の扱いなんだから。少なくとも世界規模で討伐指令が下らないと討伐はしない方向性。

背後で風切り音がした。
俺は板に夢中でそれ処じゃない。

他は物流の管理、要人の護衛任務、船の護衛、倉庫の警備業務、国と合同での郊外定期巡回の仕事。
薬類が売れる訳だ。薬屋さんは潰れない。

パンと床を叩く音がしたかと思えば。
「あんた、明日の朝日は拝みたい?」
「じょ、冗談だよ。お嬢さん」
フィーネの声の後、受付の兄ちゃんの声が震えていた。
恐ろしすぎて振り返れない。
「悪戯で死んだら、いい笑い者ね」
「か、勘弁してくれって。消し炭投げただけじゃねえか」
ここは小学校か。
「見終わりました…」
振り返るとフィーネが受付に乗り込み、兄ちゃんの首元に筆の柄尻を宛がっていた。
「今後も取引するとこだからここ。許してあげて」
「後頭部さえ狙わなければね」
「悪かったって」
「大丈夫だから。ね、フィーネさん」

解放された兄ちゃんは、無事な首を押さえながら、乱れた襟を整えていた。
「早めに冒険者引退して良かったぜ。やっぱ俺には向いてねえって思い知ったよ」
いいえ、フィーネさんが特殊なだけかと。
「俺はエドガント。今はしがない傭兵崩れの受付だ。今後はいい話在ったら優先的に回すからよ。頼むから内緒にしてくれよな」
拝まれてしまった。
「俺はストアレン。商業専門ですのでこちらに伺う事も滅多に無いと思いますが、何かの際には」
「儲けに繋がりそうな話が在ったらだ。詫びと手付けにお前らに俺の取って置きを見せてやる。こっち来な」
受付奥の扉の前で手招きしてる。
「変な真似したら、次は本当に殺すから」
「一々怖えなぁ。内緒で絵を見せるだけだよ」
絵って何だ。

エドガントに案内されて入った部屋の奥に在った物は、俺がずっと見たかった物だった。

世界地図。中央大陸は勿論。南2つと東大陸まで網羅されている。
俺は思わず膝を着いて震えた。フィーネも押し黙って地図を見詰めていた。

「これはギルドの特秘事項。この国で手に入らねえもんは無いってのも強ち嘘でもない。ここまでにするのに、いったいどんだけの死体が積まれたかも解りゃしねえさ。
書き写すのは勘弁な」
こんな情報は写せない。頭の中に刻み込む。
何度も何度も見回して。
「また、来てもいいですか?是非、お願いします!」
「まーな。これ位の時間で受付に俺一人の時ならな。しょっちゅうは無理だぞ。今日はたまたま上が外に出てる日だったからな」
「はい。有り難う御座います!」


高揚感に満たされた胸の火照りを冷ます為、ギルドを出た後フィーネと夜店を回った。
「フィーネ。俺、今最高の気分だよ」
「幸せそうね。私も気分がいいわ」

立ち並ぶ街路灯。その連なる輝きが、未来へと続く標の様に見えた。
「明日からがんばる、あ、すいませ…」
人の往来の激しい場所で小躍りしてしまい、人と打つかりそうになり避けようとした。
「グッ」奇妙な悲鳴を上げたのは、目の前の男。
「調子に乗った時程、油断大敵でしょ」
男の右腕は折れ曲がり、胸から剣の柄を生やしていた。

崩れ落ちる男を軽く蹴り転がし。
「衛兵!通り魔よ。自分で転けて自滅したわ!」
フィーネが手を挙げると、巡回の兵士が3人飛んで来た。

俺、何やってんだ。何を油断してんだ。
「怖かったぁ」
嘘泣きで縋り付くフィーネを呆然と見詰め返す。
「どうした!何だこいつ」
「既に息絶えていますね」
「自爆で死ぬとは…。兎に角回収して報告だ。交代を呼びに行け」

「ボーッとしてないで。早く帰りましょ」
囁く声に促され、漸く我に返った。
「よ、夜道は怖いね…」上手く言葉が出ない。
「待て君たちにはまだ話が」
「行かせてやれ。安全確認を怠ったのは我々の責任だ。
旅人風だな。名と宿は何処だ。後で事情を聞きに行く」
「ローゼッパに部屋を取った、ストアレンです」
絞り出す様に答えた。

距離を空けて取り巻く野次馬たちを潜り抜け、宿への帰路に付いた。


宿に戻ると、メメットたちが待っていたが気分が優れないと言って取っていた部屋に引き籠もった。
とは言えフィーネも同じ部屋。
野菜のサンドイッチと水を差入れで持って来てくれた。
「メメットさんたちと憲兵には私から事情を話した。今日はそれ食べて早く寝ましょう」
「食欲無いわ」
「無理でも食べて。明日から頑張るんでしょ」

「…情けない」
サンドイッチを鷲掴みに口に無理矢理詰め込んだ。
「そうだね。どうして私、こんな情けないのに惚れちゃったんだろう」
ベッドの端に座って足をバタ付かせていた。
口の内容物を水で飲み下す。
「…俺、頑張るよ」
「うん。そう言ってくれないと困る」

「時間操作を使えば良かった。一番大事な時に使いもしないなんて。…俺このままだと死ぬよな」
どんな優れたスキルを与えられたって使えないなら持ってる意味が無い。
「あんな人が居る場所では使えないでしょ」
「…それもそっか」あー情けない。
情けなさ過ぎて笑っちゃうよな。ロイドちゃん。
「それを過ちだと思うのなら。同じ過ちを繰り返さなければ良いのです」
調子に乗り易い性格は一生直らん気がする。

「フィーネ。立って」
「…いいよ」
彼女を前に立たせて抱き締めた。
「どうしたのよ。何時もみたく弱音吐くんじゃないの?」
「これからも吐き捲る。だからフィーネに見捨てられない様に頑張る。適度に」
「適度にか。…でもそれ位が丁度いいのかもね」
彼女は震えたりはしない。腕を回してポンポンと背中を叩いてくれた。何処までも男前だな。
「温かいな。放し難い、けど今日は歯磨いて一人で素直に寝るよ。ずっとは甘えてられないし」
「いったい何の宣言よ。結婚って支え合う物だってお母さんから聞いていたけど?」
「中身ガキのまんまの俺には難しいな」
成長しよう。どれだけ知識を着けても、人に頼ってばかりじゃ話に成らない。言う程簡単じゃないのは解ってる。
既に50年近く浪費してこの有様だから。

道具袋の中から、歯ブラシと言う名の金の爪楊枝を取り出して洗面所へ向かった。
後ろからフィーネが付いて来た。
「口の中の掃除?歯磨きって言うの?」
「定期的に歯の隙間と、歯と歯茎との間の食べかすや歯石を取って於かないと虫歯や口臭の原因になるからね。それを取り除くのさ」
「え?やだ私臭いの?」自分の息をスーハーし出した。
「フィーネは全く匂わない。歯をダメにする病原菌が居ないんじゃないかな。俺もだし、大抵の人は持ってる」
彼女の場合は耐性で菌が死滅しているのかも知れない。
「取らずに放置するとどうなるの?」
「若い内は平気でも、40・50に成る頃には歯がボロボロに抜けて菌が体内に入って内臓の病気に成り易くなる」
「…怖い。キスとかで移ったりしないの?」
「これが不思議でね。幼児期に親がキスして移るって説と母乳で伝わるって説と、大人になってからは移らないって説とか。色々在って面白いんだ。歯磨きはそれらのリスクを最小限に抑える働きが在る。虫歯から病気に成るのは本当だよ」
先端が細い部分で歯間をガリガリ。金属製だと頻繁にはやれないんだよなぁ。早く歯ブラシを開発しよう。
鉤爪で歯の裏側も丁寧に除去。丁寧にやらないと血塗れに成ります。取れた取れた。

うがいが終わった頃に振り返ると、フィーネが大きく口を開けて待っていた。軽く変顔で笑いそうになった。
見ろって事ね。首を縦に振ってらっしゃる。
「では遠慮無く拝見」
親知らずも見当たらない整った歯並び。黒ずんだ箇所も見当たらず、虫歯は無さそうだ。絵に描いた様な理想的な歯並びと白い歯。勿論流せていない食べカスは僅かに残ってはいた。
「虫歯は無さそう。やっぱ菌が居ないんだと思う」
「やってよガリガリ。話聞いてたら、口の中モゾモゾ気持ち悪くなってきた」
「え?でもこれ1本物で予備無いよ」
「あなたのでいいわ。もう何度もキスしちゃってるから手遅れでしょ?」
そう言う問題ではないんですが。

再び口をパックリ開けたフィーネの前に立ち、顔を近付け多方向から見える範囲でガリガリした。
口腔鏡の有り難みが身に染みる。あれが無いと一苦労。
彼女の口端を引っ張るとか、どんなプレイだよ。
変顔が見られるのは彼氏特権か?
「終わったよ。飲料水でうがいして」
俺を真似て口内を濯ぎ終え、鏡の前で歯を噛み合わせで確認していた。
「いい感じ。何か凄いスッキリした。これなら毎日してもいいわね」
「毎日やる用のは今度作る予定だから待って。若しくは自分でやって。貸すから」
人に施す歯磨きの大変さを体感した。子育ての難しさの大変さの一片を垣間見た気がする。子供はこの上で動いて抵抗するからなぁ。

さっさと寝る積もりが既に夜半過ぎ。
今度こそ挨拶を交わして就寝。今日もフィーネに商売のヒントを貰った。彼女に助けられてばかりだ。
世界地図閲覧も通り魔撃退も全部フィーネのお陰。




---------------

蝶眼鏡を擦り上げながら歩く男。
彼は今、王都パージェント内に在る第三駐屯所の廊下を歩いていた。
死体安置所へ向かう足取りは、場に似合わない軽い足取りだった。

「ノイツェ様。この様な小汚い場所に出向かれずとも」
兵士に声を掛けられたノイツェは自慢の眼鏡を、大袈裟に整え答えた。
「珍しい死体が上がったと聞いてね。興味が湧いて来てみたのだよ」
「お耳が早い。それはあちらに置いた男の死体の事でしょうね。ご案内します」
「そうしてくれ給え」

案内された場所は吹き抜けの大広間。
ここには3日間、一般住民区で上げられた死体が並ぶ。
最近は治安も安定し、市街地での死亡事例は少ない。
目的の死体も大広間にポツンと一つしか無かった。
「何でもこの通り魔は、襲い掛かる寸前で自ら足を滑らして自滅したとか」
「ふーむ」

死体の胸には鎖帷子を貫き、歪な波紋の短剣が深々と突き刺さっていた。
剣を持つ右腕が捻じ曲げられた状態で。
「ほう…、確かにこれは面白い。本当に転んだだけだとすれば実に哀れ。被害者は?」
「今日到着したばかりの若い商人と従者です。宿も割り出され、宿泊確認も取れているそうです。何か対処した方が宜しいでしょうか」
「宜しいですね。この様な奇妙な死体を生んだ張本人を調査しないでどうするのですかね。その宿周辺の警備強化と被害者と仲間の追加調査を指示しなさい」
「はい!直ちに」

ノイツェは嫌嫌ながらも、鎖帷子を外し、衣服を剥ぎ取り眺め始めた。
胸元には見慣れた焼き印。
「これはこれは。水竜様を潰しに来られましたか。いけませんねぇ、欲張るのは…」
衛兵の一人が手に持っていた松明を徐ろに奪い、無断で死体に火を着けた。
「ノイツェ様。何を」
「いえね。燻る火種に点火してみたんですよ。よく燃える物ですね」
「貴方様がそうされるには何かお考えが」
「勘ですね」
「勘、ですか」
「たった一粒の小石が、思わぬ雪崩を引き起こす。武が勝つか才が勝つかは解りませんがね」
控える衛兵には理解が出来なかった。
所詮学の無い頭ではノイツェの考えている事など解らないと諦めた。それもその筈。彼が口にする言葉は、常に二手三手も先の予測を示しているからだ。
正しく理解するにも聞き分ける耳が必要。
今持つ者は国防総長ギルマート・ダグラス。ノイツェの直属の上司である者だけと言われていた。
故に彼は敬意を交えてこう呼ばれていた。

不動の参謀長、ノイツェ・バートハイトと。

「私も会ってみたいものです。その被害者に」
衛兵たちに走る戦慄に似た何か。
不動が動く、時が来た。




---------------

エドガントは夜間は殆ど誰も来ないギルドの受付で、深い傷を持つ足を遊ばせながら、先刻に投げた訂正用の炭を机上で転がして暇を持て余していた。

先程の若い商人。ストアレンとの偽名を名乗った。
商人には無い目をしていた。あれを一瞬見ただけで世界地図だと見抜いたのは驚きだった。
控えていた従者の女の子。フィーネと呼ばれていた。
あの素早さは化物級。あんな動きは前線部隊に居た時も見た事は無い。
踏み出しの音以降、彼女の姿を見失った。こんな至近距離で見失う恐ろしさ。
気付いた時には首を取られていた。居なくなった今でも身震いが止まらない。見えたのは口元だけだったが、あれはかなりの美人…かも知れない。

奇妙な2人。退屈な仕事にも一つ、楽しみが増えた。
必ずまたここへ来る。あれを見に。

深夜に玄関を潜る3人の男。
「よぉ大将。随分遅かったじゃねえの」
「よぉ大将じゃないですよ、先輩。一応上司なんですけどねぇ。丁度集会の終り頃に、商店街方面でちょっとした騒ぎが在ったみたいで、実況見分に寄ってました」
「小せえ事でガタガタ言うな。気に入らんなら何時でも辞めてやる」
「また直ぐにそれを言う」
「て言いたいとこだが、楽しみ見付けちまったからもう暫くは居座ってやる。…騒ぎ?また酔っ払いの喧嘩とかじゃないのか?」
大将の後ろの男が答えた。
「それがそうでもなかったみたいで。若い男女が一人の賊に襲われたらしいんですがね」
もう一人の男が答える。
「笑える話。人混みの中、襲い掛かったはいいが手前で転けて自分の持ってた短剣腹に刺して死んだとか」
「そりゃ傑作だな」

「賊の死体を見に行ったら、既に燃やされた後。もう散々ですよ」
国からの情報では遅い。日常的に些事は見送られ易い傾向に在る。
実物を見に行ったのに、収穫無しでは疲れも一入。
「襲われた方の素性は?」
3人は外出用のローブを畳みながら。
「えーっと。ストアレンとか何とか言ってたかな」
「確かその様に」

「ハハハッ」
その名を聞いた瞬間にエドガントは腹を抱えて笑った。
「面白くなってきた。こりゃ荒れるぞ。それも盛大にな」
「2人を知ってるんですか」
「知ってるも何も。さっきここを訪ねに来てた2人だ。あー成程。その賊も阿呆だなぁ。あの子に喧嘩売るなんて」
一頻り笑った後で、エドガントは戸惑う3人に先程の出来事を話した。


「冗談ですよね?地図見せたとか」
「減るもんじゃねえし、構わないだろ」
「本部に何て言い訳すれば…」
「黙っとけばいいだろ、そんなもん」
「当事者なのに、何を…」

後ろの二人も神妙な面持ち。
「それにしても。エドガントさんの目からして化物だという少女。気になりますね」
「気になるのは、その美貌の方だろ?」
「バレたか」
大将以外は呑気なものだった。
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