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第3章 大狼討伐戦

第48話 燃ゆる帝都

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「我が娘に何かあれば、どうなるかは解っておろうな」
おっかないお顔で仁王立ち。

「大陸間で戦争ですかね?」
仕方なく代表になって話してるけど…、なんで?

どうして誰も目を合わせてくれないの?

陽気なアルバさんも、翼を収めたシンシアさんも。
冷静なジェシカも。キュリオに至ってはルドラと遊んでる。

超大事なお話合いだと思うのに。僕にお任せ状態。
「早く行こうぞ。スイーツが待っておるのじゃ」
さっきからそればっか。

帰るなら娘も連れてけって聞かない聞かない。
ルドラも行きたい行きたい言ってて。収拾が。

「もう一回確認ですが。本当にお預かりしてもいいんですよね?」

「諄い。何度も言わせるでない。娘とは魂で繋がっておる。何かあれば直ぐに気付ける。我らも着いて行きたい所じゃがこの大陸の統一が先決じゃ」
詰り。我が儘し放題な反抗期真っ盛りの娘が、少々お邪魔だと言っているのですね。解ります。何となく。

「解りました。お預かりします」
拒否権なさげだし。無事に帰る為には選べるのは一択。

勝手に暴れ回られても困る。困るなら傍に置いとけって図式と相成りました。


なかなか上等な黒砂糖を分けて貰った。
「この大陸の唯一の甘味。それはルドラの父、シンスケが興味を示してな」
「シンスケ…?」

「ある日突然現われた、あの馬鹿の唯一の功績」
「そのおバカは、今どちらに?」

「大きな声では言えないのじゃが。妾が燃やし殺した」
バッチリとルドラに聞こえてる。
「またまたご冗談を」

「冗談ではない。堂々と浮気すると豪語したのでな。生き恥を晒す前に消したのじゃ」
何が悪いの?って顔してる。マジかぁ。
この人怖いわぁ。

女性陣が僅かに揺らいだ。ちょっと共感してない?
しないって浮気なんて。


そんなこんなで梶田の娘と思われるルドラを拾い、キルヒマイセンを出発。

あの梶田の娘だとすると、随分と成長が早いなぁ。
幼女期は通り過ぎ、小学生高学年レベルの体格。見た目小さい子なのは確かだけど。

「ここに留まれば、成長速度は早い。外界へ出れば恐らく人間のそれと変わらなくなる」
ような事をルシフェルママさんは教えてくれました。
お預かりは確定なんで、ホントか嘘かはもうどっちでもいい。気が済むまでスイーツ食わせるか。

太る心配?ご無用です。
純粋な人間とは違󠄅くて、カロリーは魔力変換可能らしいので、時々発散させれば良いらしい。便利だ。


ルドラを負ぶさり、イオラに騎乗してグラテクス方面への移動中。
「あれは何じゃ!あそこは何じゃ!」
とルドラが興味を示した風景を説明する解説員となりましたとさ。

騎乗に関しては少し問題が起きた。

イオラが初めて拒絶反応を示したのだ。

どうやら上位魔族には、魔物や魔獣を統べる特性が元々備わってるんだって。
だから長時間直接触れられるのは嫌なのだそう。

ランク外でも根本の特性は変えられないらしい。言い換えるなら本能。


丁度トルメキヤ帝都上空に差し掛かった時。
「あれは何じゃ。あのメラメラと燃え盛っておるのは何じゃ。お祭りなのか?」

「あぁ、あれは火事だねぇ。ちょっと規模がデカ…」
帝都炎上中。中央区画にほど近い南東部域一帯が。
火の手は第二門まで拡大しております。

慌てて大量の水を上空から放水。鎮火作業。

「おめぇらはもう行け。時間ねぇべよ」
アルバとシンシアが残ると宣言してくれた。

確かにこれ以上のロスタイムは好ましくない。

「お任せします。あとこれを」
水の魔道具を幾つか手渡し、そのまま離脱。
藤原ヴェルガの行方が気になるけど、簡単には死ねない身体を心配するだけ無駄。

ジェシカもキュリオも気になるのか一瞥。
キュリオはツーザサと光景が被るのだろう。薄ら涙を浮かべていた。
ジェシカの方は良く解らないな。

後ろ髪引かれつつ、マルゼへ帰還。と行きたかったけど背中のお姫様が駄駄を捏ねまくるので、急遽北海岸沿いを目指してメルボルに向かった。

浮かべるスイーツは何でしょう。ゼラチン系と寒天と柑橘系の果物と来れば、アレっきゃないぜ。




-----

帝都炎上。
夜空に通り過ぎた金色の輝きの後、天から大量の恵みの雨が降り一瞬で鎮火した。

「燃え燃え、燃え…、てなーい。サンクス!今の内だ。敵対者を排除しろ!」
「ハッ!!」

下の者の魂胆が大体解った。
こいつらどいつもこいつも、片割れヴェルガが持っていた消去をアテに余裕ぶっこいてる。

強力過ぎるスキルも考え物。
今は使えねぇっての。

中で待っていても暇だし寂しいので出て来た。
うっかり第三門内前まで。

TOPがここまで出張っても、誰1人止めやしない。
ある意味すげえ。

肝が据わってるのか、単なるアホかは置いといて。


大都市帝都ランズハーケン。
堀で囲まれた中央区画を中心に据え置き、6つの円周壁とそれぞれに通用門が東西、南北と交互に配置される。

壁と壁との間は約1km。中央から最寄りの居住区まで直線で6km強。蛇行しながらだと軽く1.5倍の距離。

それをこうも短時間で侵入を許した。

「用水路か」

「ご明察です。陛下」グレッグが目前に現われた。
実質の手引きをした犯人はこいつだな。

「下水を逆走するとか。汚いな。汚いな!!近付くな!触るな!大人しくするから」

「きょ、強調せんで下さい…」

嫌ならやるなよ!

あっさり捕縛チームに拘束されてしまった。
直近の護衛隊諸共。手際が良すぎる。

国内敵だらけじゃん。こいつ、人望どんなけ無いんだ。

「本当に消去を失ったのですね。嘆かわしい」
え?それはどこから目線?


「臭い!触るでない」

グレッグの後ろから、今度はヨボヨボの爺さんが風の如く現われた。頼むから普通に歩け。

「皇帝陛下自らお出ましとは。手間が省けますなぁ」

「誰?」

「こちらはグロアード様です。高名故に名以上の紹介は不要でしょう」

グロアード?あの【強奪】スキル持ちか。
「目的は国か?余の身体か?止めよ。爺に犯されるとか無いわぁ」

「…スキルと共に、人格まで変質したようだな。目的はお主が持つ不死身のスキル。案ずるな。奪っても身体は残るでな」

「い、痛くしないで。やさ…。む?不死身?そうか…。やーめーてー(棒)」
一応の抵抗を見せ、ゴロゴロと転がると締め付けがきつくなった。ドMだったら喜ぶべき所。

しかしヴェルガも俺もM性は皆無。苦しい。

「我らが悲願。今ここに」

グロアードの手が首元まで伸びて来る。

-スキル【強奪】
 並列スキル【吸収】発動が確認されました。-

手が触れた瞬間。ヴェルガの身体が一つ跳ねた。

「いーやぁー」

「フフッ、フハハハッ。これで、これでこそ…」

-スキル【消去】を獲得。
 これに伴い【強奪】【因果】【長寿】が統合。
 最上位スキル【強奪】は
 【因果応報】へと進化しました。
 並列スキル【自己崩壊】強制発動されました。-

「な…。なんと…」

グロアードの身体が、指先崩れる。塵と消えるまでの数秒間、彼の顔は苦悶と歓喜の表情を同時に浮かべていた。

「ちょ、ちょっと待て。お前、馬鹿か!奪えよ。ちゃんと奪ってくれよ。抵抗してないじゃん。何やってんだよ!」
ヴェルガの叫び声だけが、虚しく響いた。

グレッグを筆頭に、ミルフィネ勢の面々は立ち尽くしたまま動けずに居た。

状況を飲み込めるまで更に数秒。

-スキル【不死身】
 バラストスキル【消去】の乖離に伴い、
 最上位スキル【不死身】は
 【不遇】へと進化しました。-

ヴェルガを拘束していた縄が自然に解けた。

完全に抜け出たと同時。
天空から飛来した2人の姿。その気配に気付いた時には全てが決着していた。

終わり良ければ万事善し、ではあるが。

「クヨクヨしても、しゃーないかぁ」

-スキル【不遇】
 並列スキル【無病息災】発動が確認されました。-

融合後、変質したヴェルガは。
基本的にポジティブだった。

しかし自分自身のスキルの変化に気付いたのは、暫く時が経ってから。
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