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第1章 紅峠
第8話 討伐依頼書
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テンプレってよくある話。定番のシチュエーションってやつ。
折角異世界まで来たのに、冒険者ギルドに仮登録出来たのに。突如勃発する新人潰し。
だからさ。解ってるなら、回避するでしょ。
ギルドの掲示板前。朝方は序列の高い人たちから順番を守る。
新人に残される依頼なんて、多寡が知れてる。難しい内容なら上位のベテランさんが持って行く。新人の僕らでは手出しが出来ないし、死亡確率が格段に上がる。
反面、そういった形で未来ある新人を守っているとも見れる。
「おい!新人だな。邪魔だ、ど・・・いてるのか・・・」
強面のベテランさんが後ろに来たので、言われる前に掲示板から離れておいた。
僕らは完全に誰も居なくなった後でいい。
「今日はいいのがねぇなぁ」
「遅刻するからよ」
強面にも臆することなく、普通に遇うギルド職員さん。やっぱ職員さんが最強なのかも。
結構美人さんだし。巨乳さんだし・・・。
ヒオシが隣で鼻の下を伸ばして、職員さんの胸元をガン見してる。さっきからずっと。
それ完全アウトのセクハラだから。格好悪いから止めて欲しい。早く発散させてやらないと、こいつは危険だ。
職員さんは見られる事に慣れているのか、ちょっとだけ頬を染めるだけで怒るでもなく業務を熟している。おいヒオシ。バッチリバレてるぞ。
強面さんが今日は諦めて帰ってしまった。残された依頼書を確認確認。
SSS。黒竜の討伐。アホか!
ファンタジーのど定番がプリントされている。多少盛られてる感はあるけど、引いて見てもリアルにドラゴンが描かれてる。絵師の確かな腕が窺える。
更に驚いたのは、学校の置かれた場所から西に行った森一帯が生息地だった事。触らぬ神に祟り無しはこの事だ。直感を信じて東に向かって良かった。ギャンブルの連続。こんな幸運は長くは続かない。必ず何処かで失敗する。
動悸と冷や汗を収めて、次。
SS。大狼の討伐。はい、ダメ。
モチスルーの対象だけど情報だけ入手。外観は不明で黒い塗り潰し。遙か北方の山岳地帯が縄張り。それに挑んで帰ってきた者は居ないと説明されている。
フェンリルだなコレ。銀毛の巨大狼をイメージした。
S。雷鳥の討伐。これはあんま見たことないな。
全ての詳細は不明。こいつは何処からともなく飛来して、襲い掛かって来るが対象を持ち帰る訳でもなく、目的も不明。対象は人間や獣、大型の魔物と多岐に渡る。
単なる戦闘狂だったりして。サンダーバードがフェンリルと喧嘩してるイメージを持った。
AAA。一角獣の討伐。一角の暴れ馬。
これを乗りこなせれば最強の馬主に成れる!って言われても・・・。ユニコーンだね。
上級向けは以上。他のめぼしい物は持って行かれて貼られてない。
少し飛んでB。大熊の討伐。大きなグリズリー。
南の森最深部の主。もしも出会ってしまっても、即座に逃げるのは避けるべし!好物の生肉を差し出せば、逃走確率アップ?逃げるが勝ち。なぜ疑問形??
奥まで行かなければヨシって事で解決。
「メイリダさん。この大熊だけBなのに残ってるのはどうしてですか?」
受付職員さんに聞いてみた。
「それねぇ。個体差が激しすぎるの。大熊が番とかで2匹以上居る場合、A級パーティーでも対処がとても難しくなるのよ」
熊さんのファミリーに出会したら絶望的と。
メイリダさんと僕ら以外は、ロビーには誰も居なくなった。たっぷり時間を掛けて吟味する。
昨日仮登録したばかりの僕ら新人はF級。討伐対象のランクはあくまで目安。実際に戦ってみないと実情は解らない。
例えばEやFの、スライムやゴブリンの討伐。相手の数や規模が不明な物には手を出してはいけない。低級の魔物でも大軍で押し寄せて来たらアウトだし、スライムもその個体が巨大であった場合、内部核を破壊する前に取り込まれたら窒息昇天、あの世へまっしぐらさ。
そこらの見分けと仕分け、割り振りを決めるのがギルド職員さんのお仕事。
町中のギルドで仮の登録。ある程度の武勲を積み上げ、王都に行ってから正式登録。
低級でも達成報酬は上がり、登録証は身分証にもなるので欲しがる人は大勢居るらしい。僕らも漏れなく。
功を焦って勢いで特攻。それで死んで貰っては困る。がギルドの言い分。
上位への道のりは険しいな。
昨日は安全な薬草集めに勤しんだ。報酬は当然ショボかった。ギリギリ一泊分の宿賃。
さてと、新人らしく。今日はゴブリン退治でもしようかな。顎に指を当てながら依頼書を外す。
「タッチー。ショッピングじゃないんだから・・・」
「まぁまぁ。許可されるかは聞いて見ないとさ。メイリダさん、これお願いします」
「うーん。ゴブリンかぁ。通常はEかFの複数で行くものだけれど・・・。他の子たちは出発してしまった後だしなぁ」
暫く依頼書と僕らを見比べて唸っていた。
「うん。2匹までなら許可します。深追いは絶対しない事。巣を発見しても近付かない入らない。約束出来る?」
「はい!出来ます。メ、メイリダさん。お金が貯まったら、こ、今度のお休みにお食事でも」
勇気を出しての不意打ちアタック。ヒオシ、美人なら誰でもいいのか?
急に誘われて固まっていたメイリダさんも、再起動後に。
「そ、そうねぇ。ゴブリン退治だけで誘われてたらお断りだったけど・・・。お金がちゃんと稼げるようになったらね。・・・ヒオシ君。逃げる事は恥じゃない。これだけは忘れないで」
「はい!危なくなったら逃げます!」
真逆の生きて帰れOKとは・・・。出遅れた僕は、何も言えません。
別の誰かと、フラグでも立てよかな・・・。別の誰か・・・。誰かか。
不意に鷲尾さんの顔が浮かんだ。何をバカな。
学校を出たあの日。助けようとも、誘おうともしなかったくせに。
言い訳。自分一人なら野垂れ死んでも構わないと思ってた。
出るほうも、残るほうも。どちらが正解か解らなかった。
胸に残る淡い想いも、伝えてはいなかった。
彼女を守り切れる、自信が無かった。それは今でも。
折角異世界まで来たのに、冒険者ギルドに仮登録出来たのに。突如勃発する新人潰し。
だからさ。解ってるなら、回避するでしょ。
ギルドの掲示板前。朝方は序列の高い人たちから順番を守る。
新人に残される依頼なんて、多寡が知れてる。難しい内容なら上位のベテランさんが持って行く。新人の僕らでは手出しが出来ないし、死亡確率が格段に上がる。
反面、そういった形で未来ある新人を守っているとも見れる。
「おい!新人だな。邪魔だ、ど・・・いてるのか・・・」
強面のベテランさんが後ろに来たので、言われる前に掲示板から離れておいた。
僕らは完全に誰も居なくなった後でいい。
「今日はいいのがねぇなぁ」
「遅刻するからよ」
強面にも臆することなく、普通に遇うギルド職員さん。やっぱ職員さんが最強なのかも。
結構美人さんだし。巨乳さんだし・・・。
ヒオシが隣で鼻の下を伸ばして、職員さんの胸元をガン見してる。さっきからずっと。
それ完全アウトのセクハラだから。格好悪いから止めて欲しい。早く発散させてやらないと、こいつは危険だ。
職員さんは見られる事に慣れているのか、ちょっとだけ頬を染めるだけで怒るでもなく業務を熟している。おいヒオシ。バッチリバレてるぞ。
強面さんが今日は諦めて帰ってしまった。残された依頼書を確認確認。
SSS。黒竜の討伐。アホか!
ファンタジーのど定番がプリントされている。多少盛られてる感はあるけど、引いて見てもリアルにドラゴンが描かれてる。絵師の確かな腕が窺える。
更に驚いたのは、学校の置かれた場所から西に行った森一帯が生息地だった事。触らぬ神に祟り無しはこの事だ。直感を信じて東に向かって良かった。ギャンブルの連続。こんな幸運は長くは続かない。必ず何処かで失敗する。
動悸と冷や汗を収めて、次。
SS。大狼の討伐。はい、ダメ。
モチスルーの対象だけど情報だけ入手。外観は不明で黒い塗り潰し。遙か北方の山岳地帯が縄張り。それに挑んで帰ってきた者は居ないと説明されている。
フェンリルだなコレ。銀毛の巨大狼をイメージした。
S。雷鳥の討伐。これはあんま見たことないな。
全ての詳細は不明。こいつは何処からともなく飛来して、襲い掛かって来るが対象を持ち帰る訳でもなく、目的も不明。対象は人間や獣、大型の魔物と多岐に渡る。
単なる戦闘狂だったりして。サンダーバードがフェンリルと喧嘩してるイメージを持った。
AAA。一角獣の討伐。一角の暴れ馬。
これを乗りこなせれば最強の馬主に成れる!って言われても・・・。ユニコーンだね。
上級向けは以上。他のめぼしい物は持って行かれて貼られてない。
少し飛んでB。大熊の討伐。大きなグリズリー。
南の森最深部の主。もしも出会ってしまっても、即座に逃げるのは避けるべし!好物の生肉を差し出せば、逃走確率アップ?逃げるが勝ち。なぜ疑問形??
奥まで行かなければヨシって事で解決。
「メイリダさん。この大熊だけBなのに残ってるのはどうしてですか?」
受付職員さんに聞いてみた。
「それねぇ。個体差が激しすぎるの。大熊が番とかで2匹以上居る場合、A級パーティーでも対処がとても難しくなるのよ」
熊さんのファミリーに出会したら絶望的と。
メイリダさんと僕ら以外は、ロビーには誰も居なくなった。たっぷり時間を掛けて吟味する。
昨日仮登録したばかりの僕ら新人はF級。討伐対象のランクはあくまで目安。実際に戦ってみないと実情は解らない。
例えばEやFの、スライムやゴブリンの討伐。相手の数や規模が不明な物には手を出してはいけない。低級の魔物でも大軍で押し寄せて来たらアウトだし、スライムもその個体が巨大であった場合、内部核を破壊する前に取り込まれたら窒息昇天、あの世へまっしぐらさ。
そこらの見分けと仕分け、割り振りを決めるのがギルド職員さんのお仕事。
町中のギルドで仮の登録。ある程度の武勲を積み上げ、王都に行ってから正式登録。
低級でも達成報酬は上がり、登録証は身分証にもなるので欲しがる人は大勢居るらしい。僕らも漏れなく。
功を焦って勢いで特攻。それで死んで貰っては困る。がギルドの言い分。
上位への道のりは険しいな。
昨日は安全な薬草集めに勤しんだ。報酬は当然ショボかった。ギリギリ一泊分の宿賃。
さてと、新人らしく。今日はゴブリン退治でもしようかな。顎に指を当てながら依頼書を外す。
「タッチー。ショッピングじゃないんだから・・・」
「まぁまぁ。許可されるかは聞いて見ないとさ。メイリダさん、これお願いします」
「うーん。ゴブリンかぁ。通常はEかFの複数で行くものだけれど・・・。他の子たちは出発してしまった後だしなぁ」
暫く依頼書と僕らを見比べて唸っていた。
「うん。2匹までなら許可します。深追いは絶対しない事。巣を発見しても近付かない入らない。約束出来る?」
「はい!出来ます。メ、メイリダさん。お金が貯まったら、こ、今度のお休みにお食事でも」
勇気を出しての不意打ちアタック。ヒオシ、美人なら誰でもいいのか?
急に誘われて固まっていたメイリダさんも、再起動後に。
「そ、そうねぇ。ゴブリン退治だけで誘われてたらお断りだったけど・・・。お金がちゃんと稼げるようになったらね。・・・ヒオシ君。逃げる事は恥じゃない。これだけは忘れないで」
「はい!危なくなったら逃げます!」
真逆の生きて帰れOKとは・・・。出遅れた僕は、何も言えません。
別の誰かと、フラグでも立てよかな・・・。別の誰か・・・。誰かか。
不意に鷲尾さんの顔が浮かんだ。何をバカな。
学校を出たあの日。助けようとも、誘おうともしなかったくせに。
言い訳。自分一人なら野垂れ死んでも構わないと思ってた。
出るほうも、残るほうも。どちらが正解か解らなかった。
胸に残る淡い想いも、伝えてはいなかった。
彼女を守り切れる、自信が無かった。それは今でも。
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