ラブコメの舞台にとんでもないチャラ男が入学してしまった。〜BSSをくらう主人公に転生したクズが原作ヒロイン達を無自覚NTRって全員セフレに〜

けら

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3章。 クズと令嬢

甘い毒薬の副作用をあなたに贈ろう

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最近、イライラが収まらない。



高校に入学して、暫くは平穏な毎日だった。

好きな人と、ライバルだけどなんだかんだウマの合う親友と3人で仲良く過ごせていた。

成り行きで入った生徒会も居心地が良くて、
毎日忙しいけど充実した日々を過ごせていた。

いつからそれが狂ったか。
思えばあの男を生徒会に呼び出した日からだと思う。

とは言っても、別にあの男に何かをされたわけではない。ただ単に、あの日から少しずつおかしくなっていったと言うだけだ。

だからやはり、彼が原因なのかな?

...いや、考えすぎだろう。


正直言って、私はあの男を必要以上に意識している自覚はある。
勿論私が好きなのは昔からカズだけだ。
それは変わりない。

でも、恋人がいる、好きな人がいる人にも、それぞれ好きな芸能人はいるでしょう?


白状してしまうと、
私はモデル・佐藤優の隠れファンだった。


別に恋愛感情ではない。
あくまで好きなモデル、と言う立ち位置だ。



ただそれが、思っていた以上に近くにいたら?
同じ学校で、同じ学年だとしたら?


意識してしまうに決まってる。


ただ、何度も言うが私は早坂一のことを恋愛的に好いている。
そしてあの男との初対面時は、カズも一緒にいた。


しつこいが私が好きなのはカズだ。
ただ、佐藤優はある種、憧れの人物だ。
そんな男と接するのに、油断したら必要以上に照れてしまうかもしれない。
そしてカズに誤解されてしまうかもしれない。

だから私は言葉で、態度でハリボテの武装をした。

昔は誰にでも優しくしていた私だったが、
告白されることが増えてきてからはカズ以外の異性に対しては多少冷たく接するようにしていたので、少しは違和感を持たれたかもしれないが私が佐藤優を意識していたことは誰にもバレていないだろう。


ただ必要以上に尖りすぎた自覚はある。
...それも、あの男が思った以上にキツいことを言い返してくれたおかげで不審には思われなかったけれど。


少しムキになってしまってつい腕を掴んでしまった際に、バランスを崩して抱き抱えられた時は不覚にも赤面してしまったが、まぁ概ね上手く乗り切れたと思う。


次の日に改めて佐藤優と生徒会で再会したが、変わらずの不遜な態度で会長相手にも一歩も引くことなくかっこよ...じゃなかった生意気な男だった。


...その際つい、彼の先輩だと言う男を必要以上に悪く言ってしまったのは少しだけ後悔している。だが天道先輩は本当に良い噂を聞かないのだ。勿論、佐藤優と同じ雑誌に載っていることもあって私も昔から知っていたが、その時から評判が悪く言葉は悪かったかもしれないが本心から心配していたつもりだ。

その際に鞘が彼の両親まで悪く言ってしまって、見るからに機嫌が悪くなったのは本当に申し訳ないと思うけれど。


...まぁこれで私の印象は最悪だろう。
彼のファンとしての私は落ち込むが、
カズのことが好きな私としては下手に誤解されるくらいならこれでよかった。
これで負い目なく、カズを鞘と奪い合えると、これから頑張るぞ、と、そう思った。



最初に変化があったのは副会長だった。

特に恋愛感情はないが、見た目に反して優しい先輩で、後輩の私達に気配りをしてくれつつ仕事も学業もこなす、頼りになる先輩、と言うのが私の副会長に対する評価だった。


だけど本当に突然、態度が変わった。
いつも通り業務に励んでいるが、なんだろう、まるで私達をいないものかのように扱い出したのだ。
話しかけても素っ気なく、業務に関係する質問なら答えてくれるものの無駄話には一切反応しない。
いつもなら、調子はどうだ、等気配りを絶やさない人のその変化に、私達は戸惑った。
いや、なぜかカズにだけは今まで通り、
むしろ、今まで以上に目をかけるようになったこともまた戸惑った理由だ。
不思議と花山先輩だけはいつも通りだったのだけど。


そのせいで居心地の良かった生徒会室はなんとなく微妙な雰囲気になってしまった。


そして次に変化があったのは会長、いや生徒会だ。

なんと突然、会長がカズをクビにしたのだ。

当然、私と鞘は猛反発した。
何度も何度も理由を聞いた。

だけど会長は、

「お前達の疑問は最もだが、答えることはできない。だがこれは遊嵐生徒会長として、早坂を辞めさせることを必要と判断したからだ」

と、相手にしてもらえなかった。
この学園においては、生徒会長と言う立場は絶対だ。
鞘の実家の力も及ばない。
だから私達は黙るしかなかった。

かと言って、わかりました、さようならでは終われない。


私達はしばらく生徒会に残り、
一体何があったのかを突き止めることに決めた。


だけど全く進展は得られず、
私も鞘もイライラして少しギクシャクし始めてしまった。


カズと一緒にいられる時間を減らしてまで時間を費やして、何の進展も得られず、親友とも少しギクシャクしている。それはもう、イライラしても仕方ないでしょう?


だから土曜日で、学校がない日を利用して気分転換に私は一人で街へ繰り出した。


もうすぐカズの誕生日だから、色々物色するつもりだった。
鞘には財力で敵わないけど、伊達に長年カズの幼馴染をやっていない。
カズの好みは把握している。
今年も私のプレゼントで一番喜んでもらうつもりだ。
また3人で祝うために、カズの誕生日までには解決させる気でいる。



そんな私にとって、
目の前の光景は到底受け入れ難い。



「えへへ。カズ君の手、おっきいね」

「な、ななちゃんの手も柔らかいよ」

「あー、もう、カズ君のえっち!めっ!」

「ご、ごめんっ!そんなつもりじゃ...」

「ふふっ。わかってるよ。いこっ?
カズ君の誕生日前哨戦だよ?」

「うん!嬉しいなぁ」




カズが、私の好きな人が、知らない女と手を繋いで歩いていた。


これが女がぐいぐいいっていて、
カズが困っていたら私は絶対に間に入っていた。
いつも鞘の行動にカズが困っているからだ。


だけどこれはなに?
私は知らない。
あんなカズの表情を。態度を。
あんな、困るとかではなく、ただただ純粋に嬉しそうに、仲睦まじく手を繋いでいるなんて。

それに、髪、上げて...。
あんなお洒落した姿、私は知らない。



彼女、なのかな。



天気は夏らしくカラッとした快晴なのに、

もう梅雨は明けたはずなのに、

私の心には雨が降りだした気がした。




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