ラブコメの舞台にとんでもないチャラ男が入学してしまった。〜BSSをくらう主人公に転生したクズが原作ヒロイン達を無自覚NTRって全員セフレに〜

けら

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前日譚

染み付いた歪みは生まれ変わったくらいでは消えない

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俺は間違いなく充実している。

素晴らしい自慢の両親。
軽口を言い合える友達。
程々に働ける仕事。
恵まれた容姿。
前世由来の学力、運動神経。
そしてなにより愛する彼女。


全てを持ってると言ったって過言じゃない気までしてくる程だ。


それなのに。
なにかが足りないような。
全部全部満たされているはずなのに。
満タンの容器に極小さい穴が空いているような。
そんな気がしていた。




◇◇◇




「優君のバカー!浮気者ー!!!もう知らないもん!」

「いや美愛!待てって!浮気じゃない!仕事だったんだから仕方ないだろ!」

「そんなの私知らないもん!嫌なものは嫌なの!最低だよ!」

中学3年生の夏休み前、俺は美愛と生まれて初めて喧嘩をした。

原因は俺の仕事にある。
夏休みのデート特集と言う企画で、
同じ事務所の2つ上の先輩モデルの女性とデートに行く撮影があった。


仲睦まじく笑顔で手をつないで街を歩いたり、食べさせ合いっこしたり等、あくまで健全な彼氏彼女のデート風だ。

最後に上手く角度をつけて、キスをしている風の写真で締めくくられた今回の特集だが、

これは俺の悪い癖だったんだが。
前世ではそんな撮影ごまんとあった。
高校を卒業してからは濡れ場の撮影シーンだってあった。
そして俺はプロ意識が高い。
伊達に長年ロボットじゃなかったからな。

仕事はあくまで仕事で、俺自身そこに何のやましい気持ちもなかったし、しっかりと割り切っていたからこそ。

それを知らされずに雑誌発売日に目にした美愛がどう思うかを全く分かっていなかったんだ。

いや、今でもわかっていない。



俺は両親にしこたま怒られた。

キスはあくまでフリだし、確かに手は繋いだがそれは仕事として、で、お互いに何の感情もない。何でみんながそんなに怒っているのか俺には全く分からなかった。


でもそこは元々役者もやっていた俺の演技力でなんとか解決に持っていった。

心底から心を込めた謝罪をする優を演じて、なんとか美愛と仲直りをすることができた。


でもコトはそう簡単には収まらなかった。


夏休みのある日、俺は今、喧嘩の発端になった撮影を一緒にした先輩モデルの境 彩花(さかい あやか)さんとの連絡のやりとりを目にした美愛に泣きながらブチギレられている。


「やっほ!この前は撮影お疲れ様ー!
優君も今夏休み中でしょ?受験勉強とかで忙しいかもだけど、よかったらお姉さんが気晴らしにデートしてあげてもいいよー♡」

「お疲れ様です。勉強は正直そんなに忙しくないですね!頭の出来が違うんで()
デート!って何でそんなに上からなんですか!(笑)お誘いは嬉しいですけど友達との予定で埋まってまして...」

「言うねえー(笑)
それは簡単だよ!お姉さんだからね!
えー!じゃあさじゃあさ、8月10日は?撮影確か一緒だよね?撮影終わりにちょっと遊ぼうよ」

「彩花さんどっちかと言うと年上の可愛い妹感あります(笑)
あぁ、それなら大丈夫ですよー。楽しみにしてますね!」

「もー怒った!でも可愛いは嬉しい!私も楽しみ!じゃあね!」



俺的にはただの仕事仲間との軽いやり取り。
でも美愛にとっては全然違ったみたいで、


「ぐすっ...優君、私に内緒でデートする約束してるの...ひどいよ...私とは全然お出かけしてくれなくなってお家ばかりなのに...浮気してたんじゃん...なんで友達との予定なの?なんで彼女って言ってくれないの?」


とのことだ。

だが俺は美愛が浮気と曲解する意味が全く分かっていなかった。


いくら学生同士で上下関係が緩いとは言え、仕事の先輩でありあまり無下にはできない。
それにデートなんていって茶化してるがこんなのただの軽口であって、そもそも休日の約束はちゃんと全部断っているし、撮影終わりに出かけるのもご飯を食べに行くくらいでただの付き合いだ。
彼女を隠すのは俺が思いの外人気が出てしまったこともあって何かの間違いで美愛に被害が行ってしまったら困るから。
どこから情報が漏れるかも分からないから彩花さんにも言わなかった。


そんなようなことを言ったが依然として美愛は怒ったままだった。


後は...これは美愛にも言えないが
前世ではガチガチにスキャンダル対策をしていた16歳までと、それ以降好き放題やってスキャンダルで仕事を続けられなかった経験から自然と彼女がいることを隠してしまっていた。
それに前世、セックスにハマってからは女性との連絡は自然と口説くような感じになっていたし、もっとストレートにえげつないこともバンバン言っていたので感覚がおかしくなっていたのかもしれない。
とにかく俺にとってはやましいことのない普通の連絡のつもりだったんだ。



「もう優君が信じられないよ...ね、お願い、撮影行かないで?彩花さんにも会わないでよ。ずっと一緒にいてよ」


美愛が意味のわからないことを言ってきた。
仕事をやめろ?俺に親の脛を齧って生きろと?この前大層喜んでくれた美愛の誕生日だって俺が働いたからできたことだし、そもそもこれは美愛に言ってないが、俺は仕事を辞めるわけには行かない理由がある。彩花さんに会わないで?俺に下心があるならまだしも仕事仲間にそれは失礼すぎるだろう。


結局その日のうちに仲直りはできず。
俺は美愛と喧嘩したまま8月10日の撮影日を迎えた。
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