上 下
230 / 254
亜人大陸編

226話

しおりを挟む
バタンと聞こえた後方ではカイが植物から救出されていた。
しかし、それと同時に支えを失った人形のように倒れてしまった。
近くのマイもそれで意識を取り戻したかのように動き出しカイに駆け寄る。
その瞳には涙が溢れていた。
立ちすくんでいた間に状況の整理が出来たのだろう。
涙を流しながらも回復魔法をカイにかける。
瞬時に手の傷は消えていくが彼はピクリとも動かない。



後方の様子を一瞬確認しカイが救出されたことを確認したリーセス。
今もっとも動けて冷静であることは自分で理解していた。
精霊王もまた冷静だろうが、精霊王が全力を出すには準備が必要のようだ。
それを考えると自分が相手の注意を引くしかない。

これまでは感覚が変わるため使っていなかった技を使うことにする。
自分自身に幻惑魔法をかける。
それは、相手にかける幻惑魔法がいわゆるデバフなるものだとするとこれはバフにあたる。
かと言って強化魔法でもない。
イメージはドーピングに近い。
近いがドーピングよりも遙かに強力なものだ。
強化魔法は言わば体全体もしくは一部を強化するものなのに対し幻惑魔法によるバフは体全体もしくは一部を特化させるものだ。
例えば足を強化するにしても走る事に特化させるのと蹴る事に特化させるのでは効果ががらっと変わったりする。
しかし、それだと感覚が変わってしまう。
そこでその差を幻惑魔法で縮める事によって彼はこの技を使用している。
しかし、縮めるだけであるためやはり違和感を覚えるため本人は好きではなかった。
そして、もう一つ欠点がある。
それは、それを解くとほとんど動けなくなってしまうという点である。
そのためこれは後に精霊王がいるというこの状況だからこその選択であった。



「雰囲気が変わったな。かかってこい」
自分に幻惑魔法をかけたリーセスの変化にいち早く気付いたのはビルナーだった。
ビルナーは音が気になったのかカイの方を見ていたはずなのだが、リーセスが自身に幻惑魔法をかけた瞬間そちらを向き構えた。
余裕綽々といった様子だったビルナーが初めて構えた。
その事に一層警戒を強めつつリーセスは構え直した。



回復魔法をかけ続けるマイの横でサテュロスはある作業をしていた。
それは植物の乗っ取り。ビルナーの生やした植物をジャックし、自分のものとして利用できるようにしようと考えたのだ。
サテュロスの魔力を吸っていたせいかビルナーの力が周りの植物の多さになっているようだった。
この言わば領域合戦に勝利した方が有利になる。それはわかりきっている事だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で『魔法使い』になった私は一人自由気ままに生きていきたい

哀村圭一
ファンタジー
人や社会のしがらみが嫌になって命を絶ったOL、天音美亜(25歳)。薄れゆく意識の中で、謎の声の問いかけに答える。 「魔法使いになりたい」と。 そして目を覚ますと、そこは異世界。美亜は、13歳くらいの少女になっていた。 魔法があれば、なんでもできる! だから、今度の人生は誰にもかかわらず一人で生きていく!! 異世界で一人自由気ままに生きていくことを決意する美亜。だけど、そんな美亜をこの世界はなかなか一人にしてくれない。そして、美亜の魔法はこの世界にあるまじき、とんでもなく無茶苦茶なものであった。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...