月の都の花嫁

城咲美月

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ピリピリとした空気は、まだ続いていた。

「では、もう一つの疑問、金銭面はどうでしょう?
朝陽グループと言えば
我が帝国にも名前が聞き及んでいるほどですが
櫻井様には何かあるのでしょうか?」


「あら、ワイルダー様はご存知ない?
櫻井様のお父様は医師であり、我が帝国の唯一のゴッドハンドであり、皇帝陛下から直々に名誉医院長を授かっていますのよ
それにお母様は元々
条、九条、一条、西園寺、鷹司の五摂家の中の一つ
(実際の五摂家とは関係ありません)
条家の御息女であった方で、今は教員で活躍されています
それに櫻井様自身のご友人、一条様と仲が良いのです
これで納得していただけたかしら?」

な、何…?リーデル様は
にっこりと微笑んでいるのに、この底冷えするような寒さって…?

チラッと横を盗み見るけど、良かった…私だけじゃないみたいね、皆顔色が真っ青だわ。

「は、ははは…はい…い、い、異論はありません…」

さっきの騎士様も、震える声色で答えていた。



「これ以上の疑問は、何もなければ次の話に行かせて貰いたいと思いますの」
リーデル様がにっこりと微笑んでいる。

なんか、副音が聞こえたような気がするわ
多分だけど、「ごちゃごちゃ煩いですわ、疑問を並べる前に人の話を聞きなさい。」みたいな感じだった。

「疑問も出ないようですので、次にいきますわね」

「では、肝心の専属侍女と護衛騎士、それぞれ選んでいただきたいのですわ
どちらの専属になるかを」

その言葉に真っ先に手が上がったのは、さっきの騎士様と
騎士様の隣に座っている令嬢が揃って
「朝陽様に」と答えていた。

「コールディ様は?」
「私は、櫻井様に」
「レイスレッド様は?」
「…………櫻井様しかいないだろう」

「まあ!すんなり決まって良かったですわ」
にっこりと微笑んでいるリーデル様。

なんか、話を聞くだけだったのに流れで決まってしまったようなものね。

とにかくリーデル様を怒らせない事を胸に刻んで

櫻井奏様、和名は言いにくいけど奏様……奏様、
よし。覚えた。

書類上の写真をじっと見るけど、お人柄までは分からないわよね。

威張り散らす人じゃなきゃいいけど…。

「では、ヨレン.ワイルダー様とセバンスティーヌ.ソレイユ様は朝陽様の専属侍女と護衛騎士に任命をいたします」

「アネッタ.コールディ様とアレックス.レイスレッド様は
櫻井様の専属侍女と護衛騎士に任命いたします」


リーデル様がにっこりと微笑みながら、それぞれの顔を見る。

「こちらの資料をよくお読みの上、2週間後の午前9時頃
またこちらにお越しくださいな」

「かしこまりました」

皆一斉に頭を下げた後、私はカーテシーをする


「お客様方がお帰りになるわ」
リーデル様が先ほどの執事を呼んで、お見送りをしていた。

「お気をつけてお帰りください」
そう言われた後、もう私の奇獣まで連れてきていた。
さすが、仕事が速い。


そうして、解散となる。

2週間後なら、急がなきゃね。


私は、そうして公爵家を後にした。





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