月の都の花嫁

城咲美月

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念願の絵の具

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鬼気迫る勢いのアンさんのおかげで、一応無事であると言っておこう。

フラグを立たせる意味はないからね。

アンさんが、カードキーに貸し出し記録を打ち込んでいるのを少しだけ待つ。

「はい、これで貸し出し記録は打ち込み終わりました」
そう言って、本とカードキーを返してくれる。
私は手元に返ってきた本にカバーをつけて、生徒手帳のインベントリに『大事な物』として入れてしまいたい。
そうすれば無くさないから。
でも入れるとこはあんまり見せないほうがいいだろう。
生徒手帳のインベントリのことは言うつもりはない。

あ!そうだ
宝珠を使って、小さなショルダーバッグに変える事にする。
後で変えよう。今はまだ手に持ってていよう。
それに宝珠であれば、多少誤魔化しが効く。
宝珠の事は、2人とも知っているし。

そう思っていた所に「返却期限は、3日後のお昼12時までです」
そう言うアンさんの言葉に「はい」と頷き、図書室を後にする。







図書室から廃棄処分工場にやってきた私達。


廃棄処分工場の責任者に挨拶をしようとしたところ
「あー、良い勝手に持って行ってくれ」

と、手でシッシッと追っ払われた。
「あと、この書類にもサイン済みだ、倉庫はそこだ」
と、目の前の倉庫を指をさされた。
私は書類をちゃんと隅々まで眺めて、判子も確認した。

私達が書類を読んでいる内に工場長達の姿は居なくなってた。


なので、勝手にしちゃいまーす


私達は早速工場の倉庫に入って、アレックスに誰もいないか確かめてもらった後


「じゃあ早速」

アネッタもアレックスもムッとしていたけれども、
私が、月藜龍様の宝珠をアイテムボックスに見立て
生徒手帳のアイテムボックス欄を開いて
ストレージにした

ショルダーバッグよりも、アイテムボックスのほうが
見た目は良いよね

「アレックス、手伝ってくれる?」
「もちろんです」
「奏様!私ももちろん手伝います」
そう2人とも張り切ってくれた。


その頃
倉庫外での会話
工場長と社員の以下のやり取り



「工場長、アイツら何も持っていませんでしたけど
道具とか貸さなくて良いんですか?」

「別に構わねぇさ」

「そうですかね、オレ知りませんよ」


「フン!泣きついた後で貸してやる」


「うわぁ」

工場長と社員のやり取りを聞いていた他の職員達も
同様に笑っていた。

ひとりため息をついてソッと自分の持ち場から離れた男性がいた。


そんな会話がされているとは知らずに、着々とアイテムボックスに入れていた。

土嚢のような袋のサイズが、倉庫内に乱雑に積み上げられていた。

ほぼ倉庫内を占めていた為、処理には困っていたのだろう。
積み上げていたのが、
ほとんどが倉庫内で転がっていた。

この土嚢の袋は、ひとりで持てるくらいの重さだったし、
ちゃんと中身も確認したら、未処理の魔石もゴロゴロと出てきた。

「これ、大丈夫ですかね?」
「大丈夫だろ、あ、いや多分…」
未処理の魔石が出てきたところで、2人の焦った声と私を見るのは同時だった。

「安心して、大丈夫よちゃあんと書類を確認したもの」
とにっこり笑う

2人とも安心した様子を見せた。

「さて、どんどん入れてちょうだい」
アイテムボックスに私が入れていくと、2人とも少し引き攣った笑みを見せていたが

「大丈夫…なんだよな」
「たぶん…」

2人とも恐る恐る袋を入れていた。


アイテムボックスに吸い込まれていく様をみた2人は
驚きとともに、感動している。


「す、すごいです!奏様!これも宝珠の力なんですか?」

「ええ」

「へぇ~本当に凄いですね」


2人のキラキラした瞳に多少の罪悪感があれど、今は
作業をする事が先決。



アイテムボックスに変えた宝珠の力は確かに凄い事は変わりはないもの。
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