月の都の花嫁

城咲美月

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料理長ロイド

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私の部屋にて

私が目を覚ますと、ぼんやりと人影が見えて
次第にハッキリ形を捉えて見てみると、アネッタだった。

アネッタがカーテンを開けていた。

「アネッタ、おはよう」私がそう言うと、アネッタは「おはようございます」と笑っていた。

「もう起きられますか?」と、アネッタから聞かれ
「うん、もう起きるわ」と返事をする。

「奏様、もう気分は大丈夫ですか?」
「ええ、アネッタにも心配かけたわね」
そう私達が会話していると、コンコンとノックがある。

アネッタが私を見て私も頷く。

「しばらくお待ちください」そう言ってドアを開けると、アレックスがいた。
「奏様のお加減はどうか?自分も確認させていただきたい」
そう言うアレックスの声が聞こえてきたから
「アネッタ、入ってもらって」と言う

「どうぞ」とアネッタの声と共に入ってきたアレックスの表情は、こちらから窺い知れない。

「こんな格好でごめんなさいね、着替える前だから」と
私の困った様子を見て、アレックスは少しだけ私から視線を外した。

「考えが至らず、申し訳ありません
ですが、昨夜の奏様の様子を見ていても立ってもいられずすみません…」

「まぁ…!アレックスにも心配かけてしまったのね、ごめんなさい
でももう大丈夫よ、ありがとう」
私が微笑むと、アレックスはホッとしていた。

「それから、私を庇ってくれてありがとう
とても格好よかったわ」と微笑みながらアレックスにお礼を言う

「とんでもないです、お怪我がないようで安心しました」
「では、自分は奏様のご様子も知りましたしまた警護に戻ります、失礼します」

そう言ってバッと頭を下げてアレックスは、私の部屋を出る。

「急いで戻らなくて良かったのに」とポツリと漏らすと
「そんな事ありません!奏様!次からはちゃんと着替えてからお願いします!今日は特別です!」

ぷんぷんと擬音が出ていそうなアネッタに
「分かったわ、ごめんなさい」
と素直に謝る。


アネッタもアレックスの気持ちを分かるから反対せずに入れたのよね。
本来なら、パジャマ姿は夫以外には見せられないものね。

あーあ、ちょっとだけひとり暮らしの気楽さが恋しい。
「今日は、昨夜行けなかった廃棄工場と図書室に行くつもりだから服装は、スラックスにしましょう」

「かしこまりました」

アネッタも昨日の事を考えると、ジーンズまでは行かないものの、スラックスならと考えたようだ。

男装の麗人のような服装をちょっとだけ崩した格好だ。
廃棄工事に行くのに華美さは要らない。
髪型は簡単にポニーテール。
レースもフリルも付いてないし、デカエリは仕方ないけど、リボンもない。
うん、これなら廃棄工場に行っても問題なさそうね。

「奏様、朝の紅茶を飲み終わりましたら出発しますか?」

「ええ、そうね」とアネッタの言葉に同意する。
アネッタが朝の紅茶を用意する為に部屋を出る。

私は、早速生徒手帳のインベントリを開いて確認する。

すると、魅力値が250まで上がっていた。
100までが限界値だったはずが、最高値は一体いくつまでなんだろう?と不思議に思う。
最初の時も魅力値が180だったし
限界値なんてないのかも?


するとお知らせメッセージの欄のところが光っている。
タップして確認する。
「おめでとう御座います!魅力値が100を越えました!
ただし魅力値が100を超えても、ご存知の通り、
美容や健康を損なったり、病気以外の休みの日に油断して
サボったりお菓子を食べ過ぎてしまうと
当然ながら魅力値は下がります
まぁ、櫻井様なら余裕でしょう!
このまま上がり続けてください!」

読んだ時にこの生徒手帳をぶん投げたくなったわ!
あー!イラッとする!
ふぅ~、落ち着いて。気持ちを切り替えて。
もうすぐアネッタがやってくるはずだわ。

「奏様、失礼致します
朝の紅茶をお持ちしました」


「ありがとう」「あら…?」
「紅茶と一緒にスコーンを少し分てもらいました
昨夜から何も食べていないでしょう?」
と、アネッタの気遣いに私は嬉しくなる。

「ありがとう、いただきます」
そう言ってシスコーンを食べる。


朝は何も食べないと言っていたけど、昨夜から何も食べてない私に、一口サイズにカットしてあるスコーン。
甘くない、パンに近い丸い型のスコーン。

クロデットクリームが苦手な私はジャムだけ塗って食べる。
これなら食べやすい。
パクパクと食べてしまいそうになるけど、さっきの魅力値の事がチラついてゆっくり食べる。
でも、せっかく作ってくれたんだもの残すなんてしたくない
「ごちそうさまでした、アネッタ、ロイドにお礼を言いたいから私も一緒に行くわ」
「かしこまりました」

アネッタはにっこり嬉しそうに笑った。
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