月の都の花嫁

城咲美月

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すると、奥からザッと言う音と「あっ」と慌てている声が聞こえてきて

アルベルト団長が「参ったねぇ~どうも」とポツリと言うと、「お前たちバレてるぞ」の声が私の耳にも届いた。

へへへと、苦笑いしながら先ほどの竜騎士さんと数十人、
いや会議室にいた全員がこちらに顔を出した。

「いやぁ~凄かったなぁ」「うんうん」と竜騎士さん達の表情が穏やかだった。
開き直ったのか、とても和やかな雰囲気になっていた。

この、先生にイタズラが見つかった、バレた時の男子生徒のような行動を竜騎士さん達もするんだと思ったら笑いが込み上げてきた。


思わず
「ふ、ふふふっ」と口元に手を当てて笑ってしまっていた。

ヤグーワイズさんが「もういいから各自、自室に戻りなさい」
私が笑った事でヤグーワイズさんが怒るに怒れなかったのだろう。
怒りの行き場を失った声色で、竜騎士さん達に注意していた。
他の竜騎士さん達は「ヤベっ」と言って走って行ったが
数人と、先ほどの竜騎士さんが頭を下げて去っていく。
「ローレンスまで何やってんだか」と、ヤグーワイズさんのため息混じりの言葉を聞いて、思い出した。

そっか、あの人ローレンスさんだったんだ。
攻略キャラのひとりと接触していた事に気づいてなかったなんて、私もまだまだね。と考える。

「では、殿下急ぎましょう」とヤグーワイズさんが言う。
「うむ」と殿下も答える。

私はアネッタとアレックスに「これから、私達の女子寮に殿下とヒューストン様、ヤグーワイズさんが説明に一緒に行ってくださるから、リーデル様に報告も兼ねて帰る事になるわ」と言うと「承知しております」と2人とも頷いてくれた。

来た時と同様に殿下は奇獣に、私達はペガサスのソリ型に乗り込む。

アルベルト団長とヤグーワイズさんは竜かと思ったけど、
私の視線に気づいたヤグーワイズさんが
「ああ、櫻井様達の女子寮には竜二頭では少々狭いかと思いまして奇獣は慣れてないんですが」と
ちょっと困ったように笑う。
「そうなんですね」と私が言えば
「そー言う事だよん」とアルベルト団長がウィンクする。

………ウゲ。
思わず怪訝な顔になりそうだったけど、
「……では、お気をつけてくださいね」と私は言う。
「お気遣いありがとうございます」とヤグーワイズさんは言うが、アルベルト団長はクックックっと笑うばかりだった。

ヤグーワイズさんは卵を前に置いて固定して奇獣に跨る
アルベルト団長も奇獣に跨る
アレックスも奇獣に跨っていた。

私達もソリ型に乗り込んでふと空を見る。
もう夕方から夜になりかけていた。少し肌寒い。
キュルキュルと音を立てながら簡易的な屋根を
引き伸ばしたら、空が見えなくなる。

「奏様、これを」とアネッタが言うと、ブランケットを差し出してくれる。
「ありがとうアネッタ
アネッタも怖い思いしたでしょう?」
狭いから2人で使いましょう、と私はアネッタにもブランケットをかける。
「お気遣いありがとうございます」とアネッタが笑って言ってくれる。
大判のブランケットは、向かい合って座る2人にはちょうどいい大きさで、ふわふわしていた。
私は、まだ震えているアネッタの両手を優しく包み込む。
アネッタが無理していた笑いではなくなったのを見て
女子寮に着くまでの、私とアネッタの少しの癒しの時間と空間になった。

それからもう間も無くして、女子寮の前に私達は到着する。

キュルキュルと音を立てながら簡易的な屋根を引き上げると、殿下がもう立っていて「奏嬢、お手をどうぞ」と
エスコートをしてくれる。

「殿下、ありがとう存じます」と言ってそっと殿下の手を借りて降りる。
私が降りるとアレックスもアネッタに手を出していた。
アネッタは少し嫌そうな顔をしながらも、アレックスの手を取って降りていた。

私達が帰って来たのが分かったのだろう

中からリーデルさんと執事頭のレイニーさん、侍女頭のサマンサさんが出迎えてくれていた。
「お帰りなさいませ奏様、それからようこそお越しくださいました殿下並びにヒューストン様、ヤグーワイズ様」と
リーデルさんがカーテシーをして
執事頭のレイニーさんと侍女頭のサマンサさんは
深く頭を下げている。

「いや、こんな時間にすまないな
早速だが話があるのでな」と殿下が言うと
「承知致しております
サロンにてお話しを伺いますわ」と殿下に言うと、
リーデルさんが私に労いの言葉をかけて微笑んでくれる。

「奏様もお疲れ様でした、けれどももう少しお付き合いくださいませね」と言う
私も「承知しております」と微笑みを返す。
それから私はアネッタににっこりと笑うと、アネッタは頷いて「失礼します」そう言って私達から去っていく。

アルベルト団長にヤグーワイズさん
アレックスも
皆んなが女子寮に入ってサロンに足を向ける。
レイニーさんとサマンサさんもドアを閉めて、どこかに向かって行った。
「こちらですわ」とリーデルさんが案内をする。


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