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別に私から言う事はないんだけど、この何か言うまで終われない雰囲気に
深呼吸して、私は観念して口を開く。
そうよ、仕事でしていたじゃない大丈夫よ。
「えっ…と、竜騎士の皆様には私が来た事で巻き込まれてケガまでさせてしまった事はお詫びしようもありません
申し訳ありません。
お怪我の状態はどうですか?大丈夫でしょうか?」
眉毛を下げて、ケガの様子を聞けば
しぃぃんと静まっている。
その内に竜騎士のひとりが、「いや、それは俺…いや私達の認識の甘さだと自覚しましたのでサクライ様から謝っていただくことはないです」と、言ったことで他の竜騎士達が一斉に頷く。
あれ?この人、後ろに居た竜騎士の人?
「でも貴方は宝珠の意味を知っている様子でしたわ」と私が言うと何故それを?と驚愕の瞳で見られた。
アルベルト団長は「ほぉ…」と顎髭を触っている。
「あ、深い意味はありませんわ、たまたま目に入っていただけです」とにっこり笑う。
「それでケガは大丈夫ですか?」と私が聞けば
「大丈夫です」と腕や足を押さえている数人が答えた。
「まぁ!良かったです
でも大事になさってくださいね」と微笑むと数十人の竜騎士達が頬を赤く染めていた。
ゴホンと殿下のほうから咳払いが聞こえてきた。
「では、私達からは以上だ
解散!」
解散と言う殿下の言葉に、それぞれ動く。
ケガをしている竜騎士達は救護室に向かい
その他の残っている竜騎士達は椅子の片付けをして
殿下に殿下の側近と護衛騎士
それからアルベルト団長にヤグーワイズさんとマリーさん
私にアネッタとアレックスは
病気になっている竜の元に行く。
「ヤグーワイズ、こちらか?」
「はい」
会議室から出てから、竜達がいる場所とは別に
体育館の広さがあるほどの囲いに、一頭の竜が横たわっていた。
死臭がする、と言う事はこう言う事だろう。
思ったよりずっとぐったりしていて、痩せている筋肉に
羽根もほとんど動いてはいない、尻尾もピクリとも動いてはいなかった。
目の辺りに目ヤニが溜まっていて、竜の鱗が剥がれているところの肌が痛々しく目に入る。
「酷いな」と誰かの声で、私は思わずネックレスから
宝珠の形に戻す。
そしていち早く駆け出し、私は竜の近くにそっと座る。
私は自分が汚れるのは構わなかった。
そんな事気にする余裕はなかった。
私が来た事が分かったのか、鼻先がクンッと匂いを嗅ぐように動いた。
私の後を追ってアレックス達も駆け寄ってきていた。
「奏嬢!」「奏様!」殿下の焦った声とアネッタの焦った声が重なる。
「大丈夫よ、ちょっとだけ触るね」と声をかける事で、竜からの何も返事はなかったが拒否反応はなかった。
私は宝珠を近くに持っていき、心から祈る。
どうか。どうか、この子を治してください
毒を取り除いて、鱗もまた綺麗に生え揃えて竜として
また力強く生きれるように
そう願いを込めて祈ると、宝珠から暖かい光が溢れ出し
私と竜を包み込む。
「ありがとう」直接そう聞こえたわけじゃないけど、
そう言っているように聞こえた。
「いいえ、どういたしまして
早く良く治ってね」と私が言うと
「私からも礼を言う」と念話が聞こえる。
「月藜龍様?」
「ああ、この者の事は我も気にかけていてな、
宝珠を持っていても力を使えない我ではどうしようもなかった」
「だから我からもお礼を言うよ、カナデありがとう」
月藜龍様の顔は見えないが、ほっとした声色が伝わってくる。
「いいえ、私がした事ではありませんわ
宝珠の力です」
「それでも宝珠の力を使えるのはカナデ自身だ、本当にありがとう助かったよ」
「そう…ですか、良かったですわ
それでどのくらいで良く治りますか?」
こそばゆい想いをしながら、聞いている。
「そうだな、この者の体力次第だが、また栄養をとって次第にゆっくり回復していけば問題なかろう」
「そうですか!本当に良かったですわ」
と私が言うとヤグーワイズさんとマリーさんが泣いていた。
「月藜龍様ありがとうございます!
櫻井様ありがとうございます!」
「お嬢サマありがとう!」
2人からもお礼を言われた事に驚いたけれど、私は2人に
「良かったですね」と微笑む。
うんうん!とマリーさんは涙を流しながら笑っていた。
「アタシ、もうダメかと思っていたけど
ホントに良かった」とマリーさんから抱きしめられている。
「アタシ、アタシ…!花嫁候補生の2人には中立でいなくちゃいけないけど!でもお嬢サマには個人的に逢いにきて欲しい!ダメ?」
「駄目なんてないです、だから涙を拭いてくださいな」と
私が微笑むとマリーさんは私から離れてにっこり笑う。
「また逢いにきますマリーさんとその子にも」
「うん」と笑うマリーさんは最高の美人。
「今日はお疲れでしょう、ゆっくり寝てまた明日から活躍してくださいな
じゃないと私は心配しますわ、それにマリーさんが元気なほうが安心します」
そう言う私の言葉に同意したヤグーワイズさん。
「そうだよ、櫻井様もこう言っている
だからマリー、今日はもう休もう」と言う。
それからそっとマリーさんから卵をとる。
「そうね」とヤグーワイズさんに同意したマリーさんは立ち上がる。
「では失礼しますね」と私が言うと
「またねお嬢サマ!」とマリーさんが手を振る。
月藜龍様もまた「ではな」と念話が切れた。
深呼吸して、私は観念して口を開く。
そうよ、仕事でしていたじゃない大丈夫よ。
「えっ…と、竜騎士の皆様には私が来た事で巻き込まれてケガまでさせてしまった事はお詫びしようもありません
申し訳ありません。
お怪我の状態はどうですか?大丈夫でしょうか?」
眉毛を下げて、ケガの様子を聞けば
しぃぃんと静まっている。
その内に竜騎士のひとりが、「いや、それは俺…いや私達の認識の甘さだと自覚しましたのでサクライ様から謝っていただくことはないです」と、言ったことで他の竜騎士達が一斉に頷く。
あれ?この人、後ろに居た竜騎士の人?
「でも貴方は宝珠の意味を知っている様子でしたわ」と私が言うと何故それを?と驚愕の瞳で見られた。
アルベルト団長は「ほぉ…」と顎髭を触っている。
「あ、深い意味はありませんわ、たまたま目に入っていただけです」とにっこり笑う。
「それでケガは大丈夫ですか?」と私が聞けば
「大丈夫です」と腕や足を押さえている数人が答えた。
「まぁ!良かったです
でも大事になさってくださいね」と微笑むと数十人の竜騎士達が頬を赤く染めていた。
ゴホンと殿下のほうから咳払いが聞こえてきた。
「では、私達からは以上だ
解散!」
解散と言う殿下の言葉に、それぞれ動く。
ケガをしている竜騎士達は救護室に向かい
その他の残っている竜騎士達は椅子の片付けをして
殿下に殿下の側近と護衛騎士
それからアルベルト団長にヤグーワイズさんとマリーさん
私にアネッタとアレックスは
病気になっている竜の元に行く。
「ヤグーワイズ、こちらか?」
「はい」
会議室から出てから、竜達がいる場所とは別に
体育館の広さがあるほどの囲いに、一頭の竜が横たわっていた。
死臭がする、と言う事はこう言う事だろう。
思ったよりずっとぐったりしていて、痩せている筋肉に
羽根もほとんど動いてはいない、尻尾もピクリとも動いてはいなかった。
目の辺りに目ヤニが溜まっていて、竜の鱗が剥がれているところの肌が痛々しく目に入る。
「酷いな」と誰かの声で、私は思わずネックレスから
宝珠の形に戻す。
そしていち早く駆け出し、私は竜の近くにそっと座る。
私は自分が汚れるのは構わなかった。
そんな事気にする余裕はなかった。
私が来た事が分かったのか、鼻先がクンッと匂いを嗅ぐように動いた。
私の後を追ってアレックス達も駆け寄ってきていた。
「奏嬢!」「奏様!」殿下の焦った声とアネッタの焦った声が重なる。
「大丈夫よ、ちょっとだけ触るね」と声をかける事で、竜からの何も返事はなかったが拒否反応はなかった。
私は宝珠を近くに持っていき、心から祈る。
どうか。どうか、この子を治してください
毒を取り除いて、鱗もまた綺麗に生え揃えて竜として
また力強く生きれるように
そう願いを込めて祈ると、宝珠から暖かい光が溢れ出し
私と竜を包み込む。
「ありがとう」直接そう聞こえたわけじゃないけど、
そう言っているように聞こえた。
「いいえ、どういたしまして
早く良く治ってね」と私が言うと
「私からも礼を言う」と念話が聞こえる。
「月藜龍様?」
「ああ、この者の事は我も気にかけていてな、
宝珠を持っていても力を使えない我ではどうしようもなかった」
「だから我からもお礼を言うよ、カナデありがとう」
月藜龍様の顔は見えないが、ほっとした声色が伝わってくる。
「いいえ、私がした事ではありませんわ
宝珠の力です」
「それでも宝珠の力を使えるのはカナデ自身だ、本当にありがとう助かったよ」
「そう…ですか、良かったですわ
それでどのくらいで良く治りますか?」
こそばゆい想いをしながら、聞いている。
「そうだな、この者の体力次第だが、また栄養をとって次第にゆっくり回復していけば問題なかろう」
「そうですか!本当に良かったですわ」
と私が言うとヤグーワイズさんとマリーさんが泣いていた。
「月藜龍様ありがとうございます!
櫻井様ありがとうございます!」
「お嬢サマありがとう!」
2人からもお礼を言われた事に驚いたけれど、私は2人に
「良かったですね」と微笑む。
うんうん!とマリーさんは涙を流しながら笑っていた。
「アタシ、もうダメかと思っていたけど
ホントに良かった」とマリーさんから抱きしめられている。
「アタシ、アタシ…!花嫁候補生の2人には中立でいなくちゃいけないけど!でもお嬢サマには個人的に逢いにきて欲しい!ダメ?」
「駄目なんてないです、だから涙を拭いてくださいな」と
私が微笑むとマリーさんは私から離れてにっこり笑う。
「また逢いにきますマリーさんとその子にも」
「うん」と笑うマリーさんは最高の美人。
「今日はお疲れでしょう、ゆっくり寝てまた明日から活躍してくださいな
じゃないと私は心配しますわ、それにマリーさんが元気なほうが安心します」
そう言う私の言葉に同意したヤグーワイズさん。
「そうだよ、櫻井様もこう言っている
だからマリー、今日はもう休もう」と言う。
それからそっとマリーさんから卵をとる。
「そうね」とヤグーワイズさんに同意したマリーさんは立ち上がる。
「では失礼しますね」と私が言うと
「またねお嬢サマ!」とマリーさんが手を振る。
月藜龍様もまた「ではな」と念話が切れた。
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