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逆襲
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ヤグーワイズさんの話はこうだった。
「あれは、1週間前の事です
マリーからある特定の竜だけの様子がおかしいと聞いて、私も一緒に様子を見に行きました
マリーも獣医として診察を行っていたのですが、瞳孔の開き、心拍数、口腔内の唾液や糞の臭いや形、鱗の渇き具合まで慎重に何度も確認しました。
その時は、見た限りではまだ正常と変わらない感じだったのです」
ヤグーワイズさんが当時の事を思い出しながら喋っている。
マリーさんは卵を落とさないように抱きしめていた。
「獣医としては何かがおかしいとしか感じなかった
絶対何かある、そう思ったから」
悔しそうに言うマリーさん。
「だが、マリーの予感や獣医としての経験、知識は非常に役立ってくれて2、3日後には竜騎士がした行動、行った場所などを聞いて特定の毒ではないかと突き止めました」
「では、解毒があるのでは?」
「我々もそう思って、薬剤師のとこに尋ねてみたわけですが…」
殿下の言葉にヤグーワイズさんは、一度肯定の意味を示すように頷くが、その後に続く言葉で首を横に振る。
「その解毒となる草花の蜜と、樹木の蜜今は何処にも生息していない時期の為、在庫切れの事でした。」
ぎゅっと卵を抱きしめるマリーさんの手にヤグーワイズさんは、上からそっと握っていた。
「アタシは獣医としてできるだけ、側に付いているように
1週間数時間置きに、診察して症状を和らげることしかできてない…」
マリーさんの表情から窺い知れるのは、沢山の葛藤と悔しさが滲み出ていた。
「それでその竜の容体は…」と殿下が聞くと
「目の瞳孔が弱々しくなり、唾液も少なく、ここ3日ほど食事も受け付けておりません。
今では、筋肉の低下に加え免疫力の抵抗力もあまり良い状態ではありません
それから竜の要である鱗の渇きもパサパサで、剥がれ落ちているのもあり身体の部分もひび割れている部分から
水分が抜けていると思われます。
このままでは、脱水の他、乾燥や栄養失調、毒の排出が追いつかず蓄積していくばかりです」
マリーさんが悔しそうに歯を食い縛っている。
「もってどのくらいだ?」
「正直なところ、後数時間くらいでしょう…」
ヤグーワイズさんも悲痛な面持ちで答えた。
「では、早く行きましょう」
私がそう言えば、マリーさんが
「いいの?お嬢サマ」と目を潤ませている。
「ええ、私は構いませんけれど、その竜には竜騎士さんがいらっしゃるのでしょう?
その方には?」
私はもちろん、と言うように同意した。
その言葉に嬉しそうにするマリーさんだったけれど、
一瞬目を伏せた後
「あそこにいるよ…」とマリーさんが視線を寄越したのは、あの暴走した竜騎士だった。
「まあ、彼が…」
「では、彼に確認を…」と言った時の事だった。
その刹那
竜騎士が私目掛けて、刃を向ける。
「それを寄越せぇぇええええ!!!!!!」
色んな人を押し除けながら、目が血走り、唾を飛ばす。
竜騎士が持つ事の許される両手槍ではなかったのが幸いしたのか、それでも周りの竜騎士数十名が巻き込まれて薙ぎ倒された椅子などが散らばっていた。
両手槍ではなかったものの
短剣を持ちこちらに向かってくる竜騎士の彼に、アレックスは応戦する。
アネッタは、口元に手を置いて震える声を必死になって抑えている。
マリーさんを庇うように、ヤグーワイズさんが駆けつけていた。
私目掛けて来た事で、アレックスは鞘から剣を抜いて
竜騎士の彼の喉仏にピタリと当てる。
後ろからアルベルト団長が、竜騎士の彼を捕らえていて
ガッチリ抑え込まれた彼は身動きが出来ないでいる。
ただ目だけは、こちらを激しく睨んでいてふぅー、ふぅーと毛を逆立てている猫のように息巻いてはいたようだけど。
「やるじゃぁないのお前さん」とアレックスにアルベルト団長が揶揄うように言う。
「それはどうも」とアレックスもアルベルト団長に短く答えていた。
それでもお互い、目線は目の前の竜騎士から外そうとはせずにいる。
殿下の周りには殿下の護衛騎士が、殿下を護るようにガードしていたが殿下が下がれと合図をする。
殿下の護衛騎士は、少しだけ距離を空ける。
そして殿下は、殿下の側近と護衛騎士に指示を飛ばす。
「即刻あの者を捕らえ、牢に入れておけ」
「ハッ!」と護衛騎士のひとりはアルベルト団長の元へ行く。
アルベルト団長は、「ちぃっ~とばかしやり過ぎちゃったねぇ」と、トンっと首の根を叩いてその後倒れるだろう彼の身体を支える。
気絶した彼を護衛騎士が、支えて連れて行く。
(※良い子は真似しないでね、実際には危険な行為ですが
作中では手刀は可能であると言う設定です)
「あれは、1週間前の事です
マリーからある特定の竜だけの様子がおかしいと聞いて、私も一緒に様子を見に行きました
マリーも獣医として診察を行っていたのですが、瞳孔の開き、心拍数、口腔内の唾液や糞の臭いや形、鱗の渇き具合まで慎重に何度も確認しました。
その時は、見た限りではまだ正常と変わらない感じだったのです」
ヤグーワイズさんが当時の事を思い出しながら喋っている。
マリーさんは卵を落とさないように抱きしめていた。
「獣医としては何かがおかしいとしか感じなかった
絶対何かある、そう思ったから」
悔しそうに言うマリーさん。
「だが、マリーの予感や獣医としての経験、知識は非常に役立ってくれて2、3日後には竜騎士がした行動、行った場所などを聞いて特定の毒ではないかと突き止めました」
「では、解毒があるのでは?」
「我々もそう思って、薬剤師のとこに尋ねてみたわけですが…」
殿下の言葉にヤグーワイズさんは、一度肯定の意味を示すように頷くが、その後に続く言葉で首を横に振る。
「その解毒となる草花の蜜と、樹木の蜜今は何処にも生息していない時期の為、在庫切れの事でした。」
ぎゅっと卵を抱きしめるマリーさんの手にヤグーワイズさんは、上からそっと握っていた。
「アタシは獣医としてできるだけ、側に付いているように
1週間数時間置きに、診察して症状を和らげることしかできてない…」
マリーさんの表情から窺い知れるのは、沢山の葛藤と悔しさが滲み出ていた。
「それでその竜の容体は…」と殿下が聞くと
「目の瞳孔が弱々しくなり、唾液も少なく、ここ3日ほど食事も受け付けておりません。
今では、筋肉の低下に加え免疫力の抵抗力もあまり良い状態ではありません
それから竜の要である鱗の渇きもパサパサで、剥がれ落ちているのもあり身体の部分もひび割れている部分から
水分が抜けていると思われます。
このままでは、脱水の他、乾燥や栄養失調、毒の排出が追いつかず蓄積していくばかりです」
マリーさんが悔しそうに歯を食い縛っている。
「もってどのくらいだ?」
「正直なところ、後数時間くらいでしょう…」
ヤグーワイズさんも悲痛な面持ちで答えた。
「では、早く行きましょう」
私がそう言えば、マリーさんが
「いいの?お嬢サマ」と目を潤ませている。
「ええ、私は構いませんけれど、その竜には竜騎士さんがいらっしゃるのでしょう?
その方には?」
私はもちろん、と言うように同意した。
その言葉に嬉しそうにするマリーさんだったけれど、
一瞬目を伏せた後
「あそこにいるよ…」とマリーさんが視線を寄越したのは、あの暴走した竜騎士だった。
「まあ、彼が…」
「では、彼に確認を…」と言った時の事だった。
その刹那
竜騎士が私目掛けて、刃を向ける。
「それを寄越せぇぇええええ!!!!!!」
色んな人を押し除けながら、目が血走り、唾を飛ばす。
竜騎士が持つ事の許される両手槍ではなかったのが幸いしたのか、それでも周りの竜騎士数十名が巻き込まれて薙ぎ倒された椅子などが散らばっていた。
両手槍ではなかったものの
短剣を持ちこちらに向かってくる竜騎士の彼に、アレックスは応戦する。
アネッタは、口元に手を置いて震える声を必死になって抑えている。
マリーさんを庇うように、ヤグーワイズさんが駆けつけていた。
私目掛けて来た事で、アレックスは鞘から剣を抜いて
竜騎士の彼の喉仏にピタリと当てる。
後ろからアルベルト団長が、竜騎士の彼を捕らえていて
ガッチリ抑え込まれた彼は身動きが出来ないでいる。
ただ目だけは、こちらを激しく睨んでいてふぅー、ふぅーと毛を逆立てている猫のように息巻いてはいたようだけど。
「やるじゃぁないのお前さん」とアレックスにアルベルト団長が揶揄うように言う。
「それはどうも」とアレックスもアルベルト団長に短く答えていた。
それでもお互い、目線は目の前の竜騎士から外そうとはせずにいる。
殿下の周りには殿下の護衛騎士が、殿下を護るようにガードしていたが殿下が下がれと合図をする。
殿下の護衛騎士は、少しだけ距離を空ける。
そして殿下は、殿下の側近と護衛騎士に指示を飛ばす。
「即刻あの者を捕らえ、牢に入れておけ」
「ハッ!」と護衛騎士のひとりはアルベルト団長の元へ行く。
アルベルト団長は、「ちぃっ~とばかしやり過ぎちゃったねぇ」と、トンっと首の根を叩いてその後倒れるだろう彼の身体を支える。
気絶した彼を護衛騎士が、支えて連れて行く。
(※良い子は真似しないでね、実際には危険な行為ですが
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