月の都の花嫁

城咲美月

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一瞬生暖かい空気に包まれていたけども、
アルベルト団長の笑い声で、和やかなムードに変わる。

「あっはっはっは!何とまぁ豪胆なお嬢さんだな!」と
アルベルト団長がクックッと笑った事で、ピリピリした空気は一旦和らいだ。
しかし、アレックスだけは警戒心を解いていない。

「殿下はどう思う?」またアルベルト団長の言葉で、緊張感が高まりそうだったが軽い調子での問いかけに

「ああ、月藜龍様が奏嬢を気に入った理由など私よりアルベルト団長のほうが詳しいだろう」とアルベルト団長に視線を寄越す。

「まあな、人間の善し悪しや常識で測れないってのは、俺だけじゃなくて此処にいる竜騎士全員が知っているかと思ったんだよなぁ、違ったかな?」と
アルベルト団長の抑揚のある声と戯けた態度とは裏腹の鋭い視線から
逃れるように数人が視線を避けた。

「竜と竜騎士の間に、パートナーして1番重視して選ばれるのは
フィーリングが尤も合うことだな?」

「それもあるが、竜にも色々性格も違うからなぁ」と顎髭を触るアルベルト団長。

「何にせよ、奏嬢が月藜龍様に好かれている事は間違いないし、その時の約束もしている
それがどういう意味か分かったはずだ、
それからもう一点
龍の宝珠を貸付されただけでもまず名誉な事だ
我が父、皇帝陛下でさえ宝珠を貸付された事もいただけた事もない
それがどういう意味か、つまり龍の宝珠はどういう代物であるか
分からないならば勉強し出直せ!またそのような者は
竜騎士から外されても文句は言えないと思え!
特にあの者の処分に関する事もある事だしな」

その事実に一際騒ぎが大きくなる。

殿下の鋭い眼差しと言葉が竜騎士全員に届いたようだった。
ほとんどの人が顔面蒼白になっていた。
先程の激怒していた竜騎士を除いて、だけど。

「そしてそんな奏嬢は私の花嫁候補だという事を、もう一度認識する事だ
奏嬢に何かあれば私が許さないと心得ておけ」殿下の眼光の鋭さが増した。

「ハッ!」と、竜騎士達の声が揃って返事をする。


殿下と、アルベルト団長には感謝を
悔しいけれどアルベルト団長の言葉で、ほとんどの竜騎士達が意識を変えられた
それと殿下のおかげで、私は卵さえ貰えない役立たずの花嫁候補生とはならなかった。

それに、庇って貰えるなんて嬉しい事なんだって
初めて知った。
今まで仕事してても矢面に立つことが多くなって、庇う事のほうが増えていたから…。
それにしても、竜騎士達さえまさか龍の宝珠の意味を知らないなんてちょっとだけ肩透かしを喰らっていた。
殿下とアルベルト団長、それからヤグーワイズさんと
マリーさんも表情から知っているみたいだった。

あの竜騎士が「宝珠を貸付しただけ」の言葉の時
驚愕していたのは、このメンバーと
後は、多分後ろの席にいた竜騎士の彼だけ。

ようやくアレックスの警戒心も少しは解いているが、完全には解いていない。
その証拠にまだ武器の柄に手を置いたままだ。

「それで奏嬢、その宝珠は月藜龍様と繋ぐ物だったな?」
「はい」
「では、こちらからコンタクトも取れるのか?」
「そのようです」
顎に手をやって、何かを考えている殿下だったが
「分かった…ひとまずその話はまた追々聞く事にする
その時は奏嬢、いいだろうか?」
「ええ、構いません日にちや時間帯など仰っていただけたら対応はできる限りお応えします」
「それで良い」
ゆっくりと頷く殿下。

すると、その時ヤグーワイズさんとマリーさんが
揃って頭を下げてきた。

「殿下、我々からも直答の許しをお願いします」
「構わない」
「ありがとう存じます、一説によるとその宝珠は癒しを与えるとの伝承が残っています」
「ああ、そのようだな」
「はい」
殿下は、ヤグーワイズさんとマリーさんから私に視線を移し
ヤグーワイズさんとマリーさんも私を見る。
3人の瞳が私を見ていた。

「奏嬢どうなのだ?月藜龍様は何か仰っていたか?」と
殿下が聞いてきた。
「はい、そのように聞いています」
私が頷くと
「では…!」と微かな希望を見出したヤグーワイズさんとマリーさん。
「待て!私は奏嬢に無体を働くなと言ったはずだが?」
殿下の鋭い眼差しが2人に突き刺さる。

「まぁまぁ、一応話だけは聞いてやったらどうだい?」

と、アルベルト団長が顎髭を触りながら、そのように言う。

「そうだな」と殿下も同意した事で、ヤグーワイズさんが話始める。









 
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