月の都の花嫁

城咲美月

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震える手で、だけどしっかりと私から受け取ったヤグーワイズさんは感動の面持ちをしていた。
それから乙女のような表情に変わりくるくると周り小躍りしそうなヤグーワイズさんの事は無視しよう。

「カナデ、それから其方にはこちらだ」
ふよふよぽすんと、手に落ちてきた物、龍の宝珠と龍の白銀の羽根が手に落ちた。
「これは、我と其方を繋ぐ物だ」


龍の宝珠、如意宝珠が由来で
一説には龍王の脳から取れる玉
病を治したり、願いを叶えたりまさしくドラゴン…
んんっ……素敵な万能の珠。

「ここからは、其方にだけ教える
邪な者には聞かせられぬ話だからな」とそう言われた後

すぐに薄い膜が張られる
「この珠に月の光を全て集めよ、そうすれば其方の願いが叶うだろう
其方の心からの願い、だけだ
よく考えて使え、易々と何度も使えはせぬし
何ゆっくりと考えた結果ならばそうそう悪い事にはなるまいよ」と月藜龍が微笑んだ気がする。

「そしてその珠と羽根はもう一つの使い道として、我の目と耳にもなる。
其方の意のままの形に変え
病を治し、浄化もできる
遠くの物、千里の距離に居ても我と繋ぎ様子を視ることが出来る事と邪な者の言葉や悪意のある者は彈く事も出来るぞ」

どうだ?すごいだろう?と心なしかワクワクしている月藜龍。

クスッと思わず微笑む。
「本当にすごいです、月藜龍様ありがとう存じます、よくよく考え大切に使いたいと思います」
「うむ」

「それからカナデ、其方は月の姫と言う血筋があるが
人の子にはまだ知られるわけにはいかないのだろう?
人の俗世には疎い我でも、良く竜達も、ケンカしているからな知っている
それくらいは我にも力になろうぞ?」
「まぁ!ありがとう存じます
けれども、それでは意味が無いのです」

「何故だ?」
「残念ながら、月藜龍様もご存知の通りあるがままの言葉だけで捉える人間だけではない、と言う事です。
このまま月藜龍様のお力添えまでいただく事になったら、過剰な形として伝わります
このように宝珠だけでも、人間にとって凄い事なのです」
ふふっと私が微笑めば、

「だが、その宝珠で我には伝わるぞ?
それはどうするのだ?」
「そうですね、伝え方によってはそのまま伝えても良いと思います。」

「そうなのだな………に、しても
人と言うのは分からぬ。我が望んで好む人間だけにしていると言うのにな」
月藜龍の少しいじけた声から表情が窺える。

「だから、今この場だけはこの宝珠も預けているだけにしていて欲しいのです」
「む。それは我がカナデにあげた物だぞ!それだけは譲れぬ!」と口をへの字に曲げる様子が伝わってくる

「存じております。だからこそ今この場だけ貸付として欲しいのです」
「もう少し分かりやすく言ってくれ」
「月藜龍様が、私に贈り物とした場合と貸した物とでは、印象が違うと言う事です。
月藜龍様の贈り物なのか、貸付した物であるかで
人の物の見方が変わります
今は花嫁候補生のひとりに過ぎない私が
月藜龍様の贈り物を貰う形と貸付とした形にした場合
それぞれの意味が異なります。
贈り物であれば、私を認めた形、贔屓目となり
貸付とした場合、まだ試練の見極めの最中だと言う形を取れるからです」
「ふ…むぅ。仕方ない、のか」
「ですから今だけです、私が自分でのし上がってきた結果としてまたその時に月藜龍様からの贈り物としてお願いできますか?」
「うむ、その時は派手に祝おうぞ」と言う言葉が胸を張って言っている気がする。
「私の我儘を聞き入れてくれてありがとう存じます」
そう微笑む。
「うむ。」と概ね満足している形として終わる。

「ではまたここから皆に聞かせる話だ、良いな?」の言葉に私は頷いたら、薄い膜が剥がれ落ちた。


少し芝居かかった声で
「カナデ、我と繋ぐ物を其方に預けておく
大切に持っておけ。
それから其方の好きな形に変えて見せよ、そのくらいの力ならばある」

「はい」そう頷いて私はネックレスに変えると
シュンっと自動的に私の首元にネックレスとしてかかる。

シャランと小さく音が鳴った。

周りから「おお!!」と騒めきが起こる。

いつの間にかヤグーワイズさんの小躍りも終わっていたようだ。

「それからカインゼノにヤグーワイズ」
「はい」
「其方達にも言っておく事がある
まず、カインゼノお主にはこの事を周知していてもらおう。
カナデに貸し付けた我の宝珠は、一時の物ではあるがカナデの身に何があれば即座に我に伝わる
その事を夢夢忘れるでない」
「はい、月藜龍様のお言葉しかと受け取りました」

「それからヤグーワイズ」
「はい」
「我らはカナデを姫として扱う、だから竜達の機嫌が良くなってしばらくは騒がしくなるが…」
「とんでもないです!そのように我々を気遣う月藜龍様に感謝を申し上げます」

「うむ」

「それから最後にカナデ
我にいつでも頼れ、我らはカナデを歓迎するぞ!」
その言葉に竜達のバシンバシンと肯定するかのように尻尾を振って地面に打ち付けている。
「はい、ありがとう存じます」私はお礼を言った。


こうして、月藜龍様との念話は終わりを迎えようとしている。
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