月の都の花嫁

城咲美月

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アルベルト龍騎士団長

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さて、もうそろそろ寝ようかしら


私はあくびをして伸びをする。
手足がピンっと伸びて、力がゆるゆると抜けていく。
そのままソファーに身体を沈めそうになる。
それもそのはず確認があんまり出来ないまま、この時間までかかってしまっていたんだもの。

生徒手帳を持ち歩く方法は、今のところポケットに入れておくしかない。
改めて見ると、今は生徒手帳廃止されている学校のほうが多いのに
まさかインベントリになっているなんてちょっとビックリよね。
学生証としても使う写真は、裏面に記載じゃなくて、見開きの中で良かった。
この生徒手帳は、スマホで置き換えて考えると
手帳型のカバーを使っていると考えれば、納得もいく。
だけど手帳型にしたのは、中身が見えないようにする為?

仕事で何かとメモ書きしているからクセでボールペンをつい探してしまう。
すると、「私の部屋」の中に日記帳も置いてあった。
ご丁寧に「これは私どもからのちょっとしたプレゼントです、社蓄でアナログ派の櫻井様にはピッタリだと思いますよ」のメモが貼ってあった。

一言余計よ!とは言えずにいた。
あー直接文句言ってやりたいわ!と思わず毒吐く。

この日記帳も普通に日記として書いていけるけど、ゲーム内でのセーブとしても使える。
「前回までの『月の都の花嫁』は…」で始まるのがそれ。
単なる時間と場所の上書きだったりするけど、乙女ゲームではちょっとした振り返りができる。
現実世界から時間を置いて、久しぶりのログインをすると「アレー?どこまでやったっけ?」と言う時の
親切設定の事だ。もちろんスキップもできる。


この生徒手帳は、スマホの代わりだから
インベントリの使い方としては、学生の写真の部分が
ミニアバターと名前の部分
簡単に魅力値などが分かるようになっている。
他にも知識など伸ばせるタスクバーがある
キャラクターのプロフィール情報、記録の部分がこれに当たる。
また、「お知らせ」機能もここでタップできる。
また、タッチペンでメモ書きもできる。

そして持ち物、所持品の確認、在庫の整理、装備が主な画面

ゲーム内におけるアイテムは、収集したり拾ったり
ストックの確認をしたりできる。
今のところ、収集したり拾ったり、特別な品を貰ったりしてないから出し入れはできるのか不明。
そこは追々確認。

まぁ、RPGじゃないものね、そこら辺のアイテムをほいほい拾うわけにもいかないしアイテムが光って取り忘れるなんて言う事もないし…
ソファーにゆるゆると沈めていた身体にもう一度力を入れてガバっと起き上がり

ん?ちょっと待って?
私は試しに、テーブルの上にあったボールペンを生徒手帳に近づけてみる

すると、スイッと吸い込まれる感覚があった。

生徒手帳のアイテム欄を見てみると、確かにボールペンが入ってあった。
今度はそのボールペンをタップしてみる。

私の手のひらにボールペンが戻ってくる感覚があった。

その時カシャッと音が鳴った。

カシャッ…?

私の手のひらとボールペンが戻ってきた瞬間の写真がポンッとアルバムの欄に載っていた。

ムービーやカメラ、音声の録音録画と言ったデータの保存が出来る事もようやく確認できた。

ストレージバーの横に♾️のマークが出ている。

…………無限って、ちょっとすごいんだけど。
大抵、写真やムービーは容量が足りなくなると
消すかUSBに保存して後から整理するけどなかなか時間がなくて出来なかったりする。

そんな時、コツンコツンと何か当たる音が鳴った。

何…………?
と言うかこの音、窓から…?
やめてよ、ホラー展開なの…?
ホラー展開なんてあった……?

私は音を頼りにそろそろと歩くとどうやら窓のほうから聞こえるようだった。

ドキドキと高鳴る胸を抑える。

この「私の部屋」にもパティオドアがついてある。


ソッとカーテンを開けると、何もなかったから窓を開けてみたら

アルベルト団長と竜がそこに居た。

「きゃあっっ……」

咄嗟に手を唇に当てて口元を隠す。

自分の中の乙女の部分にも驚きの悲鳴をあげたけど、
アルベルトさんが居た事のほうが確実にホラーだった。

「アルベルトの真夜中の訪問」は、もう1人の竜騎士とのフラグに必要なイベントが何故…?

と言うより、えっ……?何故、今………??

私の小さな悲鳴に「奏様………!」とアレックスが剣を剥き出しにして私の前に立って護る姿勢を取る。
「ご無事で…す………か………」

アレックスの表情は見えないが、きっと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている事だろう。
その証拠に、言葉尻が萎んでいる。

アルベルト団長の
「やれやれ見つかったか」の表情と「ちょっと計算外だったな」と言う仕草をしている。
イタズラが見つかったような顔をしているアルベルトさんと、複雑そうな困惑している態度のアレックスが
そこには居た。








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