月の都の花嫁

城咲美月

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全員が席に着いたら、皇帝陛下から順番に料理が置いていく。

本日のお品書き
メインの煮込みハンバーグに季節のサラダ
白パンとロールパンにコンソメスープ
季節のフルーツ
スパーリングワインと言った見慣れたディナーのメニューだった

思わずほっとしたのはやはり日本人だから。

皇帝陛下が口を付けたのを確認すると
それぞれ皆が口にする。

煮込みハンバーグのほろりと柔らかいお肉に
スープもコンソメの味が効いていて
ふわふわの白パンもロールパンも美味しいし
季節のサラダもシャキシャキしてて
全体的に美味しい

スパーリングワインのラズベリーの香り
久しぶりのお酒は最高ですなー♡

見慣れた洋食ではあるけれど
自分がグルメとは言わないけれど、やはり平安時代からの出汁から始まった食文化は美味しいし
それを研究して食べられるようにした昔の人に感謝。
それでも、縄文時代の縄文土器で「煮る」「茹でる」が可能になったからこそだよね。

自虐ネタにされるほどの、「野菜を煮込み過ぎて形が無くなる」「麺も必要以上に煮すぎる」「味付けは塩か酢のみ」で無かった事にほっと胸を撫で下ろす。


ゲーム内での設定も東洋人の旅人が、食文化を広めた伝説の職人になっている。

そこで殿下が口を開く。
「食事中にすまない、花嫁候補生の2人に少し話をしたくて良いだろうか?」

半分くらいは食べ進めていた手を休める。
ナプキンで口を拭い、膝の上に置き
フォークとナイフの柄を向けて
食事中を示すハの字にしてからクロスさせる。

「構いませんわ、殿下」のリーデルさんの言葉に頷く殿下

「では、2人はこの度の試練をどう思うか聞かせて欲しい」
リーデルさんが朝陽さんのほうを向いて微笑んでいる。

「私は、自分で出来る範囲で精一杯の頑張りと誠意でやり遂げる所存です」と堂々たる言葉で発言した。

リーデルさんが私を見てにこりと微笑む

「私は、もちろん自分なりに精一杯頑張るつもりでいますが
楽しもうと思っています。
それに、私の最高の想い出にすると決めています」

そう微笑んで言えば、面白そうな顔をした皇帝陛下やアルベルト団長
皇后陛下も好意的な笑みだろう、多分。
目をぱちくりさせているが、すぐにフッと微笑む様を見せた殿下は
「そうか」と柔らかく笑っていた。

リーデルさんの笑みも柔らかい感じでほっとする。

花嫁候補生としての満点の答えより、ゲーム内での選択肢の答えより
自分の気持ちを言っておきたかった。

素直な気持ちを…

「話を聞かせてくれてありがとう
では、食事を続けてくれ」と殿下。

「ありがとう存じます」と思わず返事を私がしてしまった事に対してお咎めはなく
「ああ…」と目をぱちくりした様子の殿下に

その様子を見ていた皇后陛下が生暖かい目でクスクスッと笑っていた。

うっ…食いしん坊に思われたに違いない
ちょっぴり恥ずかしい……

この時のアルベルト団長の様子に気づいていれば、と
少しだけ悔やまれる。

後の騒動に巻き込まれずに済んだかもしれない。







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