月の都の花嫁

城咲美月

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リーデルさんが静かに怒っている理由

それもそのはず、皇帝陛下が開催するとなれば事前の準備や情報の根回しは必須だからだ。
会場を抑え、日時や時間、招待客に天候
振る舞う季節の料理やお酒や飲み物、それから飾りつけなど裏方が大変になる事は目に見えている。

歓迎会の夕食も本来なら、ひっそりと女子寮の皆で行われるはずだった。

皇帝陛下の性格なんだろうか、お祭り好きと言うか
派手にしたがる。

それよりも、こちらで用意した歓迎会用のお料理の数々が無駄にならなくて良かったと
リーデルさんと三姉妹の会話が聞こえてくる。

「本当に今日のお料理が無駄にならなくて良かったです」
とマーガレットさんが言うと
「こら、マーガレット不敬よ」と嗜めるサーシャさん
「綺麗…」とドレスを眺めているミーナさん
「ええ、本当に無駄にならず良かったですわ
こちらのドレスにしましょうね♪」とニコニコ笑顔のリーデルさん

どうやら、ドレスも決まったみたいだ。


着々と私の用意も進んでいる。
リーデルさんのご機嫌も直ったかのように三姉妹とドレスの次にアクセサリーとヒールを選んでいる。
三姉妹もメイクセットなど用意して、アネッタは
お風呂の用意をしていた。

私?私は言われるがままお風呂場に来ていた。
アネッタに「ひとりで洗えるから大丈夫よ」と断固として拒否をしていた。

私がお風呂から上がると、「待ってました♪」言わんばかりに三姉妹が腕まくりをして

慣れた様子で私を磨き上げる。
女性の何処にそんな力があったのか、と言うくらいのスピードで担ぎ上げ
整体を受けた時のようなベッドの上に寝かされ
アロマオイルを炊くと、上品な香りが辺りに漂う。

サーシャさんがフットマッサージをして
マーガレットさんが全身の身体をもみほぐし
ミーナさんが手足のマッサージを行う。

お風呂で汗を流したのに、マッサージを受けるとまた汗が出てきて身体も火照ってくる。
リンパ腺が少し痛かったけれども、老廃物が流れると思えば耐えられる。
末端冷え性の私の手足に血が巡ってくるのが分かる。

こんなにリラックスして極楽気分を味わえたのは
いつぶりだろう。

あれよあれよと言う間に、私はいつの間にかドレッサーの前に腰掛けていて
メイクをされていた。

それから、サラサラになった髪をハーフアップのくるりんぱをしてもらっている。

リーデルさんが選んだのは、やはりワインレッドのオフショルダーのドレスのほうだった。
首元には、同じワインレッド色のベロア素材のチョーカー
足元も同じくワインレッドの高すぎないヒール

「わあ!奏様お綺麗です」アネッタの心底褒めている
その言葉に私は自分の姿を見てみる。

「本当に、これ…私?」と自分で使う日が来るとは思わなかった。

毛穴はどこ?と言うくらいに肌が突っ張っていなくてつるつるすべすべ。


それほどに今の私は、別人のように見える。

いつもの毛先だけクセがついていてる内巻きが、
愛おしく思えた。


「ありがとうございます」
そうお礼を言うと、三姉妹は胸を張っている。
三姉妹の微笑む姿が可愛い。

リーデルさんも「素晴らしいですわ」と褒めてくれていた。

ノックの音が鳴ると、リーデルさんがドアを開けて確認する。

そこには、サマンサさんの姿が見えて
「奥様、お迎えの車が到着したようです」


「分かったわ、今行きます」
そう言うとリーデルさんはこちらに向き直り
「では、奏さん行きましょうか」とにこりと微笑む。

一足先に三姉妹達が部屋から出て

私が動くと、侍女のアネッタと護衛騎士のアレックスさんが後ろからついてくる。

リーデルさんと一緒にホールまで降りていくと、皆の視線が一気に私達に注目した。

な、何……?
あ、リーデルさんかと納得する。

先に朝陽さんと朝陽さんの侍女と護衛騎士も降りて待っていて

玄関先で侍女さん達が出揃って、「行ってらっしゃいませ!
奥様!栞様!奏様!」

ザッと音が揃うような動きは流石としか言えない。

「はい、行ってきます」とリーデルさんが微笑むと
私達も微笑む。

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