月の都の花嫁

城咲美月

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ゲーム内における「私の部屋」にて

これまたリーデルさんが「どうぞ」と
入室を促してくれる。

私が部屋に入ると、侍女アネッタさんと護衛騎士のアレックスさんも部屋に入る。


部屋の模様、壁紙が草花と鳥になって少し華やかになっていた。

朝陽さんの部屋はモダンスタイルの黒のモノトーンで大人っぽいのに対し
私の部屋は可愛らしさがある。
白のレースのカーテンにロシアンブルー色の壁紙でありながら草花と小鳥の模様が入っている。
白のチェスターにドレッサー
何処もかしこも白を基調とした家具類。

綺麗だし可愛いのだけど、汚れた場合が怖い。

緊張感が凄そうな部屋だった。

「凄く可愛らしくて、素敵な部屋をありがとうございます」
ニコニコと微笑むリーデルさんに私は部屋の感想を言う。

「まあ!気に入っていただけたようで私も嬉しいですわ」

と、手放しで褒めてくれるリーデルさん。
「では、奏さんも説明は不要ですね?」と聞いてくるが、まぁ不要ではあるので、素直に頷く。

大体のコメントはゲーム内で聞いたものだ。


「それでは奏さんも
しばらくの間ゆるりと休んでくださいませ
ご夕食の時間の前にはまだいっときの時間があります。
奏さんの荷物が届いていますから
荷解きをしていて待っていてくださいませね」

「それでは後ほど、三姉妹を連れて参ります」
そう言い残したリーデルさんは
そそくさと「では、失礼しますね」と私の部屋を後にする。

ちょっとだけ足取りが早かったのは、この後の夕食についての事だろう。
歓迎会と言う名の夕食。

皇帝陛下一行が揃った食事は、当然マナーが求められる。

私ひとりだったのなら良かったのだけど、とちょっとだけ思ってしまう。

私に考えをまとめる時間と、荷物の整理は自分ひとりでしたいのだ。

「では、自分は入り口に立っています奏様
何かご利用なら遠慮なく声をおかけください」

「はい」

私はアレックスさんの言葉に素直に頷く。

奏様呼びはやっぱり直接聞くと慣れないけど、と思いながらダンボールに手を伸ばす。

すると「奏様、私が荷解きをしますのでどうぞお座りになってください」と侍女のアネッタさんが言う。

「1人より2人でしたほうが早いもの」
「かしこまりました」

にっこりと微笑むと、アネッタさんは特に何も言う事はなくダンボールを手に取った。

「それから、私の事は気軽に声かけたりしてくれるほうが助かるの
私が砕けた口調でいても部屋の中だけなら
余り叱らないでいてくれると嬉しいわ」

そうリーデルさんの真似して困ったわポーズで微笑むと、
アネッタさんは一瞬目を瞬いた後

「かしこまりました」と先程よりも柔らかい口調で同意した。

私は荷物をクローゼットの中に入れながら
少し考えの整理をする。


花嫁候補生と言う事で、専属侍女と護衛騎士が選ばれた理由も最もらしい理由として「身の安全のために」だ。

アネッタさんの様子をチラッと見る。

紹介された時から見てたけど、アネッタさんの表情は簡単で分かりやすいものだった。

如何にも、と言った様子の素朴な容姿をしているアネッタさん。
茶色の髪に琥珀色の瞳は、この世界に於いて
何処にでもいる普通の人なのだ。

リーデルさんのような階級に媚び諂う様子が全くなかったのと
護衛騎士のアレックスさんに対しても、少し慣れている様子だったのを見て質問をしてみる。

「ねぇ、アネッタさん
私の専属侍女に選ばれたわけだけど不満はない?」
すると少し手を止めて
「いいえ、不満どころかお仕えする人が奏様で良かったです」
パァッと花びらが咲いたような笑顔をしたアネッタさんを見て、やはりと少し確信を持てた。

素直なのだ。これだけでは判断材料が少ないのだけど
でも、私には素直な人のほうが嬉しい。

きっと、「そんなに感情を出してはダメよ」と叱るところなのだろうけど
それはまだ追々でいい。

それから「アネッタさんにご兄弟はいるの?」
「ハイ!私に兄がいます!」
私の質問に元気に答えたアネッタさん。

「私の兄も護衛騎士なので、アレックス様とは知り合いなのです」
そうこっそりと言ってくるアネッタさん

「あ!奏様私の事は呼び捨てで構いません」
と眉毛を下げて微笑む様は、本当に困っている様子だった。
「分かったわ、アネッタ改めてよろしくね」と
私が笑うと、アネッタも笑顔を返してくれる。

「ハイ!こちらこそよろしくお願いします奏様」




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