月の都の花嫁

城咲美月

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皇帝陛下の謁見

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車で移動する事、数十分くらいの速度だと思う。
道筋は、大通りをスイスイと通り越して
城下町まで何も問題なく来た。

現代と違うのはガソリンじゃなくて、飛行石を使っている事だった。
車の中から見える景色は、信号もなく
町人の皆が腰を屈めている点だ。

車内でリーデルさんが
船長から預かっていた紙の内容を確認をした後
「お2人は、皇帝陛下にする挨拶はご存じですか?」

「はい、女性は右手で自分の胸に当てて左手でスカートの裾または端を掴み傅く事ですよね」と朝陽さん

「その通りです」と、パチパチ拍手するリーデルさん

「お2人は素晴らしいわ」と微笑んでいる。

それからまだリーデルさんの話は続いている

「まずは、皇帝陛下にお会いする前に
客室にてお二人には正装のドレスに着替えていただくつもりの予定になっていました。
けれども、二人ともご存じの通り先の騒ぎがありましたでしょう?
そこで少々変更点があり、このまま謁見の間に行き皇帝陛下とお会いになっている予定です。」

ふぅ、と頬に手を当てて困っている様子のリーデルさん。

「それから、この後の流れですが
皇帝陛下の謁見後、お二人のお住まいとなる
女子寮に移っていただき
荷解きが終わりましたら、お二人の歓迎会の夕食をと承っています」

「ここまでで、何か質問はありますか?」と
リーデルさんの姿勢が左右に揺れて
私を見る。

私達二人とも「いいえ」と首を振ると
ニコリと微笑むリーデルさん。

テーブルマナーなら、一般家庭で育っているけど、社会人になっている今としては
上司と一緒に社長の会食を何度か経験したから大丈夫だろう。

まぁ、外見上や年齢は何故か10代の私にしか見えないけど。
ステータスに関しては、年齢が反映されているわけじゃないから大丈夫なのかも知れないけど

殿下のほうが年下なんだと気づいて、ちょっとだけ罪悪感なのだ。

リーデルさんの話が終わって
景色を見ていると

馬車に使われるように家紋の代わりが、車の
フラッグポールに付いてる旗が、皇帝所有の物だと示している。

城下町からアセリアルージュ城に着く階段の前まで着いたら、「到着しました」と
声がかかりまた乗る時と同じように降りる時も、手を差し出され

リーデルさん、朝陽さん、最後に私。

見よう見真似で、足を揃えて降りたら
微笑んでいる。

そう!私の気分は大女優よ!
じゃなきゃ手足が震えてる。

ぷるぷる子鹿ではみっともないじゃない。

自慢じゃないけど、エスコートなんてされ慣れてない私は一般家庭の子だもの。
社会人になっているけどね!

リーデルさんが
「ショーファーさん、ご苦労様」と
微笑んだら
「とんでもありません、短い間でしたが今日この日を過ごせた事、皆様を送り届けた事誇りに思います」
そう言ってショーファーさんもニッコリと
微笑んでいた。

ショーファーさんが帽子を被り直し、運転席に戻ると同時に私達は階段を登る。

さほど遠くない階段を上まで登り切ると、
扉の前の門番にリーデルさんが紙を手渡す。

門番はそれを確認して、扉を開ける。


街並みが赤煉瓦だったのに対して、目の前に見えるのは白亜宮のような白と青のコントラストのお城だった。

天井にはステンドグラスのゴシック様式が、
外の光が反射して、神秘的な様を見せている。

リーデルさんの後に付いていくと、どこを歩いているのか分からないほど
やはり中は広かった。

ようやく謁見の間に来た私達の姿を見た衛兵が同じように紙を確認すると扉を開けている。


私達が謁見の間に入ると、左右に
文官と思われる人達と、護衛騎士達が居て
目線は自ずと、玉座に座っている
カルセドニー皇帝陛下と皇后陛下、そのすぐ後ろに立っているカインゼノ皇太子殿下がいる。

私達が玉座の目の前まで来て、右手を胸に置き、左手でスカートを摘いたまま傅いたら
「よく来たな、リーデル公爵夫人と
花嫁候補の二人よ
姿勢を楽にせい」





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