月の都の花嫁

城咲美月

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船員が下がったのを確認すると、船長が先に口を開く。

「お久しぶりです、リーデル様
私の船に乗っていると言う事はそちらに居る2人が花嫁候補、と言う事で良いのかな?」

船長がニコッと微笑むとリーデルさんも
ニコッと微笑み返す。

「そうですわ、こちらが花嫁候補のお2人です。
早速ですが、船長の承認が必要な事態になりましたので
入国許可証を頂きに参りましたの」

そうリーデルさんが言えば、船長は

「やれやれ…世間話を咲かせる時間もないってか」とため息をつきながら呟く。

「まぁ、既にこちらは用意してある
持って行くといい」
「まあ!ありがとう存じます」

ニコッと微笑むリーデルさんに、私はホッとする。

両手を合わせて微笑みリーデルさんは
本当に天使。

一般的な乗船とは
チケットを購入し、乗船したと言う確認のそれぞれの船のマークがスタンプされ
降りる時にチケットを見せれば降りることができる。

だけど、自国の要人や外国の要人または今回の花嫁候補
私達が乗る時にチケットとは別に入国許可証を船長から事前もしくは降りる直前に貰えて
一般客と同じように
騒がれずに降りるはずが、この船に花嫁候補が乗っている事を知られる結果になってしまった。

チラリと横目で見る私は思わずため息をついた

その為にも一般的な私服ではあるけれど、
客船に乗るのだ
それなりの格好がある

ううん私を除いて
特にリーデルさんともうひとりの朝陽さんの気品ある様は、どう見ても一般的な格好とは見えない。
2人の顔面の高さを見せつけられた気がするわ。

花嫁候補とは、つまりカインゼノ殿下の婚約者候補で
年々注目度が高く、特に女性の目線から
痛いが一般的な平民層からも否応無しに
注目を集めるのだ。

それほど注目度が高い花嫁候補が移動する際には、警備が必要になるが
仰々しくするのが嫌いな花嫁候補もいる為に
事前の配慮と警備態勢が整えられてはいる。

だから今回のように入り口で騒がれる結果になったのは、短慮な思い付きをした者がいる結果の末に起きた不幸な事故だ。

「リーデル様、こちらの見通しが甘く不手際で申し訳ない」
「いいえ、皇帝陛下の思い付きは今に始まった事ではありませんもの」

困ったことですわね、とお互い苦笑する。

「それでは、船長
時間が短く残念ではありますがこのまま
失礼致します
またの機会に垣間見える事を望んでおりますその時は是非よろしくお願いしますわ」

「ああ
もう乗船者は居ないから、安心して降りていい」

「心遣い痛み入ります」

それでは、と私達は船長室を後にする。




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