月の都の花嫁

城咲美月

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「さて、これによりもうすぐクレセント帝国の領海に入ります」

ラガンさんの言葉を肯定するようにポーと汽笛が鳴る。


ラガンさんは私に向かって微笑みをひとつ。

「それから奏さん、私の事はどうかリーデルと」
「は、はい」

リーデルさん、怖い。
美人は怒らせちゃダメ。ぜったい。


それから、私達はそれぞれ各自の荷物を持って

客室からデッキのほうへ歩いていくと、
ガヤガヤと喧騒が聞こえてくる。

何事?と思っていると


「花嫁候補二人と世話役のリーデル様は居らぬか?」と
バカデカい…あ、いや、遠くまで良く通る声で周囲の騒ぎが大きくなる。

その言葉に「何処にいるんだ?」と周囲の目線が一気に好奇心とお祭り騒ぎのような雰囲気に変わる。


はぁ~……思わずため息が漏れたのは許して欲しい。

私だけじゃなくて、目の前のリーデルさんが
非常に怒ってらっしゃるの。

美人が怒ると怖いんだから。


リーデルさんがそっと隣にいた船員に声をかけ

仕方ないですわね、と小声で呟くリーデル。

船員に小声で
「そこの貴方、私リーデルと申します。
申し訳ありませんけれども、船長室に案内してくださいな
それからそこの従者方達を大人しくさせてくださいませ」

なんと言うか、穏やかな口調で微笑みも天使みたいなリーデルさんから
言葉の端々に棘を感じるのも、背中から薄ら滲み出てる殺気も同じ人なのかと疑いたくなる空気感が伝わってくる。

近くにいた船員達が慌てて従者達に駆け寄り
もうひとりの船員は、私達に主にリーデルさんに

「で、では船長室に案内致します
こちらです、どうぞ…」

声の萎みを聞きながら、案内役の船員の後に付いて行く。


船員に歩いて付いて行く事で
時間はさほど掛からず船長室の前に
私達は居た。

コンコンコン

3回ノックすると「失礼します」そう言って
船長室に入る私達。

コーヒーの香りが漂う船長室


螺旋盤と思われる物があって
テーブルの上に何処かの海域の航海地図を広げて見ていた船長が其処には居た。

「失礼致します船長、あの…こちらの方々が……」

「む?」

船員が声をかけると船長は、顔を上げる。

おお!オールバックから一房髪が前に降りてきている。

疲れた顔がしてはいるが、こちらを向いた時のニコッと微笑んだ顔は

以外にも若い、壮年期の人物のようだった。

「貴女は…
お前は下がれ」

チラリとリーデルから船員に目線を向けて
またリーデルに戻す。

船長の言葉を聞いた船員は静かに
「では失礼致します」とドアを閉めた。




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