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十八話
しおりを挟む「御父様はまた泣いているんですか?」
「そうなのよ、全く往生際が悪いったらもう」
どうも我が主の公爵様は未だに子離れが出来ておらず、昨晩からずっと拗ねて部屋に閉じ篭って居るようで……執事の私がしっかりしないといけません。
さてさて、今日は婚約披露パーティで王族から下はシダル様のご家族(長男次男三男各夫婦)も来ています。
先日三男様のパン屋付家屋で3階建て屋上付きをプレゼントしたばっかりで多少三男様のテンションが少々大変な事になってましたが、奥様に叱られて少し大人しくなった様でした。
でも、お目々はキラキラしてましたので、披露宴が始まったらどうなるか少し心配です。
長男様のお話ではお父上様と妹様と四男様も一応お声掛けしたそうですが、妹様と四男様が家から出た後呼吸困難になってその場で倒れたそうで、来れないと仰っていました、少し残念です。
公爵様の様にシダル様も父親様と仲直り出来る日が来ると良いのですが……。
それから、カリオ村からは英雄の二人とシスター様が駆け付けてくれまして、歓迎しようとした王様を手で遮って今日は愛弟子の披露宴なのだからぶち壊すつもりなら敵に回るぞ? などと威嚇しておりました。
ですがきっと冗談だと思います。
ゼリス様も口角を上げて魔法を放つ準備はしていましたけど、きっと冗談だから笑ってたのかと思います。
そうそう、カリオ様にシダル様は一対の片刃の剣を打って渡したそうです。
何でも大事な物を貰ったお返しだそうで。
弟子が師匠に渡すなんて新しいと笑って受け取っておりましたが、余りにもその剣が立派だったらしく、冷や汗を流して喜んで居ました。
マダムタッソー様が聖剣がどうとか言ってましたけど、何か関係あるんですかね?
程なくして式は順調に始まりました。
王女様も来てくれて、他の同級生の方々も駆け付けてくれました。
本当にこの日は私共も天にも登る気持ちでした。
これで、結婚式になったらどうなってしまうのか……少し怖いけど楽しみでもあります。
結婚はシダル様がご卒業してからになりますので、約三年程時間が空きます。
ですが、住むところは一緒なので大型連休になれば、真っ直ぐ帰って来てくれる筈です。
その時はお嬢様の手料理も食べて頂けるように、これから頑張って指導して行こうと思っています。
◇◇執事End◇◇
オコジョが馬車を引く姿を家紋にして、五階建ての屋根の上に旗を立てた。
勿論毎晩降ろす仕組みになってる。
朝日が登ると自然に旗も登る。
この仕組みは王城にも売ったのでまぁまぁ良い売り物になった。
入学式を2ヶ月後に控えている訳だが、暇だったのでオコジョに乗ってダリルの家へと向かっている。
何でも子供を身籠ったそうで、その祝いに向かってる。勿論サリーも一緒だ。
一緒に住んでるとはいえ結婚前なので同じ部屋には居ない。
そして、公爵様と奥様がサリーと同じ階層に住んでいて、その階層に来ると公爵様が廊下の前に必ず立っていて気さくに挨拶してくれるのだが、何故かいつも珍味を持っているのだ。
別に珍味は好きではないんだけど……
あの酸っぱい奴なんて必ず持ってるんだよ。
何で何だろうな? 本当に謎だよあの人
優しい人だとは思うんだけどなぁ?
まぁ、そのうち慣れるだろう。
今回はマダムタッソーは連れて来ていない。
披露宴の時に酔っ払って絡み過ぎてギルマスが拗ねた、それを今でも引きずってるらしく火に油は注げないらしい。
一応旦那だからさぁっといって女らしい顔をしていた。
ギルマス愛されてるね~。
行けない代わりにリリゴのお酒ってのをゼリスがダリルと合作で作ったらしく、ソレを土産に買ってくる約束をした。
そして、馬車のスプリング試作品だけど完成した。
オコジョの走りにも負けない造りで中々良い感じに揺れずに今のところは走れている。
最後の下りの峠道にどうなるか見物ではある。
一応酔い止めは呑んでおこう。
それから馬車の走りに書かせないソファベルトってのも取り付けた。
御者台には誰も座らなくても走れる様になったので、そちらには付けていないが代わりにオコジョ用の冷蔵庫が付いている。
肉食なのにリリゴは食えるんだとよ。
なので、走りながらでも食えるように改造した。
『シダルソファベルト装着するのじゃ』
『もう直ぐ峠道ニャン』
「もうか?、早いな……前より早くなってないか?」
「そうですね、前回より馬車も跳ねなくなったので気にせず走れているからではないかしら?」
「サリー酔い止めは飲んだかい?」
「はい!」
「よし、オハギ合図出して!」
『ハイにゃ~~っ!』
馬車がドリフト(スリップともいう)しながら峠道を走る。
どちらかというとFFな気がする馬車だが、後ろの方が軽いためだろうか?それとも多少重いからだろうか? まぁよく分からないが、溝落としは流石に無い。
っとここで急ブレーキが掛かり三回転ほどスリップして止まる
「な、何事だい?」
『オコジョの前に人が居たみたいなのじゃ』
『おはぎみてくるニャ!』
そう言うと外に飛んでいった。
「大丈夫かしら?」
少し不安そうなサリーを宥めながら帰りを待つ。
何やら少し騒がしいのでシダルもベルトを外して見に行くと其処には何時ぞやみたお嬢様が居た。
「まぁ!可愛い猫ちゃんね!それとこのオコジョも可愛いわ!飼い主は誰なのかしら」
「こんにちは、えーっと……何してますか?」
よく見なくても分かるんだが、馬に跨ってた妙にきれいな顔をした王子様みたいな人と帝国男爵の娘さんが何しにこんな田舎に来てるんだろう。
「あら!貴方は何処かで見たわね!」
何だか気持ち悪い……目、ていうかなんて言うか
取り敢えず先に行かせてもらおうとしたら
「私その馬車に乗りたい!ね!譲って下さらない?」
「は?馬鹿か、誰が譲るかクソビッチ」
あ、つい本音が……。
「ううう!酷いこと言われた!マーくん助けてぇ!」
と、そのマーくんが馬から降りてきて仰るには
「其処な下郎!畏まって良く聞けよ?私はマーカス・トゥ・モーカント、モーカントの名前は下郎でも聞き及んで居るだろう?」
下郎って使うやつ居るんだなぁ……すげぇなぁっと眺めていたら
「どーだ!びびったか!びびったならその馬車を寄越せ!」
スタスタと馬車に戻る俺をしてやった顔でクソビッチにウィンクを飛ばすと惚れ直したのか擦り寄るビッチ
扉を開けてサリーに声をかけた
「ねぇサリー家名の間にトゥとか入ってるのって何か意味あんの?」
「トゥでございますか?んー……多分モーカント領地の方の家臣さんにはトゥってついたと思います」
「じゃあマーカス・トゥ・モーカントて言うのはモーカント領地に住むマーカスさん?」
「そうですね、そう成ります」
なるほどなるほど……語りでは無いらしい
が、面倒くさいな
「おはぎ?スタンかけて」
『任せるにゃ~~』
バチバチ!
そんな小さな音と共に倒れる二人
振り向くと二人仲良く倒れていたので、邪魔にならない場所に横たわらせて放置した。
馬は居たけどそこらの草でも食んで気が付くまで時間を潰してくれるだろう。
「はいじゃあ行きますよー」
「はい」
『エゲツないのじゃ』
「じゃあ乗せてく?」
『はいじゃあシュッパーツ』
「ほらな?」
『お腹減ったのじゃ』
「エグいのぅ」
『真似すんな戯け!』ベチ
そんなこんなでカリオ村まで馬車は走った
村長には特に用がないので神父様のところへ向かう、すると教会の前に肉塊が転がっていた。
取り合えず無視していつもの用に馬車を止めると土壁を作って馬車を囲った、万が一悪戯されても嫌な気持ちになるだけなので、先に手を打っておいた。
オコジョとおはぎを置いて行くのは忍びなかったが、もし塀の外で騒がしく肉塊が動いたらスタンしていいからね?っと告げてから神父様の部屋へと向かった。
「神父様こんにちは」
「やぁ!来たな、じゃあ早速行こう」
「シスター!ダリル君のところに行ってきます」
「はーい、シダルくんこんにちはー」
「シスターこんにちは、ちょっと神父様借りますねー」
「はぁい呑み過ぎないようにねー」
「「はーい」」
どうやら最近はもっぱら呑みに行くのはダリルの家なんだとかで、しょっちゅう呑みに行ってばかりで朝も辛いんだよねーっだそうだ。
いーのかそんなんで神父様……。
世間話もそこそこに土壁に隠した馬車を取り出そうとしたら反対側の壁に肉塊が転がっていた。
どうやら移動したあとスタンされたらしい。
では、今のうちに移動だな。
そう思って乗り込んだけど、神父様が動かない。
まさかの肉助けなどを行うとかじゃないよね?
っと、見ているとチラッと此方を見て言った。
「この子も乗せ「ませんよ?」」
「えぇ!? いや、でもこの子君のよ「知らない子ですね」」
「……シダル君?」
そう言って睨むので、一応言うだけでもと……
「どの道馬車には乗れませんよ?」
っと言ったのだが、君なら何とか出来るでしょ?
っと言われる。
馬車には乗せずに運ぶ方法を考える。
うーん……。
「サコラ?」
『ええっ!? 妾を巻き込むの!?』
「浮かすのと重さもよろ」
『~~~っ』
声にならない訴えは聞こえないふりして首に縄を付けたら火の玉が飛んできた。
チラッと見たら神父様が指をこちらに向けていた
ため息混じりに足首……なのか脹脛なのか分からない部分に縄をして馬車の後ろに括りつける
「はいじゃあ行きますよー」
「全くシダルは素直じゃないんだから……」
始終グチグチと説教されながら実家前まで来ると縄を解いてそこら辺に転がす。
意識が戻れば自力で帰るだろう。
そのまま馬車に乗ると神父様が睨んでる。
「これ以上は無理です、蕁麻疹が出ます」
「ふぅ……まったく。少し待ってなさい」
そう言うと馬車から降りて肉塊を浮かせて元寝床だった場所に肉塊を静かに寝かせ湿ってた藁を乾かして肉塊に振り掛けてやっていた。
(普段は母屋の方で寝てたはずだが……言わんとこ)
「はいじゃあ行きましょう」
人助けして満足したのか顔にも笑みが戻り一安心
長男家も通り過ぎて次男家まで来ると、勝手知ったるって感じで裏庭へと進むオコジョ。
留具を外すと厩の中へ入っていった。
第二の我が家みたいな感じなのだろうか?
『別荘だそうにゃ』オハギ
(ふーん……っていうか猫にまで感情ダダ漏れか……学園行ったら必ず習得しよう!ポーカーフェイス)
そう誓って裏庭から玄関へと向かうと、神父様が勝手知ったるって感じでノックもせずに
「邪魔するよ~」
「はい、いらっしゃい!神父様にシダルちゃんとサリーちゃんもいらっしゃい!直ぐに温かい食べ物持っていくわね!」っと、小さな黒板に書き込んでそれを見せた。奥さんは口が聞けないので最近は筆談を覚えたらしい
「あ、私手伝います!」
「まぁまぁ、ありがとうね~」
っと、素早く黒板に書く。筆談がプロのそれになりつつあるね
っと、台所へと二人は連だっていった
『サリーの爪の垢を煎じて飲むのじゃシダル』
っと、右肩から声が
「喧しい!」
『まったく困ったちゃんニャ』
っと、左肩からオハギの声が
「はぁぁ……」
「幸せが逃げるぞ?シダル」
正面から神父様の声がしたのでシカトしてダリルに助けを求めた。
「あ~もう!ダリル~お酒~~」
新しい酒の説明もソコソコに勝手に飲み始めたシダルの右頬をベチベチと叩くサコラと
左頬に爪を立てるおはぎ
説教の続きをし始めた神父様に正面に座られていると、お摘みとその他料理を運んで来たサリーに助けを求めたシダル。
みんなで笑ってシダルは怒られて楽しい酒の宴が始まった。
宴も深夜に差し掛かると女性達は既に寝ていた。
奥さんなんかはお酒も飲めないからと早々に引っ込んだ、それに続いてサコラとおはぎもついて行った。少しの間サリーも居たが眠さに負けて寝てしまった。
そして部屋に残るのはシダルと神父様と長男(いつの間にか居た)ダリルは明日も仕事があるからともう寝てしまった。
平日に呑んでても大丈夫な奴しか残っていなかった。
「何いってんの?シダル、神父様の朝は早いんだよ?お祈りだって毎朝するんだからね?」
何故か正座しながらシダルに説教する神父
「なら寝てくださいよもう歳なんだから無理は躰に響きますよ?」
枕と毛布と出して雑魚寝を進める
「こんな時間に寝たら起きれないですよ?このまま明け方まで呑んでそのままお祈りします」
毛布だけもらって腰に巻いた
「そんなことしてたら罰が当たりますよ?ゼリス様」
ソファーに寄りかかりながら言う長男
「大丈夫ですよイタリーさん、最初からこんなもんですから」
そう言ってヘラヘラと笑い出す神父様。この辺から威厳はなくなった。
「駄目神父まっしぐらですね……」
首をふりふりして酒を煽るイタリー
「むっ!貴方に駄目な奴呼ばわりされる筋合いないですよ?」
少し眉根を釣り上げてシダル同様説教体制に入る神父
「むむっ!それは聞き捨てなりませんね!私の何処が駄目なんですか?」
何か琴線に触れたのか声を荒らげるイタリー
「何だよ喧嘩すんなよ酒呑んでんのに」
どうしようもネーナお前らと、少し離れて座り直すシダル
(長男名前イタリーって言うのか……初めて知ったなぁ……)
「そもそもの原因はシダル、貴方ですよ?何我関せずみたいな顔してるんですか?」
スススっと寄ってきて指を指して言う
「えええ~俺~?何かしたっけ?」
心底分からないのか首を傾げ始めるシダルに
「その都合の良い脳味噌凄いですね……本当に呆れ通り越してしまいますよ」
教会に転がってた四男の話らしいが、酒が不味くなる話なので、知らんぷり
「お褒めに預かり~」
盃を少し持ち上げて言うと
「褒めてませんよ?」
っと、冷たい目で見る神父様
「シダルが駄目なのかはたまた四男がカスなのか?」
そう言いながら酒を継ぎ足す
「じゃあ四男だな間違いない」
注いで貰おうと盃を向ける
「違いますよ? シダルあなたも悪いんです」
溢れそうになる盃を上に持ち上げて止めると首を傾げながら
「なんでよぉ~?」
っと、困惑した。
神父様の話方がだいぶ呂律が回らなくなって何とか解読した結果
四男が任せた仕事を完璧にやり切ったのが一つ
四男が他の兄弟の仕事も持ってきたのにやり切ったのが一つ
四男が悪どい行動に出ている事を知っていながら何もしなかった事が一つ
「……それ俺が悪いのか?」
そう聞いたが答えは帰って来ず鼾で返された。
振り向くと毛布の暖かさに負けて寝ていた神父様
「お前は何も悪くないよ?」
そう真面目な顔して言ったあと、頭をクシャクシャとされて
「俺も帰って寝るよ、オヤスミシダル」
そう言って微笑みながら帰っていった
俺はグラスに残った酒を呑みながら
「しょうが無いじゃん。やったら出来ちゃっただけだし、それに途中から楽しくなっちゃったんだよ?俺悪くないよ」
グイッと呑み干すと枕に頭を乗せて上着を羽織ってから寝た。
◇◇
目が醒めたら誰も居なかった。
奥さんは庭でオコジョと日向ぼっこしてた。その両肩にサコラとおはぎと頭の上にユキが寝てた。
(来てたのか……ユキ)
因みに最近知ったんだが、ユキは雌だそうだ。そして、サコラと年齢もあまり変わらないんだとか。
若い振りしてたサコラに少し笑ったらボム食らって危うく火傷になる所だった。全く碌でもないバ……お姉様だ。
恐る恐る肩に止まるサコラを見ると薄っすらと目が開いて手の形をした棒をこっちに向けてやがった。こぇーなぁ。人んち来てまで魔法はやめてほしいと思ったので、外に出ていく事にした。
どうやらダリルに付いて行って収穫を手伝っているサリーの姿が遠目に見える。
ダリルの果樹園は家よりも下の方にあるのでコチラからでもよく見えた。
サリーが手を降るので俺も手を振る。全力で振る
すると何か言われたのか照れて赤くなってるような雰囲気で何か楽しそうにしてた。
俺はそのまま、長男宅に出向き裏庭の子供部屋へと行ってチェックした。特に何も無かったが、夜は冷えるので隙間風とかあったら可愛そうなので、隅々までチェックする。ついでに母屋の方もチェックすると、異常無しと分かったので帰ろうとしたら、実家側の扉が開いて四男がノッシノッシと歩いていた。
少し前から動ける様に成ったらしく、魔法陣何かに魔力を流すのは四男がやっていると聞いた。
どうでも良い情報だったが本当にやってるとは思ってなかった。
妹もまた実家を出て、今は違う酪農の方で羊飼いみたいな仕事をしているらしい。
神父様の計らいらしく、人並みくらいに痩せないと嫁の貰い手なんて無いと諭されたらしい。
もっと早く気が付いていれば適齢期前に嫁に行けたものを……馬鹿な長女だ。
そして父親は隣町の叔父さんの家へ向かって旅を始めたそうだ。
なんの冗談かと思ったがガチだった。
しかも、護衛付き。
その護衛は三男の知り合い。
なんの心境の変化なのか、皆さん前向きに歩む事を決意したそうだ。
あとは、お前だけだと言われてる気がする。
そんなこと言ってもなぁ……前向きに?
はい分かりましたと出来ればいーんだけどね。
四男の声を聴くと蕁麻疹が出る
四男の側によると蕁麻疹が出る
蕁麻疹が出るっていうのは躰が無意識に拒否してるって事だ。
実際アイツのそばにいた時禄な目にあってなかったじゃないか?
それでも近付かなければならないのか?
何故?
必ず誰かを敵にしながらじゃないと生きていけなくなる?
目の敵にして虐める訳でもないのになぁ?
存在をすぐに忘れてしまう都合の良い脳味噌。
彼等の事は本当に良く忘れる。
思い出すと過呼吸になったりするんだよ
だから、忘れるんじゃないか。
なぜ辛い思いを思い出す必要があるんだよ!
俺には分からない
分からなくて良い
都合の良い脳味噌?あるわけ無いでしょそんな物
あったら真っ先に俺が使って全て忘れるよ。
忘れたフリをするのは意外と大変なんだよ?
『何をおかしな顔をしておるのじゃ?戯け』
『そろそろ街に帰るニャ』
「ああ、そうだったなお土産の酒も買っていかないとな」
『……シダル?涙は拭いてから買いにいけよ? でないと心配するのじゃ』
そう言うとフワリと浮いて先に行ってしまったサコラ
『ゆっくりで良いと思うニャ焦らずゆっくり解かせば良いにゃ』
そう言うとフワフワと先に行ったおはぎ
「……そうだな、ユックリ進めればそれでいいよな」そう言って実家に向かって行ったシダルは屋根壁柱と修繕して15分くらいで終わらせ皆が待つダリル家へと走っていった。
その眼に涙はもう流れていなかった
◇◇
「忘れ物はありませんか?」
「うん、ないと思う」
「ふふ、それでは行ってらっしゃいませ!シダル様!ちゃんと週末には戻ってくださいね?」
「分かってますよサリー」チュッと頬にキスしてオコジョ馬車に乗り込む
『孫にも衣装なのじゃ』
何時もの様に右肩に止まるサコラと戯れる
「喧しい!」
「じゃあおはぎサリーを宜しくな!」
『任せるにゃ!』
モフっとおはぎの胸の辺りの毛が動いた、多分叩いたのだろう。
「オコジョ頼むな!」
『任された!我が君』
最近進化したのかオコジョも喋る様になった。
どっかの蜥蜴と違って勘違いもしてないから安心はしている。
一ヶ月の間に休みは6日あって一週間は10日ある
その内の8日間が登校日で寮から学園に通うことになる。
残りの2日が週末になるので、8日の授業が終わったらオコジョが迎えに来る事になっている。
まだ三人とは距離は開いてるがその内何とかなるだろう。父親は無事に付いて叔父さんには謝れてないが、別れた奥さんには謝ったらしいとイタリーが手紙で教えてくれた。
「まぁそのうち……ね」
『腹が減ったのじゃ』
「アイテムバッグならサリーが持ってるぞ?」
『なんじゃと!?聞いてないのじゃ!酷いのじゃ!あんまりなのじゃ!断固抗議するのじゃ!』
「オヤツなら後で買ってやるよ」
『許すのじゃ』
「……全く」
春の風がソヨソヨと吹き、サコラの花弁がチラチラ舞いちる中、オコジョ馬車は学園へとのんびりと走っていった。
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