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しおりを挟むそれからの俺達は、ザケヘルが残した時計製造業を引き継ぎ、そこで働く人達のケアをしながら自動巻き時計を開発。
魔力持ちなら腕に巻いてるだけで充電されるので、王侯貴族を中心に売りまくった。魔力無しにも使える様に使い捨て充電池を開発し、寝てる時に時計を置いておけば充電されるので、こっちも順調に売れ始めた。
お陰で仕事も多く、移民も増えて城塞都市クロイドと並ぶ程の街並みに発展していった。
勿論自動巻き時計だけが売り物ではなく、蜜蜂型一輪電動バイクも空前絶後の流行りに乗り、予約待ちの状態が続く程の売上をあげている。
雀蜂型も良く売れる商品になっており、王国のみならず帝国でも最近乗ってる人が増えたと噂で聞いた。
蜂型は形もさる事ながら性能も改善され、手元でクルクルと回すだけで充電出来る様に改造した事から、魔力無しでも手軽に乗れる乗り物として、通勤で使う者達で都市周辺の街道でも良く見掛ける程普及し始めている。
城塞都市のクロイド子爵は、領地を離れ息子共々帝国のマキシムの元で暮らす事にしたらしく、家督を娘に譲りその婿を新しい領主として王国に報告したらしい。
その娘婿というのが、ザケヘルだった。
ザケヘルは心を入れ替えたのか街の発展に全力を尽くす事にしたそうで、取り敢えず小麦粉屋の風車を直し、電力を売る事業に力を注ぐと明言し、その技術を教えてくれと頭を下げてお願いされた。
軋轢はあったが、昔と世話になっていた事から、これを了承しサンチェスとガドンを派遣。
自動巻き電力時計の充電器開発も委託製造する契約もする事になり、街ぐるみで仲良くなったいった。
王国にあるエルフ族大使館にはガウェルとその仲間たちが数十人で運営する事になった。
電力供給をする給電ステーションとしても王国に還元するので、王様も快く迎えてくれて、関税は掛けないと約束してくれた。
そして、王国では樽型電動馬車が多く使われ始め、数年後には馬車を馬や地竜で引く仕事が廃れていく事になる。
そして歳月が五年ほど過ぎた頃、王国の王様が病気になって倒れたという噂が流れ、王都やその周辺の街がにわかにざわ付く自体になった。
勿論隣の城塞都市クロイドでも暫く混乱が続き、ザケヘルがうちの街へ小麦の買い取りを打診してきた。
王国へと流す分に突然重税を掛けられたことで、売りに出すことが出来なくなり有り余って困っているとの事だったので、買い取ったのだが、ザケヘルの心配事は他にもあったらしく、話を聞くと
「電力に重税が掛けられるようになったんだが、何か知ってる情報があるなら此方にも流してくれ」とお願いされた。
勿論その対価も支払うと言質も取れたので、国枝に連絡をした。
魔力無しでも送れる様になった電力鳥という装置を使う。
電力と魔法陣を組み合わせた、いわば電話の様なものである。
それを使って国枝と連絡を取り合っているので、直ぐに国枝が出てくれた。
「もしもし国枝? 王様が倒れたって聞いたけど、大丈夫なん?」
「ああ、今は……な。それより、気を付けろよ海人? 王侯貴族の間でお前に恨みを持つ者が増えてきてる」
ここ数年で電力を動力に動く機械が増えた為に、魔力を持つ者達から反感を買う事になってしまった。
この電力鳥の普及も拍車を掛けている様だ。
気軽に話を出来る事になったおかげで、手紙を魔力持ちに頼んでへいこらと頭を下げていた者達は居なくなり、魔力持ちと魔力無しの境は既に無くなった。そのお陰で魔力持ちの貴族の権威が大分落ちたらしい。
「うんまぁ、その辺は気を付けているけど俺が何かした所で収まる訳でも無いしさ」だから、気にしない様にしてると言うと、何かあったら手を貸すからと言われて魔力鳥の電源を落とす。
「うーん、取り敢えず流通関係を少し洗ってみるしかないかなぁ」
重税を掛けようとする団体が居るが、姿が分からないので知り合いから順に調べようと思い、最近森の奥で見つかった猫の様な生き物を使役して運送業を始めたダークエルフのトマトに連絡を取る。
この猫みたいな生物は体調三m程ある巨大な猫だった。寅などよりも大きな体躯に愛らしい猫顔というチグハグなこの生物は三毛猫でとても性格も良かった。
街の中に入っても大人しい事から、トマトがアイテムバッグを有効に使って始めたのが、【三毛猫トマトの宅配便】である。
三毛猫に篭の様な物を咥えてもらい、そこに入って運送するらしく、店の看板にもその絵が描かれている。
「もしもしトマト? 今大丈夫?」
「あ!海人さん?お久しぶりですね!お子さんは元気ですか?」
そう、俺にも実は子供が生まれたのだ。
アリサとカーナとカーニャに一人づつ。
アリサから男の子。
カーニャから女の子。
カーナから男の子。
が、無事に生まれガウェルもパウェルも次期族長候補が生まれたと大喜びで連日お祭り騒ぎになった。
その時にトマトとも出会ったのだ。
トマトは百七十歳の若い(?)ダークエルフで、背は小さいが出る所は出てる女の子だ。
国枝曰くロリ巨乳だと言っていた。
そんな彼女もちゃんと伴侶は居るので、食指は動きませんでした。羨ましくてガン見なんてしてません。
まぁ、そんな経緯(?)で知り合ったので、今でもたまにこうして話をしたりする。
「最近夜泣きから開放されて嫁共々元気になってきたよ」と世間話から始まって、最近重税が掛けられてるって聞くけど宅配便とかはどう?って聞いてみたが
「特にそんな話は聞いたことないですよ? お力に成れずスイマセン」
と、謝られてしまった。
取り敢えず気にしないでと言って魔力鳥を切る。
「うーん。電力関係だけに重税がかけられてるのかな?」と、思い始めたその矢先、国枝がお姫さん連れて転移魔法で飛んできたと報告を受ける。
☆
「海人! 匿ってくれ!」
「どした⁉ 何があった⁉」
と、駆け込む様に姫さんを抱いて部屋に飛び込んできた国枝を迎える。
「将軍が謀反を起こして秘密裏に王様を幽閉したんですの!」
抱かれながら姫さんがそう叫んだ。
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