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しおりを挟むまずは祝杯だ!
と、ばかりに町を上げてのお祭り状態になった。
世界樹周辺には城塞都市クロイドから数百人以上も住民が集まっていた。
仕事を探しにきた者が大半で、それに付いて来た家族も合わせて数百人だ、彼女や彼氏や婚姻したばかりの夫婦何かも大勢いる。
ザケヘルはどうやら時計作りの一大産地を目指していた様で、大量に声を掛けていたらしく、魔力無しも大勢集まっていた。
そして、その魔力無しの住民達を中心に、ムズガの指揮の元時計の歯車造りをしていたのだとか。
魔力が無くても暮らしに支障が少ないこの街は過ごしやすいのか、皆のびのびと暮らしている。
小麦や何かは配給制にしてるらしく、毎日仕事をする前に貰えるシステムになってるらしい。
その辺はちゃんとやっていたザケヘル。
もっと違うやり方で共に出来たら良かったのに、何故あんな愚行に走ったのか考えるだけで本当に残念に思う。
魔力持ちもそれなりに居て、小麦畑や薬草園で仕事をしているようだ。
そして件のダークエルフ達も、これからこの街で暮らす事になる。
当初危惧した住民との諍いなどもなく、とても平和的に接しているダークエルフ達を見て、本当にダークなのか?と、疑ったくらい人当たりも良かった。
パウェル曰く
「人当たりのよい商人程信用ならない者は無い」と、言っていた。
まぁ、暫くは様子見になる。
ダークエルフ達はこの街の商人として、働きたい様なので、ボッタクリや身体に支障が出そうな食べ物の販売は禁止した。
ガウェル曰く
「そんな事をする奴等は儂の種族にはおらん!」と、怒られたが。
悪い噂を払拭出来る様に精進すると誓ってくれた。
実はダークエルフは悪いやつじゃないのでは?っと、思い始めている。
意外と謙虚なのも好感がモテる。
寧ろ、パウェルの方が悪い奴に思える時もあるくらい……。
何故かと言うと、目の前でガウェルをこき下ろしてるからだ。
この地に住むならお前だけ諸場代払えとか……。
曾孫が生まれたら有料で抱かせてやるとか言っているし。
どう見ても悪いのはパウェルの様に思えるのだ。
ガウェルもまぁ、言い返してるのでどっちもどっちな気もするが、なるべく喧嘩しないで仲良く皆が暮らしていければ此方としても嬉しい。
「そういえば、わしの孫の旦那様よ」
微笑ましそうにパウェルとガウェルの舌戦を見ていたら、こちらに話を振ってきた。
「海人だよ」
「うむ、海人よ」
「何でしょう?」
「あと何日後に曾孫は生まれる予定なんだ?」
ーーおい、パウェル。ガウェルになんて言って説得したっ⁉
「……数ヶ月先くらいですかね……(ついていればの話しだけど)」
そう言うと怪訝そうな顔をして、パウェルが居る方を振り返ると、そこにパウェルは居なかった。
逃げたのだ。
「あの野郎‼ 騙しやがったな⁉ もう直ぐ生まれる様な事を言ってやがったくせに‼ 老い先短い年寄り騙して何がしたいんだ‼」
地団駄を力強く踏み悔しそうに叫ぶと、隠れていた場所から顔だけ出して、パウェルが文句を言う。
「お前の老い先はまだ数百年あるだろうがっ‼」
「ざけんなっ‼ たった数百年じゃ‼」
「そこの婿殿を見ろ‼ まだ若そうなのに数十年で寿命が尽きるんだぞ⁉ それを思えばまだ数百年だろうがっ‼」
「……あー、確かにそうかも知れん。 すまんな婿殿」
と、なぜか謝られる俺。
「あ、いや、別に……怒ってません」としか言えず。
そしてその後は二人の見た目だけ若そうな老害共にやれ孫はまだか、やれ、曾孫は何人欲しいとか、ネチネチと小言を聞く時間になった。
ーー絶対こいつら仲良いだろ。と、思う程に息ぴったりだった。
爺婆の席から適当な理由を付けて離れられた俺は、ユーリ達の座る席へと移動した。
「あ、海人様!曽祖父のお相手は終わりまして?」カーニャが話しかけてきたので、その隣に腰掛けて相手をする。
「パウェルと仲良さ気に話してたから任せてきた」
そう言ってグラスを傾ける。
「パウェル様と曽祖父は仲が悪いという噂でしたが……」
心配そうにカーナも隣りに来た。
「俺の見る限りじゃ仲良すぎるくらいだったけど?」
「所詮噂ですからね。 そんな事よりアリサはまだ戻らないんですか?」
そう言いながら後ろから俺の首に腕を回してバックハグをして来たのはユーリだ。
仲の良いアリサを心配してる様だ。
「アイツはたしか炎帝の住処に行ったんだったっけ?」
「お母様も無茶振りが過ぎます! 流石のアリサだって炎帝様には敵わないでしょうに……」
心配そうにしてるユーリの頬にキスをして、大丈夫だよ。っと、慰めていると世界樹の屋上付近から声が聞こえた。
その声と共にバッサバッサという羽音も……見上げるとそこには紅い鱗を持った飛竜と、その上に跨るアリサと飛竜の足元に父竜が鷲掴みにされて着陸するところだった。
「「「帰ってきた‼」」」と、皆で迎えに屋上まで走る。
「「「「おかえり!アリサ!!」」」」
と、迎えたらアリサは俺に突進をかます様に抱きついて来て、そのままキスをされ青黒くなり掛けた所でユーリ達に引き剥がされた。
ーーアリサにはキスの仕方とか抱擁の仕方を改めて教えないと駄目なんじゃないか?と、気を失いそうになりながら思った。
「随分と時間が掛かったみたいだけど……怪我は無い?アリサ」
カーニャがアリサに話掛けると、アリサも漸く落ち着いたのか、今までの事を話し始めた。
☆
仰向けでグースカ寝てる炎帝の顎に、力一杯アダマンタイトの鉄槌を容赦無く叩き込んだアリサは、口から泡を吹いて気絶してる炎帝を起こそうと水を大量にぶっかけた。
「おい? いい加減に起きろ!」
寝ている所に気絶する程の攻撃をされた炎帝は、その声と大量の水で意識を取り戻すと、自体を掌握するかの様に周りを見回し、出入り口に父竜の姿を発見すると事情を聞き出した。
『おい、地竜の父君よ? 用があるならもう少し優しく起こしてくれないか?』
『う、すまぬ炎帝よ。此方にも事情があってな……』
アリスの事は相手にしたくないのか、ガン無視を決め込んでいる。
「おい!おいって‼」
足元で喚く小さいドワーフは見ない様に更に父竜へと話掛ける炎帝。
『それで? 何用じゃ?』
「てめぇっ‼無視してんじゃねーよ‼」と、遂に憤怒したアリサが炎帝の脛に向かって鉄槌を横薙ぎに叩き込むと、漸く気付いたかの様に下を見る。
「……なんじゃ居たのか 小さすぎて分か『ドゴーンッ‼』…」下を向いた瞬間再び顎にアッパーする様に鉄槌を食らわせ炎帝は吹き飛ぶ。
『何しやがるっ‼』
「話を聞けーっ‼」と、鉄槌を振り回しながら襲ってくるアリサになすすべ無くボコボコにされた炎帝は、何度となく抵抗し反撃するがぶち倒され、何度めかの気絶を繰り返した後、屈服したそうだ。
『訳もわからず襲われて使役された身になって見ろ!』と、アリサの話す内容にいつの間にか参加してた炎帝が、涙目で訴える。
話を聞けと言いながら何も話をしなかったと泣きながら訴えられた。
ーー俺に言われてもなぁ……。
何度も立ち上がるそこの飛竜に思わぬ時間を取られてしまって、今まで時間が掛かってしまったと、アリサも疲れた様に言う。
「もう二度とパウェルの命令は訊かないからなっ‼」と言って大の字になるとそのまま寝息を立て始めた。
「アリサはこのまま部屋に運ぶよ、グレンも……まぁ、ゆっくりしてってくれ」
そう言うと、アリサをお姫様抱っこして七星へと向かった。
※因みにグレンと呼んでいるのは海人くらいで、皆は普通に昔の名前で呼んでいます。
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