異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる

文字の大きさ
上 下
68 / 77

68

しおりを挟む


 まずは祝杯だ!
 と、ばかりに町を上げてのお祭り状態になった。
 世界樹周辺には城塞都市クロイドから数百人以上も住民が集まっていた。
 仕事を探しにきた者が大半で、それに付いて来た家族も合わせて数百人だ、彼女や彼氏や婚姻したばかりの夫婦何かも大勢いる。

 ザケヘルはどうやら時計作りの一大産地を目指していた様で、大量に声を掛けていたらしく、魔力無しも大勢集まっていた。
 そして、その魔力無しの住民達を中心に、ムズガの指揮の元時計の歯車造りをしていたのだとか。
 魔力が無くても暮らしに支障が少ないこの街は過ごしやすいのか、皆のびのびと暮らしている。
 小麦や何かは配給制にしてるらしく、毎日仕事をする前に貰えるシステムになってるらしい。
 その辺はちゃんとやっていたザケヘル。
 もっと違うやり方で共に出来たら良かったのに、何故あんな愚行に走ったのか考えるだけで本当に残念に思う。

 魔力持ちもそれなりに居て、小麦畑や薬草園で仕事をしているようだ。
 そしてくだんのダークエルフ達も、これからこの街で暮らす事になる。

 当初危惧した住民との諍いなどもなく、とても平和的に接しているダークエルフ達を見て、本当にダークなのか?と、疑ったくらい人当たりも良かった。

 パウェル曰く
 「人当たりのよい商人程信用ならない者は無い」と、言っていた。
 まぁ、暫くは様子見になる。

 ダークエルフ達はこの街の商人として、働きたい様なので、ボッタクリや身体に支障が出そうな食べ物の販売は禁止した。

 ガウェル曰く
 「そんな事をする奴等は儂の種族にはおらん!」と、怒られたが。
 悪い噂を払拭出来る様に精進すると誓ってくれた。
 実はダークエルフは悪いやつじゃないのでは?っと、思い始めている。
 意外と謙虚なのも好感がモテる。
 寧ろ、パウェルの方が悪い奴に思える時もあるくらい……。

 何故かと言うと、目の前でガウェルをこき下ろしてるからだ。
 この地に住むならお前だけ諸場代払えとか……。
 曾孫が生まれたら有料で抱かせてやるとか言っているし。
 どう見ても悪いのはパウェルの様に思えるのだ。

 ガウェルもまぁ、言い返してるのでどっちもどっちな気もするが、なるべく喧嘩しないで仲良く皆が暮らしていければ此方としても嬉しい。

 「そういえば、わしの孫の旦那様よ」

 微笑ましそうにパウェルとガウェルの舌戦を見ていたら、こちらに話を振ってきた。

 「海人だよ」
 「うむ、海人よ」
 「何でしょう?」
 「あと何日後に曾孫は生まれる予定なんだ?」

 ーーおい、パウェル。ガウェルになんて言って説得したっ⁉

 「……数ヶ月先くらいですかね……(ついていればの話しだけど)」

 そう言うと怪訝そうな顔をして、パウェルが居る方を振り返ると、そこにパウェルは居なかった。

 逃げたのだ。

 「あの野郎‼ 騙しやがったな⁉ もう直ぐ生まれる様な事を言ってやがったくせに‼ 老い先短い年寄り騙して何がしたいんだ‼」
 地団駄を力強く踏み悔しそうに叫ぶと、隠れていた場所から顔だけ出して、パウェルが文句を言う。

 「お前の老い先はまだ数百年あるだろうがっ‼」
 「ざけんなっ‼ たった数百年じゃ‼」
 「そこの婿殿を見ろ‼ まだ若そうなのに数十年で寿命が尽きるんだぞ⁉ それを思えばまだ数百年だろうがっ‼」

 「……あー、確かにそうかも知れん。 すまんな婿殿」

 と、なぜか謝られる俺。
 
 「あ、いや、別に……怒ってません」としか言えず。
 そしてその後は二人の見た目だけ若そうな老害共にやれ孫はまだか、やれ、曾孫は何人欲しいとか、ネチネチと小言を聞く時間になった。

 ーー絶対こいつら仲良いだろ。と、思う程に息ぴったりだった。


 爺婆の席から適当な理由を付けて離れられた俺は、ユーリ達の座る席へと移動した。
 「あ、海人様!曽祖父のお相手は終わりまして?」カーニャが話しかけてきたので、その隣に腰掛けて相手をする。
 「パウェルと仲良さ気に話してたから任せてきた」
 そう言ってグラスを傾ける。

 「パウェル様と曽祖父は仲が悪いという噂でしたが……」
 心配そうにカーナも隣りに来た。
 「俺の見る限りじゃ仲良すぎるくらいだったけど?」
 「所詮噂ですからね。 そんな事よりアリサはまだ戻らないんですか?」
 そう言いながら後ろから俺の首に腕を回してバックハグをして来たのはユーリだ。

 仲の良いアリサを心配してる様だ。

 「アイツはたしか炎帝グレンの住処に行ったんだったっけ?」
 「お母様も無茶振りが過ぎます! 流石のアリサだって炎帝様には敵わないでしょうに……」

 心配そうにしてるユーリの頬にキスをして、大丈夫だよ。っと、慰めていると世界樹の屋上付近から声が聞こえた。
 その声と共にバッサバッサという羽音も……見上げるとそこには紅い鱗を持った飛竜と、その上に跨るアリサと飛竜の足元に父竜が鷲掴みにされて着陸するところだった。

 「「「帰ってきた‼」」」と、皆で迎えに屋上まで走る。



 「「「「おかえり!アリサ!!」」」」

 と、迎えたらアリサは俺に突進をかます様に抱きついて来て、そのままキスをされ青黒くなり掛けた所でユーリ達に引き剥がされた。

 ーーアリサにはキスの仕方とか抱擁の仕方を改めて教えないと駄目なんじゃないか?と、気を失いそうになりながら思った。

 「随分と時間が掛かったみたいだけど……怪我は無い?アリサ」
 カーニャがアリサに話掛けると、アリサも漸く落ち着いたのか、今までの事を話し始めた。


 ☆


 仰向けでグースカ寝てる炎帝の顎に、力一杯アダマンタイトの鉄槌を容赦無く叩き込んだアリサは、口から泡を吹いて気絶してる炎帝を起こそうと水を大量にぶっかけた。

 「おい? いい加減に起きろ!」

 寝ている所に気絶する程の攻撃をされた炎帝は、その声と大量の水で意識を取り戻すと、自体を掌握するかの様に周りを見回し、出入り口に父竜の姿を発見すると事情を聞き出した。

 『おい、地竜アニキの父君よ? 用があるならもう少し優しく起こしてくれないか?』
 『う、すまぬ炎帝よ。此方にも事情があってな……』

 アリスの事は相手にしたくないのか、ガン無視を決め込んでいる。

 「おい!おいって‼」

 足元で喚く小さいドワーフは見ない様に更に父竜へと話掛ける炎帝。

 『それで? 何用じゃ?』

 「てめぇっ‼無視してんじゃねーよ‼」と、遂に憤怒したアリサが炎帝の脛に向かって鉄槌を横薙ぎに叩き込むと、漸く気付いたかの様に下を見る。

 「……なんじゃ居たのか 小さすぎて分か『ドゴーンッ‼』…」下を向いた瞬間再び顎にアッパーする様に鉄槌を食らわせ炎帝は吹き飛ぶ。

 『何しやがるっ‼』
 「話を聞けーっ‼」と、鉄槌を振り回しながら襲ってくるアリサになすすべ無くボコボコにされた炎帝は、何度となく抵抗し反撃するがぶち倒され、何度めかの気絶を繰り返した後、屈服したそうだ。

 『訳もわからず襲われて使役された身になって見ろ!』と、アリサの話す内容にいつの間にか参加してた炎帝グレンが、涙目で訴える。
 話を聞けと言いながら何も話をしなかったと泣きながら訴えられた。

ーー俺に言われてもなぁ……。

 何度も立ち上がるそこの飛竜に思わぬ時間を取られてしまって、今まで時間が掛かってしまったと、アリサも疲れた様に言う。

 「もう二度とパウェルの命令は訊かないからなっ‼」と言って大の字になるとそのまま寝息を立て始めた。

 「アリサはこのまま部屋に運ぶよ、グレンも……まぁ、ゆっくりしてってくれ」
 そう言うと、アリサをお姫様抱っこして七星へと向かった。




 ※因みにグレンと呼んでいるのは海人くらいで、皆は普通に昔の名前で呼んでいます。
 

 

 
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。 「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。 だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。 時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。 そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。 全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。 *小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...