異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる

文字の大きさ
上 下
67 / 77

67

しおりを挟む


 「そんな事は如何でもいーんだ! おいパウェル!てめぇ何をしやがった⁉」
 そう怒鳴るとダークエルフとマキシムが不在の理由を言ってきた。
 弱みを見せたら話し合いも何も無くなると思うんだけど……。と、思ったがそんな事を言ってる場合じゃなくなったようだ。

 心無しかクライド子爵もマキシム達が何処に知りたいらしい。
 ザケヘルからマキシムの名前が出ると、目の色を変えて被りついて来たからな。

 「私の息子とマキシム殿とその他大勢の子供達が消えたのだ! 何か知っているなら教えて欲しい!」と。

 そりゃあもう、話し合いというよりお願い事の様に祈りながらね。
 ザケヘルはザケヘルでマキシムに何かを奪われたのか、しきりに居所を聞き出そうと躍起になってる様に見えた。

 で、マキシムが何処へ消えたのか言ってくれるなら何でも言う事を聞くとまで言い出したのだ。

 なので、パウェルは無血開城を望み、賠償金などの請求はしないが、二度とこの地に足を踏み入れる事を禁ず。という、署名に名前を書けと言った。

 そしてそれを二人は飲んだのだ。

 信じられなかった。何だこの流れ……、意味わかんなかった。これまでの緊張を返せと言ってやりたかった。

 それと同時に、パウェルが裏で工作した内容も知りたくなった。

 「ほほほ、そんなに期待した目が六つも向けられては話すしかないかの」
 すべての書類に名前を書かせた後、そう言って話始めた。

 先ず風車に関わる話からだった。
 風車は回る事で磁力(磁石)を動かし、其処で電力が発生して魔石パウダーに電力を溜め込む仕組みになっている。
 が、風車をザケヘルの命令で検査したズドンガドンの父親のムズガは、訳した写本を手に調べた結果、風車は壊れているかやり方が違うと言い切った。
 風車で得た電力を魔石パウダーに送る為の銅線が途中で切れていると言ったのだ。
 その為に、いくら風車が回ろうともこのままだと電力は扱えない。と、ザケヘルに言ったらしい。
 勿論拠点から離れる時、銅線は切れてなどいなかった。
 多分だがムズガが俺達に手紙を送ってきたあの日に細工したのだろう。

 だが、そんな話を信じる程ザケヘルも素直ではなかった。
 翻訳された説明書を頼りに自分でも調べたようで、其処に書かれた図を見て理解したようだ。
 その時見ていた写本を持ってきた様で見さてもらったが、銅線ーと銅線の間に長く線を書くのが面倒いからと略したチルダを二本描いて銅線を魔石パウダーに繋げて書いた図を、どうやら魔力を飛ばすと勘違いしてくれたらしい。

 そのお陰で詳しく知るが必要になった様だ。
 だから当初海人を攫う計画を立てたがうまく運ばずに、マキシムを使計画を組み入れたらしい。

 マキシムは自他共に認める男色家だ。
 俺を出汁にすれば言う事を聞くと思ったのだろう。まぁ、その思い込みは半分正解で半分違っていたのだが。利用さえ出来れば問題なかったらしい。

 まんまと仲間に引き入れたザケヘルは、金が既に底を尽きかけていた。
 焦ったザケヘルは言葉巧みに将軍やグランドル侯爵に俺が手に入った暁には武器などを作らせ融通する約束をして、資金を提供させたらしい。
 その資金は虎の子らしく隠していたのだそうだ。
 しかしその隠し場所をパウェルが国枝の私兵を使って突き止めた。
 そしてその隠し場所をマキシムにバラシたそうだ。
 マキシムも金は無かったのだ。
 男の子達を手中に収める為に私財を使い切って貢ぎ、すべての子供達が自分と共に行く資金も作っていた為に、ザケヘルに声を掛けられた時には貧乏だったらしい。
 クライド子爵から金を出させる為に息子も利用していたが、それでも足りなかった様で、パウェルの秘密の手紙を受け取ったマキシムは隠し場所から金を根こそぎ奪って逃げたらしい。

 「これは賭けであった、良心の呵責があれば仲間を裏切る事はせぬと思ったからのぅ」そういって嗤うパウェル。

 それが発覚したのは今朝のことらしい。
 ザケヘルは金庫に金がない事を知り、クライド子爵は息子が居ない事を知り、共通する人物がマキシムだと分かった途端心配になったと。
 その後世界樹周辺に出来た町の中を探し回ったが、マキシムのお手付きされてる子供達は全員見付からなかった事で、逃げたと分かったという。

 「たった一通の手紙を送っただけだと⁉」そんな事でマキシムが自分を裏切った事に信じられない顔をしていたザケヘルは、俺を見て嗤う。

 「お前は愛されてなかったみたいだな? 人垂らしのお前でも愛されない事があったんだな?ザマァww」と。

 ーーいや、愛されたくなかったので問題ないんですけど?
 寧ろ仲間とすら思われてなかった自分を嗤えよ。

 ちょっと言ってる意味が理解出来ずに少し壊れたザケヘルを眺めていたら、クライド子爵が絡んできた。

 「それで⁉マキシムは何処へ行ったか存じ上げないのか⁉」

 そう言って来たのを軽く制しながらパウェルがニッコリ笑って林の方を指差した。

 そっちはハウスがあった場所で、今現在国枝が待機してる場所だ。

 「今さっき魔道士殿の力で帝国へと送り込んだばかりじゃ、すぐに迎えば出会えるやも知れぬのぅ?」

 送った場所は元ダークエルフ達が住んでいた場所らしく、家屋や畑付きですぐに生活が営める場所らしい。其処を金貨数百枚でマキシムに譲ったのが、ダークエルフ達だという。

 「そこで漸くダークエルフが絡むのか」

 そう聞くと、頷いて
 「奴等の悲願は世界樹周辺に住む事をだからの、それを提案したら直ぐに乗ってきおったわ」と、楽しそうに話しだした。

 ザケヘルに協力的だったダークエルフの名はガウェルというらしい。
 なんと、パウェルの従兄弟だという。
 そして、カーナとカーニャの祖父なのだとか。

 ーーだから目元が似てたのか……。

 そのガウェルに送った手紙にはこう書かれていた。

 「ザケヘルに手を貸すなら、今後一切世界樹周辺に居させるわけには行かぬ、此方には全面戦争を仕掛ける用意がある。
 だが、もし手を引くなら一つ提案がある。乗るなら次の話し合いには来るな。
 それと、曾孫ひまごを抱きたくないか?」

 と、書いたそうだ。

ーー曾孫ひまご……。子供や孫にも数百年会えてなかった爺さんには堪える文だな……。

 その手紙を受け取ってガウェルは従った訳だ……。
 そして、国元に居る仲間のダークエルフ達を国枝に頼んで連れて来ても良いという言質を与えたそうだ。

 その話をすべて聞いたザケヘルは項垂れたまま動かなくなった。
 クロイド子爵は既に天幕からは居なくなっている。きっと、国枝のいる場所に向かったのだろう。

 ザケヘルは書面通りにその日の夜には世界樹周辺から居なくなった。
 自分の馬車はアイテムバッグに入れて、歩き去ったという報告を受け取った。

 これでこの一件は終わった。かに見えたが、今度は王国の将軍が絡んでくるとはこの時の俺達は想像すらしていなかった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。 「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。 だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。 時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。 そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。 全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。 *小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

処理中です...