異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる

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 「何これ?メタルスラ……」
 最後まで言おうとした国枝を後ろから抱きつく様にチョークスリーパーして口も覆って防ぐ。
 「これはテ・ン・ト・ウ・ム・シ!OK?」
 「うん♡OK♡」

 ギリギリと首と口を締めてるのに何故か嬉しそうな国枝の言うとおり、確かにコレではテントウムシに見えなかった。
 なので、赤と黒で色を付けて七星テントウムシの様にしたのだが……。

 「これはこれで……なんか禍々しくなってね?」と、指摘を貰う。

 何かもう面倒臭くなったのでそのまま放置する事にした。



 俺達は今、エルフ族大使館前で出発の準備をしている。
 行き先は帝国と拠点の世界樹。
 拠点を占拠したザケヘルに対抗する為、正式に世界樹の化石周辺をエルフ族の領地として王国に認めてもらった、その周辺国である帝国にも認めて貰う為に王様から手紙を贈ってもらった結果、公式な署名なのだからエルフ族が此方に来て貰いたいという返事を受け取った為だ。

 帝国と王国とは敵対関係ではあるが、両国共に戦争がしたいという訳ではない。
 エルフ族とも有効な関係を築けてもいる。ただ、帝国の裏にはダークエルフが暗躍してる為、油断は出来ない。

 なので、今回は帝国に【クィーン】にサイドカーを付けてパウェルとお義父さんと、サンチェス、ガドンが乗る【鉄壁】の護衛付きで向かう事になった。

 【ハウス】に乗り込むのは、マーク、ニーチェ、イーチェ、ズドン、ユーリ、アリサ、カーナ、国枝の六人で
 ハッチ、ハッチ改はハウスに収納したまま、待機する。
 有事があったら直ぐに飛び出せる様に少し改造した。

 【ハウス】は、王妃様が教えてくれた旧街道を行く。
 魔王との戦争時代に使っていた街道で、既に人が通らなくなって何年も経つが、軍は内密に演習等で使っている為一応通れるらしい。

 俺とカーニャは先行して、現街道を行く。
 途中で網を張ってるグランドル達の目を引かせる為だ。奴等の狙いは俺なので、俺だけが其方から行くと言ったら、お義父さんが「カーニャかカーナも連れて孫を作れ!」と、煩かったのでカーニャを連れて行くことになった。
 まぁ、拠点までは数日から長くても一週間は掛かるだろうし、その間に仕込んでこいって事だろう。

 中々下世話がウザイが仕方ないと諦めた。

 で、体当たりに特化してる【七星】とは言え、集団戦になるだろうからと、国枝の発案でカメラ無しのド○ーン風蜂型特攻火炎放射器という、かなりヤバげな魔法陣の描かれた機械を飛び出させる装置が新たに付けられた。
 これは多分……、飛んで行って敵陣に飛び込ませ爆発炎上させる……ある意味ナパームに近い飛び道具だと思う。

 使いどころに困るがいざという時に使えば良いだろう。




 では、王様、王妃様、またいずれ!と、挨拶して【七星】に、乗り込んだ俺達は出発した。

 因みに王様に素材を全部きれいに使ったことを伝えた所、動きが停止したので急遽造った蜜蜂ミツバチ型電動馬を3機渡し、それぞれ王様用王妃様用お姫様他子供達用と別けて、渡したら漸く動き出した。
 勿論酒樽型も渡してある。
 充電は魔力でも出来るが、蜂型でもかなりの量用が必要なので、顔面蒼白になって貰っても困ると、エルフ族の大使館に設置した風車から電力が気軽に充電出来る様に給電所も作っておいたので、多分大丈夫な筈。
 使い方は従者や侍女に伝えてある。
 必ず自分以外の人を付けて充電する様にとも伝えたある。
 感電死してもらっても困るからな。

 「では、先に行く! 皆も気を付けてな!拠点で会おう!」
 そう言うと、扉を閉めてアクセルを踏む。シュルシュルと軽快な音を立てて六つのモーターが廻り、軽い感じでシュッと音も無く走る【七星】

 「「「おおーっ!!」」」という歓声を背に受けて、王都の門を通り過ぎていく。

 その後ろで「七星テントウって、巨大にするとかなり毒々しいんだな……これならメタルスラ○ムの方が可愛げあったんじゃ……」と、国枝が呟いたが、俺は知らない。

 見学に来ていた兵士や住民は口々に【七星】を見ては囁いた。

 「なんて禍々しい昆虫なんだ……」
 「恐ろしい……」
 「あれはエルフ族が使役してる昆虫らしいぞ?」等と噂される様になり、大使館が出来た事を歓迎もするが、畏怖される事にもなったようだ。

 中々有効的には進まないかも知れないが、取り敢えずは良しっと捉える事にした。

 【七星】は順調に街道を進み、道中すれ違う馬車を引く馬や牛をビビらさせながら遂に王都と地方の境界線まで辿り着いた。

 ざわ付く兵士達と慌てふためく鎧を着込んだ貴族達を一定の距離を保ちながら何事かと集まってきた住民が傍観する姿が見える。
 誰が始めたのか屋台まで出ていた。

 「お祭りみたいですね」
 「まぁ、娯楽の少ない世界だからね」

 争い毎すら娯楽にしてしまうのだろう。
 現にコロシアムはお祭りみたいだしね。
 人の血が舞うのは面白い娯楽なのだろう。戦国時代の武将も戦はスポーツにでも出掛ける感じで行ってたっていうしね。

 まぁ、これから始まるのはただの蹂躙になるんだけどね。

 俺は開戦と同時に一発かましてやろうと蜜蜂型特攻機を準備した。

 「それ使うんですか?」と、カーニャが驚く。そんなもの使わずとも楽勝ですよね?って言いたいのだろうが、長引くと面倒でしかないからな。

 足元にでも爆炎が拡がれば兵士はビビって道を開けるだろうと、ほくそ笑む。

 馬上にはグランドルが乗って指揮をしてる様だ。そして此方を睨みながら叫ぶ

 「貴様には此処で我等の子と交換する道具になってもらう! 貴様一人が犠牲になれば皆が救われるのだ! 抵抗せずに投降しろ! さすれば女には何もしない!」
 
 いくら子供と引き換えにしたいと言っても、他人を犠牲にしてまでする事なのか?
 と、疑問に思うが……。
 実際自分の子だったらと考えると分からなくもない。
 とはいえ、認める事は出来ないので抵抗させていただく。

 「んじゃ発射♪」っと、上部の蓋をパカリと開けて飛び出した蜂型特攻機は、放物線を描きながら飛んでいき、槍を突き出して走る様に近付いてくる兵士達の足元に突っ込んだ。

 その瞬間爆発し、爆心地から半径五十m程が四方八方に飛び散る火炎で包まれて、兵士達は火達磨に……。

 「……あれ?」
 「火力……強すぎませんか?」

 と、残りの九機体あるド○ーン風蜂型特攻機を恐る恐る端に寄せた。

 「「「くにえだーーーーっ⁉なんて物使わせんだよっ⁉」」」

 という俺の叫びは虚しくも戦場に響き渡りはしなかった。(車の中だしね)

 暫く燃え続けた場所には黒々と焼け焦げた死屍累々の兵士達……。その数数十~百人くらいはいるかも知れない。

 その後ろではあまりの恐怖で身を縮こませる兵士や動かない戦友に声を延々とかける者や、失禁してガタガタと震えて動けない者などが見受けられ、顎でも取れた?ってくらい口を開けたまま、驚愕に目を見開き、落馬したのか地面に落ちてるグランドルが見えた。

 「出鼻を挫くどころか殲滅しちゃいましたね……」
 「だねー……」

 この後どうしよっか?と、此方も戸惑ってしまう出来事になってしまった。


 
 

 
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