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しおりを挟む「それにしても良く蜂を利用しようなんて思ったね?」
ワイワイとお喋りを楽しむ中、サンチェスがミツバチの巣を森の奥で見つけた事を話していたので、混ざってみた。
サンチェスとガドンは森へ晩飯の肉を狩りに奥地へと入っていき、そこで蜜蜂が飛んでいたのを発見。
付いて行って蜂蜜をゲットしよう企んだ。
ついて行きながらガドンが「あれに車輪付けたら乗れそうだな」というと、「確かに!」と賛同したサンチェスが、「亡骸を持ち帰って試して見よう!」と、言い出して如何にか持って帰れないか二人で考えたらしい。
取り敢えず巣の周りに行けば何か見つかるかもと思って後をつけたら、偶々その巣に雀蜂が攻めていて、蜜蜂と戦っていたらしい。
蜜蜂と雀蜂の戦いは、蜜蜂が勝利し雀蜂の亡骸を手に入れた。
蜜蜂も数匹雀蜂に倒された様で、その亡骸も手に入れた二人は、蜂蜜を取るのも忘れて急いで工房へと入ったそう。
「サンチェスったら晩飯の肉も狩り忘れてたのよ? だから、その後私が取りに行ったんだから!」と、ニーチェが思い出したのかふくれっ面で抗議した。
「ごめんて! でも、そのお陰で一輪の蜜蜂仕様と二輪の雀蜂仕様の電動馬が完成したんだから!感謝してほしいわ!」
と、サンチェスが胸を張る。
蜜蜂を一輪にしたのは、その長さだった。体長が元々短く小さかった為、車輪を付けようとすると足りなかったのだ。
で、実験的に車輪を一つにして小さ目の魔石バッテリーを付けたところ、上手く走れた。
「最初は転ぶかと思ったけど、走ってる間はかなり安定してたのよ、小回りも効くし燃費も良かったの!だから、二台作れたわ!」と、嬉しそうにサンチェスが語る。
その件もあって、長さが蜜蜂よりも長い雀蜂は二輪になったんだそうだ。
蜜蜂と雀蜂を単騎の馬として扱った事により、量産が可能になり、少し街の貴族に売り付けたらかなり好評で、予約が殺到して来年までいっぱいなんだとか。
そのお陰で4人乗り昆虫型電動馬車の改造費が賄えたそうだ。
で、俺達に内緒で造ってびっくりさせてやろうと計画してた時に、アリサからヘルプの手紙が届いたそうだ。
そこへ風車を見たいと言うパウェル達を連れたユーリ達が合流し、丁度よいからって事で皆で王都へ観光がてら向かったそうな。
単騎の雀蜂仕様は、パウェルが大層気に入り、乗り回す内に欲しくなったそうで、急遽移動中に造って二台になったそうだ。
「しかし全然騒ぎにならなかったけどなぁ?」
大ダンゴムシの幼生の昆虫型電動馬車に、蜂系の単騎が四つも街道を爆走してたら、初見の人が見たら大パニックになる案件だ。王都にも騒ぎが聞こえて来てもおかしくない状況なのに、なんの噂も流れてこなかった。
だから、来ないものと思っていたからなぁ。
そう言うと、パウェルが「先触れを出して回ったからだよ婿殿」と、自慢気に言ってきた。
発案者はカーニャだったみたいだが、カーニャも身内なので自慢ではあるのだろう。
「先ず蜜蜂部隊が先々の野営予定場所や宿屋のある街々に先行して向かう、その後からなら昆虫型が通っても驚きはするだろうが、報告通りの馬車が来ただけだからな! 騒ぎなど起こるはずも無いのさ!」
昆虫型はバッテリーを改造した事で、容量も増えて尚且つ走りながらも充電出来る様になったので、途中で切れる事も無くなったそうだ。
雀蜂仕様を護衛兼攻撃部隊にした事で、途中の街道で襲ってくる盗賊にも対処でき、昆虫型の上にガトリングガンを備えた事で更に攻撃力も向上し、蹴散らしながら走ってきた様だ。
野営場所で単騎の蜂系は、昆虫型から充電させ、常に満タンを維持して来たそうだ。走りながら充電させる装置も無いので作りは簡単に出来たそうだ。
ガトリングガンは最初こそ普通の銃を使っていたが、連続で使用すると熱くなってしまい取扱が難しく成るので、単純的思考から銃身が幾つも有れば、何発撃っても熱くならないかも?っていう発想から試しに造って成功したのだそうだ。
で、固定だと馬車を回転させないと攻撃の幅が広がらない為、燃費も馬鹿みたいに消える事から、回して使える様に改造を施したらしい。
そのお陰で360度廻せる様になり、攻撃性能も向上、面白がったお義父さんが嵌まったそうな。
車内泊に拘らなければ、テントでも寝れる訳だし、単騎の蜂型でも野営は楽だったそうだ。
「だって荷物持たなくていーんだよ? すっごい楽だったよ!」というのは、マーク。
彼は食事係として付いてきたそうだが、初めての旅行だったのか楽しそうに話していた。
彼の常識だと普通だったらテントに調理道具も持って旅に出る。
魔力無しの場合、アイテムバッグは売ってしまってる場合もある為、旅は重い荷物と共にするのが普通なのだ。
それが、今回は蜂型に乗っての移動な上に、荷物は昆虫型に積める。なので、楽だったと言うわけだ。
まぁ、他の人にはアイテムバッグがあるから荷物を持つという考えは無いのだが、マークにはその考えが元々無い。
そこは暮らしてきた背景の違いだろうから、敢えて指摘はしないで、温かい目で皆頷いていた。
「よし、そろそろ寝よう。明日からの予定もあるだろうしな、取り敢えず見張りは二人で、残りは順番だ!」
そんな掛け声で、今夜は工場の三階にある部屋で寝る。
王国とエルフ族は友好的な関係ではあるが、敵対している貴族達がいる為、見張りを立てて各々寝る事にした。
見張りは昆虫型のガトリングガンが備えてある場所に二人でチームを組み、交代で行う事になった。
最初はお義父さんとユーリからだそうだ。俺がユーリと組もうとしたら、親子水入らずを邪魔するのか!と、酔ったお義父さんに言われたので、スゴスゴと諦めた。
まぁ、そのかわりだか何だか分からないけど、お義母さんのパウェルと組まされたので、少し怖い……。途中で寝る訳には行かないだろうから、雑魚寝だが床に寝転び目を瞑った。
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