異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる

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 ザケヘルが帝国から帰ってきた。
 細工師のドワーフと一緒に拠点に来たのだが、帝国の細工師も弟子と共に来たので、一気に人数が増えた。

 帝国のドワーフはムズガという名前で、息子が弟子になったらしく、ガドンとズドンという名前らしい。
 奥さんは亡くしてしまったそうだ。

 ザケヘルと一緒に居たドワーフは、城塞都市へと帰るらしく、地竜アニキに乗ってザケヘルと一緒に戻っていった。

 ムズガ達はこのまま暫くこの拠点で過ごすらしい。というか、俺が売った時計は作り出して売りに出るまで極秘扱いにするらしく、此方こちらの拠点で隠されながら作らせたいそうだ。

 ムズガ達の家は、世界樹の前の広場に作られる事になった。
 俺が訓練していた場所には、競馬場の様な楕円形のダートコースだけ残して、真ん中を耕し、畑になる様だ。
 滝の真下から対岸の湿地帯だけでは補えなくなって来たからだ。
 兎角ドワーフは飯を沢山食べるのだ。
 今現在で四人居て、更に三人のドワーフが増えた事で完全に食料が足りなくなってしまったお陰で、田畑を増やす事になったのだが、人手がガチで足りない。

 ザケヘルもこれからは頻繁に此方に来て寝泊まりするらしく、生活する場所も足りない。
 足りない尽くしでこのままだと詰むので、色々予定表を書き直す事になった。

 風車も止めずに稼働させ、電力も引き続き充電させる事にして、余剰電力を消費させる為と、軍資金が心許なくなってしまった為に魔導具を作り、それを城塞都市の外街の人々や、街の中の家庭にレンタルする事にした。
 買えばそれなりに値段はするので、冒険者くらいしか買えなかったランタン等を格安でレンタルすると、各家庭でも使われる様になり、夜でも明るい街になると領主にプレゼンしたのだ。

 その仲介をザケヘルに頼んだ。
 拠点に住むムズガ達の家賃代わりなので、マージンも取られない。
 それたとザケヘルが損にしか成らないと言うので、当座の食料を売ってくれる様に頼んだところ、もう一声とか言い出した。

 なので、人手の募集も頼むことになった。
 城塞都市には魔力無しの子供や成人したての若い新人冒険者で溢れている。
 その人等は過酷な生き方を今でもしてるので、声を掛ければきっと来てくれるだろう。
 此処には畑を耕してくれる魔力持ちも作物に水を撒ける魔力持ちも居ないので、普通に手仕事が増える。っとくれば魔力無しに仕事が増える訳で、食いっぱぐれる事もない。
 深い森が目の前にあるので、浅い森でもそれなりに獲物も取りやすい。
 城塞都市の様に、深い森へと足を運び強い獣しか狩れない状態ではないから、命の危険も少ないし、戦う訓練や基礎体力向上が出来る無料の運動場も完備している。

 住む家は後々用意するとしても、仕事は取り敢えず豊富なので。と、説明してほしいと頼んだ。

 人が増える事で問題になるのは、風呂やトイレ事情だろう。
 クリーンの魔法が頻繁に使えない以上、トイレや風呂も作る事になったのだが、風呂が何かを説明しなくてはならなかった。

 それと、トイレの使い方もだ。
 エルフ族はトイレでお尻を拭く時如何してるのか聞いたら、普通に紙で拭いていると言う事が分かった。
 つまり、紙を作る技術があるという事だ。
 硬い紙なら王国にもある。が、柔らかい紙を使う場所が無い為、エルフ以外は使った事は無かったらしい。

 なので、作り方を教えて貰いにユーリを連れてエルフ族の集落へ向かった。
 他の人達には、共同トイレを作って置いてもらう。
 滝から木製の水道管を通して、水洗トイレにして貰う為、一応設計図を書いて渡したら、直ぐに理解してくれた。
 流石弟子ちゃんズである。
 大変優秀で羨ましく思う。

 流した排泄物は、一度貯めてスライムに綺麗にして貰ったあと、田畑へと流れる様にした。
 エルフ族も同じ様にしてるらしく、貯水槽で貯めた後スライムに食べてもらうらしい。
 そして貯水槽の水は泉へは戻さず、他の場所へと流してる様だ。





 馬車がまだ直っていないので徒歩で向かう。
 向かいながらまるでデートの様に色々と会話しながら歩いて、ちょっと楽しかった。

 「ちゃんと教えてくれるだろうか?」
 と、俺が心配すると、大丈夫だろうという。
 ユーリが言うには、特に隠匿いんとくしている訳では無いので、多分教えてくれるだろうとの事だった。

 のんびり歩いたので少し時間が掛かってしまったが、明るい内に辿り着けた。

 「こんにちはー」

 と声を掛けると、すぐ様人が跳んで来てユーリだけ連れて行かれた。

 連れて行ったのは父親だった。

 パウェルの部屋へと通されて直ぐに
 「孫はまだか?」と、言われた。

 「そんなにすぐに出来ませんよ?ははは」と、誤魔化したが悪手だった様だ。

 俺の肩をガッシリと掴むと指が食い込み少し痛い。

 「既に侍女達を送り込んで数カ月は経つので、そろそろ腹が膨らんでてもおかしくない筈だが?」と、睨まれる。

 仕方なく正直にまだ手を出してませんと言うと、当然何故だ?と問われた。

 なので、拠点に住む人が増えて人手が足りず、田畑作り等に時間が取られてしまい、子種をばら撒く暇が無いと言う。
 ならば人手は貸してやると言って戦士を十人ばかり用意するというので、住む家が無いと言うと、「我等はエルフぞ? 住処など大木があれば問題ない」というので、家を作る為に大量に切ってしまい近くに寝れる様な大木がありませんと言ってしまった。

 すると目を見開いて怒るので、慌てて「侍女ちゃんズに監督して貰いながら切ってますから!」と、言い訳した。

 しどろもどろになりながら、パウェルと話をしていると、ユーリが着飾られて父親と一緒に部屋に入ってきた。
 最近作った服なので、持って帰れと言われたのだが、着ている服以外にも数着あるらしく、流石に邪魔になるとは言えず受け取った。

 「所で拠点にトイレを作ろうと思いまして……、それでそのトイレットペーパーの作り方を教えてもらえませんか?」

 と、訊ねると何故か大喜びし始めた。
 在庫が大量にあるらしく、それを捌けると思ったらしい。
 出来れば作りたいといったのだが、聴き入れて貰えず、仕方なく買う事に決まった。コレが地味に良い値段になってしまったので、代わりに灯りの魔導具をレンタルするという事で相殺する事にした。

 無駄に気を使って疲れたのでソロソロお暇しようと言うと、泊まっていけと父親が言い出した。

 娘ちゃんのユーリと離れたくないらしい。ならば仕方ないので、一泊……と言うと「……侍女達は連れてこなかったのか? ならば新しいのを用意しよう」とか、言い出した。

 それはちょっと困るので、一泊はやめてユーリを連れて隙を見て逃げ出した。

 帰り際、何故こんなに子供を作らせたいのかユーリに聞いてみると、最年少がユーリで、その後子供が出来ないらしく、孫の顔も見たいので早くしろって事らしい。

 「君や侍女ちゃんズと、もう少し時間をかけてゆっくりと向き合いたいんだけどなぁ……」
 「エルフの時間は長いので、ユックリとなると……百年くらいですか?」
 「……俺、死んでるよ?」

 そう言うと、やはり早急にお願いしますとユーリにまで言われてしまった。

 
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