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21【とあるピンクゴブリンの記憶】短めです。
しおりを挟む私はゴブリンの亜種。
名前は無い。
今日も今日とて雄を探して森を彷徨う日々。
数十年前に起こった繁殖期に雌を大量に手に入れるべく、私の部族はエルフの里を襲った。
私達には全く興味のない話だったけど、エルフの男は好きにして良いっていう言質をボスから頂けたので、俄然張り切って私達も聖戦に参加したわ。
その聖戦は始終優勢でボス達は大勢の雌を手中に治めたわ。
そして私達が雌に興味が無い事を良い事に、私達だけに周りを警戒する様に命令を出したのよ。
ボス達幹部は、エルフの根城を新しい住処にして繁殖に励み始めたの。でも私達ピンクゴブリンは、逃げ惑う男達を追い掛け回す事で手一杯だったのね?
だから途中から聖戦に参加してきた忌々しい竜騎士共が来ていた事に気が付かなかったのよ。
そのお陰で、油断しまくってた同胞達は竜騎士の力によって蹂躙され、敗戦が濃厚になってしまったの。
でも、私達ピンクゴブリンには関係ないばかりか、歓喜したわよ。
だって、エルフ何かよりも逞しい筋肉を持つ騎士が蜥蜴に乗って大量に現れたのよ?
そんなの歓迎するしかないじゃない?
逃げ惑うエルフなんて放っといて、目の前の筋肉を追いかけ始めた私達を見付けた竜騎士達も、私達に向かって来たの!
接近して抱きしめて抱擁しようとしたけど、堕竜達が邪魔するのよ。
近付く私達を容赦なくその脚で踏み潰し、大勢の仲間が亡くなったわ……。
それでもめげずに私は二人の筋肉をこの手に抱き、戦場を跡にしたからその後の戦況が如何なったかなんて知らないわ。
ただ、風の噂でボス共々燃え尽きたとは聞いたけどね。
あれから数十年間、私は二人の筋肉を愛でたわ。なのに、あの子達は長生きしなかったの……。
お尻から大量の血液を吹き出して直ぐに死んてしまったの。
あの時は悲しくて……本当に悲しくて虚しい日々を送ってた。
ついうっかり弱い人間から離れて獣達を愛でてしまっていたわ……。
でも流石に獣姦は良くないって気が付いたの。
彼らを失った心の隙間は未だに埋まらなかったけど、新しい一歩は踏み出さないと先には進めない! そう思ったから森での徘徊を再び始められたわ。
成長した私を見せてあげたいくらいよ!
そしたらお目当ての筋肉が直ぐ目の前を歩いてるじゃない!
その時私は生まれて初めて神様に感謝したわ。
一歩を踏み出せたご褒美をありがとう!
でも、その筋肉は私と目があった瞬間逃げたのよ。
追いかけっ子が好きみたいね。
私も嫌いじゃないから追いかけたわ!
でも、叫ぶ様な歓喜の声を上げて疾走する筋肉さんは、ずるい事に地竜に乗って逃げ始めたの!
ルール違反よね?
当然お仕置きが目当てなんだろうけど……さ?
地竜にも雄雌といるから、別に彼等でも良いのだけど……。今の私には、筋肉しか目に入ってなかったし、地竜って実は雄雌の違いが分かり辛い種族なのよね……。
地竜の違いはお腹を確認しないとわからないの……。
そこに、袋があれば雌。無ければ雄。って感じでね? 触らないと分からないのよ……。本当に不憫な生き物よね。
せめてぶら下げとけば分かりやすいのに……。
そんなこんなで、追いかけっ子を楽しんでいると、いつの間にか森を抜けたのね?
そしたら目の前に不思議な生き物が立ちふさがったのよ。
顔を見ると雌なのに、匂いは男なの。
でも、筋肉は無いし私のタイプではなかったのよ? それなのに、何か惹きつけるモノを感じた私は……。
服を脱がしてから、食べるかどうかを決めたわ。
そして、服に手を掛けようと腕を伸ばしたら……。
そこから先の記憶はないの。
御免なさいね……。
だから、これ以上は聞かれても困るわ。
ねぇ?そんな事より……ここが何処かソロソロ教えて下さらないかしら?
さっきからフワフワと体が浮いていて安定しないのよ……。
ねぇ? 聴いていますの? そこのア・ナ・タ♡
ちょっと私に掘られてみない?
そう言って迎えに来た天使の尻を追い掛けて、天上へと消えていった。
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