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十一話
しおりを挟む「人出が欲しい?」
最初の晩に行列が出来てしまい、泊り客も入り口から入れずに並ぶ羽目になったと閉店間際に聞かされた俺は、後日ダッズさんに人を雇いたいがどーしたら良いか聞きに行った。
勿論菓子折り(焼きたて食パン)も持参した。
日本で人を雇いたいなら募集が出来る会社と連絡取って簡単に面接して雇えるが、剣と魔法の世界ではどーしたら良いのかも分からない。
こんな事ならそれ系の小説なり漫画なり読んでおけば良かった。
どちらかというと俺はアウトドアが好きだったため、読む本はサバイバルについて書かれた物が多かったし、小説はハリポタくらいしか読んでない。
「それなら街に行って商業ギルドか冒険者ギルドを訪ねるといーよ」
両ギルドは門の入り口付近に出張所があり、冒険者が狩った獲物を捌いたりするのが冒険者ギルド、その肉や皮を買い取るのが商業ギルドなのだそうだ。
主な冒険者は狩りとった獲物を出張所に渡し解体されるまで待つか、自前の荷物持ちにやってもらって、そのまま商業ギルドに持っていくかするらしい。
冒険者に対して仕事を斡旋するのは冒険者ギルドだが、仕事の依頼を受けるのは商業ギルドなんだそうだ。
「ややこしいかな?」
そう言いながら笑うダッズさん
ダッズさんも街に用があったようで、馬車に乗って街へと向かっている。
その時にギルドについて教えてくれた。
人手を雇うなら商業ギルドで申請して、募集のチラシは冒険者ギルドにある掲示板に貼るらしい。
面倒くさいけど昔イザコザがあってそうなったらしい。
イザコザというのは、商業ギルドと冒険者ギルドが人や仕事の取り合いから喧嘩になり、暫く経済が止まってしまったからだそうだ。
喧嘩するくらいなら2つのギルドで一つのことをしろと、当時の王様に言われたらしい。
その王様がこの街に来たときに読まされた呪文を書いた人なのだそうだ。
既に他界して三百年は過ぎてる筈なのに今でも語り継がれている話なのだそうだ。
話を聞いていたらどうやらその王様は、千年前に王位に就いたらしい事が分かった。
他界したのは三百年前で王位に就いたのは千年前……
単純的に七百年間王様だった事になる。
流石にそれは信じなかったが歴史書が一応あるらしい。
ファンタジーな話で場を盛り上げるダッズさんと楽しく話をしていたら直ぐに街に付いた。
帰りも馬車で送ってくれるというので門前で待ち合わせ、どちらか早く用が終わったら、門前店の呑み屋で待つことになった。
両ギルドで仕事の報告や買い取りを終えた冒険者が通う店らしく、表から見る限りでも中々広そうだった。
ここまで広くなくて良いなぁと増やす予定の食事処を想像しながら通り過ぎた。
解体するからなのかやたら大きな倉庫がある方が冒険者ギルド
少し奇麗な建物で人の出入りが多いのか、入り口が広くなってるのが商業ギルド
建物を建てる為の人手と料理や食事を運ぶ従業員が欲しいと受付前の机で申請書を書く。
文字は読めるが書けなかった俺に魔女は結構親切に教えてくれた。
今ではすっかり守銭奴婆ぁになったが……。
最初の頃は別人の様にさえ思える。
申請書を渡して名前を呼ばれるまでの間、何となく昔の事を思い出していると
「タクミ様タクミ様、十二番窓口まで起こしください」
という声に頷いて向かう。
窓口は一番から三十番まである。
中々の多さだ。
それでも並ぶ程なので、この街はとても活気があるのだろう。
「申請書を拝見させていただきました。建築の人手と食事処の従業員と料理の出来る人でお間違いないですか?」
日本の役場のように中々丁寧な対応でホッとする。
「はい!出来れば建築優先でお願いします」
取り敢えず先に箱物を作らないと食事処の従業員を雇っても困る。
料理を教える事は出来るが、住む所も無いと困らせてしまうしな。
「畏まりました」
そう言って何やら書き込みながらブツブツと何かを唱えだした受付のお姉さん。
手元が光り始めると羊皮紙に文字が刻まれていった。
それをおおお~っとした顔で眺める。
三分程で書き終わるとクルクルと丸めて俺に手渡した。
「これを隣の冒険者ギルドにある掲示板に貼ってもらってください」
そう言って軽く頭を下げると、奥へと引っ込んでいった。
早速その羊皮紙を開き読んで確認する。
ちゃんと希望通りの事が書かれていた。
商業ギルドで申請する時に料金は請求されない。
掲示板に貼る時に請求されるそうだ。
どんな依頼でも一律銀貨五枚
日本円で五千円くらいになるらしい。
魔女は金勘定も出来ないと困るだろうからと通貨のこともちゃんと教えてくれた。
この街で流通してる貨幣は主に6つだった。
半銅貨十枚で銅貨一枚
銅貨十枚で銀貨一枚
銀貨十枚で大銀貨一枚
大銀貨十枚で小金貨一枚
小金貨十枚で金貨一枚
金貨100枚で大金貨一枚
である。
半銅貨は十円
銅貨は百円
銀貨は千円
大銀貨は一万円
金貨は十万円
大金貨は一千万円って感じだろうか。
大金貨は大きな仕入れなどの商人どうしでやり取りする時に使うらしい。
国と国とで取引する時に使うのは大陸金貨というらしい。
大陸金貨は生きていく中で特に関係ないからその時になったら覚えれば良いとして、詳しく教えてくれなかった。
先に覚えやすい方からって事なのだろう。
屋台などで使う貨幣は半銅貨か銅貨が中心らしく
値段は店によっても品物によっても変わるが、金貨等を見せると売ってくれない。
単純にお釣りを持ってないからだそうだ。
多くても銀貨までにしろと教わった。
銀貨でも嫌な顔をする店もあるし、大銀貨だと崩してから来いと怒られるらしい。
酒を提供する店や食事を食べる所では半銅貨はあまり使わない。
人数にもよるが、銅貨から大銀貨が主に使われている。
駆け出しの冒険者は報酬が銅貨で払われることの方が多く、銅貨五枚くらいで豪華な食事も食えるのだそうだが、儲けの半分が一食で消えるので、屋台で食べる事が多いらしい。
冒険者ギルドの掲示板に羊皮紙を貼る時に給料の話になり、相場の話をされた。
駆け出しが稼ぐ一日分が銅貨十枚から二十枚(銀貨二枚)前後
中堅で大銀貨数枚なのだそうだ。
なので、建築なら一日銀貨八枚~大銀貨一枚で雇ったらどうかとアドバイスを貰う。
中堅は来ないがランクの低い冒険者は集まりやすいと言われた。
ランクの低い者でも建築なら家の手伝いをしながら覚えた者も多くて素人はまず居ないから安心なのだそうな。
取り敢えず大銀貨一枚で雇う事にしたら、明日には店の方に集まるだろうから準備しといてと言われた。
早急に必要なので二十人程雇う事にする。
出来れば一週間以内で建ててしまいたいので、それ以上来ても構わないと伝えてギルドを跡にした。
食事処の従業員も同時に募集とは書いたが、料理ができる方で住み込み出来る方優先として、給料は応相談にして面接は十日後とした。
早急に必要なのは建築の人手なので後回しになるし、来てもらっても寝るところが無いのでどーしようもないのだ。
流石に外で寝泊まりしろとは言えないからな。
ギルドを出ると丁度ダッズさんも来たばかりだったらしく、そのまま馬車に乗って宿へと帰った。
帰ってからは日が暮れるまで木材を加工して、建材を纏める。
広さを考えると住み込みだしニ階建てが良さげだった。
なので、最初建てた宿より木材が多くなってしまった。
晩飯は宿に泊まってる人達だけにして、外の客は断った。
近日中に食事処を作るからと納得してもらった。
宿の隣を開拓して整地すると深夜になってしまったので、今日はもう寝る事にした。
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