【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

縮んだ背

「ねえ、変なこと聞くんだけどさ」
「うん、どした？」
「わたしって背が縮んだと思う？」
「え、どういうこと？」


　話しかけてきたのは、同僚のA子だった。いまはお昼休みの時間。自販機の前で珈琲を買っているところだった。


「そのまんまの意味。ね、どうかな」
「どうって」


　わたしは一歩引きさがって、小柄なＡ子の全身を頭からつま先まで見てみた。


「とくにそうは思わないけど。なに、縮んだの？」
「うーん、どうなんだろう。でもなんか、そんな気がして……」
「ダイエットしてる？　してたら体重が減ったから、そう思ったとかじゃない」
「ううん。体重は変わってないよ」
「じゃあ、どうしてそう思ったの？」
「それはね」


　A子が自身の足元を見たので、わたしも見た。片脚を少し上げて、ぶらぶらと振る。


「靴を見て。ちょっと揺れるでしょ」
「たしかに。足が小さくなったってこと？」
「それだけじゃないよ」


　今度は、両腕を少し広げて、前後に振った。


「手が袖に隠れてるでしょ。前はこうじゃなかった」
「てことは、体も小さくなったってこと？」
「たぶん……」


　A子は怯えていた。もしかしたら、自分は気づかないうちに縮んでいっているのかもしれないと。
　なんと声をかければいいだろう。背が丸まっているお婆さんの姿は、よく街中で見かけるけれど。


「気のせいじゃないのかなあ……」
「どうだろう……」
「病院には行った？」
「まだ行ってない。いますぐ行った方がいいかな」
「うーん。もうちょっと調べてからでもいいかも……。ベルトとかはどう？　そっちも前よりも小さめにしている？」
「ううん。ベルトは今まで通り」
「痩せたわけではない、か……」



【解説＆ヒントは↓をスクロール】
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　〈ヒント「ベルトだけ変わっていないということは……？」〉

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【解説】

　体が小さくなったのでは？　と怯える女性のお話です。どうして女性はそのように思ったのか、その根拠は「服や靴がぶかぶかになったから」というものです。たしかに、いつも着ていた服がぶかぶかになったら、縮んだと思うかもしれません。


　ですが、実際に縮んだわけではありません。おそらく女性は真っ先に身長を測ったことでしょう。それが以前のものと同じことだったからこそ、確信を持てなかったのです。もしも全身が縮んでいたら、ベルトもいつもよりきつく締めないといけないはずですが、こっちはそのままになっています。


　ということは、女性が小さくなったのではなく、服や靴が大きくなった、ということです。どうして大きくなったのでしょう。


　もしかすると、誰か別の、A子さんよりも体の大きい人が着たから、だとしたら……。


　ベルトの穴がそのままだったのは、ベルトを使わなくても大丈夫なほど──締める余裕がないほど体が大きかったとしたら。


　その人物は、こっそりとA子さんの部屋に侵入して、こっそりと身につけて楽しんでいたのかもしれませんね。