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ある日のこと、友人から私の携帯電話にとても短いメールが送られてきた。
『qr:w』
私はその意味が分からず、打ち間違いだろうとそのまま放置していた。しかしそれは間違いであった。その次の日、その友人は遺体で発見された。
今はもう使われていない立ち入り禁止の倉庫で、友人は手足を椅子に縛られた状態で亡くなっていた。死後、二、三日が経過していたらしい。
第一発見者は、近所に住む中学生数名。遊びで偶然そこを訪れた際に見つけたという。
ニュースでそれを知った数日後、警察がやってきて、私はいくつか質問を受けた。
〇〇さんに恨みを持つ人に心当たりはありませんか?
〇〇さんの身の回りで最近おかしなことはありませんでしたか?
〇〇さんとここ数日連絡はとられてましたか?
そこで私は例のメールを見せた。
彼らにもそのメールの意味は分からなかったようで、眉を寄せながら首を傾げていた。
「どういう意味でしょう」
「さあ……。ですが何か重要な意味があるのかもしれません。情報提供ありがとうございます」
そのあと警察は形式的な質問を一通りして、「何かわかったことがあれば連絡をください」と言って去っていった。
捜査の進展はテレビやネットの記事で知ることができた。
捜査線上には一人の容疑者が上がったものの、アリバイがあったとのことで現在も捜査は難航。行き詰まっているらしい。
友人は何を伝えたかったのだろう……。
そんなニュースのことを思いながら、仕事でキーボードを打っている時、私はあることに気がついた。
どうやら私は、とんでもない勘違いをしていたらしい。
【解説&ヒントは↓をスクロール】
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〈ヒント「キーボードで『q』『r』『:』『w』のキーを見てみましょう。そこにあるのは……」〉
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【解説(※ 以下の話は、小説形式の解説です。)】
キーボードを見つめていると、事件について様々な疑問が浮かび上がった。
私はそれらをゆっくりと、ひとつひとつ整理していく。
キーボード。まさしくこれが事件の真相に近づくためのヒントであり、犯人の誤算だ。
キーボードのそれぞれのキーには、ローマ字とひらがなの二種類が印刷されている。
送られてきたメールは『qr:w』の4文字。
このキーにあるひらがなを確認すると……「た、す、け、て」となる。
つまり友人は助けを求めていた……いや、違う。
そうではない。友人は助けなんか求めていない。
私が気づいた最初の疑問。それは、友人はどうやってこのメールを送ってきたのか、ということだ。
友人は手足を縛られた状態で発見されていたらしい。
ならばこんなメールを送れるわけがない。仮に送れたとして、いくつもの疑問点が残る。
なぜ暗号にしてあったのか。私はすぐにスルーしてしまったが、仮にすぐ読み解けたとして「助けて」だけで何をどうしてほしかったのだろうか。どうして電話で助けを求めなかったのか。このメールを送ると同時に警察にも助けを求めたのだろうか。
多くの疑問が浮かび上がる。そしてその疑問に私は直感的に答えを得てしまっている。
結論、このメールは友人が送ったものではない。犯人が友人になりすまして送ってきたものだ。そう考えると色々と辻褄が合う。
犯人が送ったのだから手足が縛られようが関係ない。
このメールが送られてきた時、友人はすでに死んでいたのだろう。メールの存在から、その時はまだ生きていたと思わせられれば、犯人にとっては都合がいい。アリバイを作ることができる。それが目的だ。
わざわざ暗号で送ってきたのもそれが理由だ。犯人は、遺体が早く見つかることを恐れていた。実際、あんなところにありながら遺体が比較的すぐに見つかったのも誤算だったに違いない。早くに見つかってしまうと死亡推定時刻に幅を持たせられなくなってしまう。警察はメールなんかよりも死体から得られた情報の方を優先させるだろう。三日前にすで死んでいた人間が、その次の日に助けを求めるメールを送っていたなんて、オカルト話にしては出来が悪すぎる。暗号にしておけばすぐには事件性を疑われない。
最悪読み解けたとしても、「助けて」だけではどうすることもできない。電話で助けを呼ばなかったのも、それが理由だ。
事件の容疑者は一人いる。だが死亡推定時刻を元に割り出された犯行時刻にアリバイがあったとのことで、警察はあと一歩踏み込めずにいるそうだ。
私はその日、早めに仕事を切り上げて警察署へと向かった──。
『qr:w』
私はその意味が分からず、打ち間違いだろうとそのまま放置していた。しかしそれは間違いであった。その次の日、その友人は遺体で発見された。
今はもう使われていない立ち入り禁止の倉庫で、友人は手足を椅子に縛られた状態で亡くなっていた。死後、二、三日が経過していたらしい。
第一発見者は、近所に住む中学生数名。遊びで偶然そこを訪れた際に見つけたという。
ニュースでそれを知った数日後、警察がやってきて、私はいくつか質問を受けた。
〇〇さんに恨みを持つ人に心当たりはありませんか?
〇〇さんの身の回りで最近おかしなことはありませんでしたか?
〇〇さんとここ数日連絡はとられてましたか?
そこで私は例のメールを見せた。
彼らにもそのメールの意味は分からなかったようで、眉を寄せながら首を傾げていた。
「どういう意味でしょう」
「さあ……。ですが何か重要な意味があるのかもしれません。情報提供ありがとうございます」
そのあと警察は形式的な質問を一通りして、「何かわかったことがあれば連絡をください」と言って去っていった。
捜査の進展はテレビやネットの記事で知ることができた。
捜査線上には一人の容疑者が上がったものの、アリバイがあったとのことで現在も捜査は難航。行き詰まっているらしい。
友人は何を伝えたかったのだろう……。
そんなニュースのことを思いながら、仕事でキーボードを打っている時、私はあることに気がついた。
どうやら私は、とんでもない勘違いをしていたらしい。
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【解説(※ 以下の話は、小説形式の解説です。)】
キーボードを見つめていると、事件について様々な疑問が浮かび上がった。
私はそれらをゆっくりと、ひとつひとつ整理していく。
キーボード。まさしくこれが事件の真相に近づくためのヒントであり、犯人の誤算だ。
キーボードのそれぞれのキーには、ローマ字とひらがなの二種類が印刷されている。
送られてきたメールは『qr:w』の4文字。
このキーにあるひらがなを確認すると……「た、す、け、て」となる。
つまり友人は助けを求めていた……いや、違う。
そうではない。友人は助けなんか求めていない。
私が気づいた最初の疑問。それは、友人はどうやってこのメールを送ってきたのか、ということだ。
友人は手足を縛られた状態で発見されていたらしい。
ならばこんなメールを送れるわけがない。仮に送れたとして、いくつもの疑問点が残る。
なぜ暗号にしてあったのか。私はすぐにスルーしてしまったが、仮にすぐ読み解けたとして「助けて」だけで何をどうしてほしかったのだろうか。どうして電話で助けを求めなかったのか。このメールを送ると同時に警察にも助けを求めたのだろうか。
多くの疑問が浮かび上がる。そしてその疑問に私は直感的に答えを得てしまっている。
結論、このメールは友人が送ったものではない。犯人が友人になりすまして送ってきたものだ。そう考えると色々と辻褄が合う。
犯人が送ったのだから手足が縛られようが関係ない。
このメールが送られてきた時、友人はすでに死んでいたのだろう。メールの存在から、その時はまだ生きていたと思わせられれば、犯人にとっては都合がいい。アリバイを作ることができる。それが目的だ。
わざわざ暗号で送ってきたのもそれが理由だ。犯人は、遺体が早く見つかることを恐れていた。実際、あんなところにありながら遺体が比較的すぐに見つかったのも誤算だったに違いない。早くに見つかってしまうと死亡推定時刻に幅を持たせられなくなってしまう。警察はメールなんかよりも死体から得られた情報の方を優先させるだろう。三日前にすで死んでいた人間が、その次の日に助けを求めるメールを送っていたなんて、オカルト話にしては出来が悪すぎる。暗号にしておけばすぐには事件性を疑われない。
最悪読み解けたとしても、「助けて」だけではどうすることもできない。電話で助けを呼ばなかったのも、それが理由だ。
事件の容疑者は一人いる。だが死亡推定時刻を元に割り出された犯行時刻にアリバイがあったとのことで、警察はあと一歩踏み込めずにいるそうだ。
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