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メッセージ
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その電話は、夕方の六時少し前にかかってきた。
『よう、隆信。元気にしてっか』
久しく聞いていなかった声は、記憶の中のものよりだいぶ嗄れていた。
「えっと……いや……。どうしたの? 急に電話してきて」
『いや何、声を聴きたいと思ってさ。それで、どうしてるよ最近』
「最近も何も、ずっと同じだよ。父さん……こそ、どうなんだよ」
『まあ、なんとかな。ただ暑くて敵わねえな』
「それは夏だからね。えっと……父さんだよね?」
『なにがだ』
「あ、いやなんでもない。それにしても、まさか声が聴きたいだけじゃないでしょ。なに、盆くらい顔を見せろってか」
『いや、いい。元気でやってるならな』
「なんなんだよ、ホント」
『もう六時か。じゃあな』
「あ、ちょっと」
通話は一方的に切れてしまった。
それは実家からの久しぶりの電話だった。
俺の母親は、十年前に癌で病死していて、だからいま父は実家で一人暮らしをしている。
父とはもう十数年も会っていない。電話で声を聴くのでさえもう数年前だ。急にどうしたのだろう。
俺はこれを機に、久しぶりに父に顔でも見せにいこうかと思ったのだが……。
父は死んだ。正確に言えば、死んでいた。あの電話がかかってくる約二時間前にだ。
俺はこのことを警察に訴えたが、警察は「本当ですか?」と、懐疑的だった。
自分自身、わからなくなっていた。
たしかに俺は実家からの電話に出て、父と会話したはずだ。電話番号が親機に表示されていたのを見て、不思議に思っていたものだった。どうして何年も連絡してこなかった父が電話をかけてきたのだろうと。あの番号は、間違いなく実家の番号だった。
俺の頭は、夏の暑さでどうにかなってしまっていたのだろうか? それともあれは、死んで霊となった父からの最後のメッセージだった、とでも言うのだろうか。
【解説&ヒントは↓をスクロール】
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〈ヒント「どうして主人公は、警察に訴えたのでしょうか?」〉
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【解説】
これはオカルト的なオチではありません。なぜ主人公はこの不可解な出来事を警察に話したのかでしょう。もし父親が死んだ時刻を病院、あるいは知人から聞いたのなら、その人物に訴えるのが普通です。
つまり主人公は、警察から父の死亡時刻を聞かされたのです。ではなぜ警察が死亡時刻を伝えるのでしょうか。事故に巻き込まれたか、それとも事件に巻き込まれたのか。
ことの真相は、父親は殺されていたのでした。
誰かが父親のふりをして電話をかけ、生きていると見せかけて父親の死亡時刻をずらそうと偽装工作したのでした。
『よう、隆信。元気にしてっか』
久しく聞いていなかった声は、記憶の中のものよりだいぶ嗄れていた。
「えっと……いや……。どうしたの? 急に電話してきて」
『いや何、声を聴きたいと思ってさ。それで、どうしてるよ最近』
「最近も何も、ずっと同じだよ。父さん……こそ、どうなんだよ」
『まあ、なんとかな。ただ暑くて敵わねえな』
「それは夏だからね。えっと……父さんだよね?」
『なにがだ』
「あ、いやなんでもない。それにしても、まさか声が聴きたいだけじゃないでしょ。なに、盆くらい顔を見せろってか」
『いや、いい。元気でやってるならな』
「なんなんだよ、ホント」
『もう六時か。じゃあな』
「あ、ちょっと」
通話は一方的に切れてしまった。
それは実家からの久しぶりの電話だった。
俺の母親は、十年前に癌で病死していて、だからいま父は実家で一人暮らしをしている。
父とはもう十数年も会っていない。電話で声を聴くのでさえもう数年前だ。急にどうしたのだろう。
俺はこれを機に、久しぶりに父に顔でも見せにいこうかと思ったのだが……。
父は死んだ。正確に言えば、死んでいた。あの電話がかかってくる約二時間前にだ。
俺はこのことを警察に訴えたが、警察は「本当ですか?」と、懐疑的だった。
自分自身、わからなくなっていた。
たしかに俺は実家からの電話に出て、父と会話したはずだ。電話番号が親機に表示されていたのを見て、不思議に思っていたものだった。どうして何年も連絡してこなかった父が電話をかけてきたのだろうと。あの番号は、間違いなく実家の番号だった。
俺の頭は、夏の暑さでどうにかなってしまっていたのだろうか? それともあれは、死んで霊となった父からの最後のメッセージだった、とでも言うのだろうか。
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〈ヒント「どうして主人公は、警察に訴えたのでしょうか?」〉
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【解説】
これはオカルト的なオチではありません。なぜ主人公はこの不可解な出来事を警察に話したのかでしょう。もし父親が死んだ時刻を病院、あるいは知人から聞いたのなら、その人物に訴えるのが普通です。
つまり主人公は、警察から父の死亡時刻を聞かされたのです。ではなぜ警察が死亡時刻を伝えるのでしょうか。事故に巻き込まれたか、それとも事件に巻き込まれたのか。
ことの真相は、父親は殺されていたのでした。
誰かが父親のふりをして電話をかけ、生きていると見せかけて父親の死亡時刻をずらそうと偽装工作したのでした。
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