46 / 47
急章
過去の記憶
しおりを挟む
種族としての魔法使いは極めて長命だ。
私、時雨玲沙は何百年もの時を生きてきた。
まだ魔法使い生の半分にも満たないその時は私にとって長すぎた。
人間たちに正体がバレないよう自らの力で創った世界でひっそりと暮らし、魔法の実験を行う日々。
私はそんな生活に飽きてきていたのだ。
しかし、その飽きはある出来事によって完全になくなってしまった。
ある日の朝、私がいつも通り実験の素材を採りに近くの森を散策していると、一人の男が道で倒れているのを発見した。
私は驚いてその男の方へ駆け寄った。
「ちょっと!? 大丈夫?!」
男は苦しそうにしていた。
この世界に人間が入ってくることはあまり珍しくないが、そのどれもが、骨の状態で見つかるため、生きている人間に出会うのは極めて稀だった。
ただ、もうすぐ死ぬかもしれないが。
なんせこの世界に入る条件は死にかけることだからだ。
死と生の幻想的な曖昧さがこの世界を創っているのだ。
「まぁ大丈夫ではなさそうね」
私は苦しむ男を一旦自分の家まで運ぶことにした。
別に、助けようとは思っていない。
ただ、今作っている薬を試してみようと思ったからだ。
その薬は、思考実験上では不死の薬のはずである。
もしかしたら、男は助かるかもしれない。
私は自室から、タツナミソウやらなんやらを混ぜて調合した薬を持ってきてそれを男に飲ませた。
すると、最初の方は男はもがき苦しんだがしばらく経つと動きが完全に止まり、それ以上動かなくなった。
「死んじゃったかしら」
私は男の生死を確認する。
男の心臓は脈を打っていて、平気だった。
自分からしておいてなんだが私はホッと一息ついた。
それから、一時間程度経つと、男はさっきのが嘘かのように回復していた。
どうやら実験は成功したらしい。
しかし、これは後から気づいたことなのだが、この薬には思わぬ副作用があった。
それは、好きになった人物を自分もろとも死に追いやるという呪いのような恐ろしいものだった。
やはり不死の薬という禁忌の薬を作った事によって神の怒りを買ったのだろうか。
男は八雲皐月と名乗った。
私はこの男の行く末を見守ることにした。
私、時雨玲沙は何百年もの時を生きてきた。
まだ魔法使い生の半分にも満たないその時は私にとって長すぎた。
人間たちに正体がバレないよう自らの力で創った世界でひっそりと暮らし、魔法の実験を行う日々。
私はそんな生活に飽きてきていたのだ。
しかし、その飽きはある出来事によって完全になくなってしまった。
ある日の朝、私がいつも通り実験の素材を採りに近くの森を散策していると、一人の男が道で倒れているのを発見した。
私は驚いてその男の方へ駆け寄った。
「ちょっと!? 大丈夫?!」
男は苦しそうにしていた。
この世界に人間が入ってくることはあまり珍しくないが、そのどれもが、骨の状態で見つかるため、生きている人間に出会うのは極めて稀だった。
ただ、もうすぐ死ぬかもしれないが。
なんせこの世界に入る条件は死にかけることだからだ。
死と生の幻想的な曖昧さがこの世界を創っているのだ。
「まぁ大丈夫ではなさそうね」
私は苦しむ男を一旦自分の家まで運ぶことにした。
別に、助けようとは思っていない。
ただ、今作っている薬を試してみようと思ったからだ。
その薬は、思考実験上では不死の薬のはずである。
もしかしたら、男は助かるかもしれない。
私は自室から、タツナミソウやらなんやらを混ぜて調合した薬を持ってきてそれを男に飲ませた。
すると、最初の方は男はもがき苦しんだがしばらく経つと動きが完全に止まり、それ以上動かなくなった。
「死んじゃったかしら」
私は男の生死を確認する。
男の心臓は脈を打っていて、平気だった。
自分からしておいてなんだが私はホッと一息ついた。
それから、一時間程度経つと、男はさっきのが嘘かのように回復していた。
どうやら実験は成功したらしい。
しかし、これは後から気づいたことなのだが、この薬には思わぬ副作用があった。
それは、好きになった人物を自分もろとも死に追いやるという呪いのような恐ろしいものだった。
やはり不死の薬という禁忌の薬を作った事によって神の怒りを買ったのだろうか。
男は八雲皐月と名乗った。
私はこの男の行く末を見守ることにした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説


甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる