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急章
終止符
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僕は気絶している男を横目に、早急に木陰の部屋まで歩いた。
あまりパワーに自信がある方ではないが、火事場の馬鹿力というやつか、少しやりすぎたようだ。
「おい木陰! 大丈夫か?!」
部屋に入るや否や、すぐにそう言った。
幸いにも、木陰は口をガムテープで、四肢をロープで縛られているだけで、外傷はなかった。
あの男は木陰を人質にするつもりだったのだろうか。
そんな思考が過るが、僕はとりあえず割と苦しそうにもがいている木陰を解放した。
「だ、大丈夫ですか?!?! 皐月さん!!」
ガムテープを剥がすとすぐにそんな心配の声が飛んできた。
「あぁ。大丈夫だよ」
「ほ、本当ですか?! 背中から血が滴っていますよ?!」
僕は背中を触った。
どうやらまだ傷口が完全に塞がっていないようだ。
最近、怪我をしていない所為か、回復スピードが遅くなっている。
「まぁ背中からグサッと刺されただけだ。でも、傷口は塞がりかけている。……今まで黙っていたが、僕は不老不死なんだ」
衝撃的な展開が相次いだためか、木陰の動きが時が止まったかのように静止した。
「混乱しているだろうが、一旦外に出よう。あまりここに居るとアイツが起きてしまう」
当分、起きてくる気配はないが、この場所はあまり居心地がいいとは言えなくなっていた。
そうして、僕たちは家を出た。
僕たちはあの公園にやってきていた。
ここは人気が少ない。
そのため、踏み入った話もできる。
故に僕はこの場所を選んだ。
「どうだ?? 少しは思考が整理できたか??」
優しい川のせせらぎが心を落ち着かせる。
僕は川沿いに設置されている柵にもたれながらそう言った。
「いえ、全然そんなことはありません。……ただ、皐月さんは本当に不老不死なんですね。あの出血量でこうして平然と立ってるんですから」
「それが理解できれば十分だ。……さて、この場所は僕と木陰が出会った場所だが、どうしてこの場所に来たか判るか??」
「……人気が少ないからですか??」
「それもあるが、僕がここに来た本当の理由は――」
僕はこの先の言葉を紡ぎたくなかった。
しかし、紡がなければ僕は玲沙が言った通り、同じ結末を歩むことになる。
あの借金取りのおかげで、不老不死ということがバレてしまった今、この言葉を紡ぐ理由なんていくらでも考えつく。
つまり今が運命の分岐点なのだ。
「この関係に終止符を打つためだ」
「えっ??」
木陰がそんな素っ頓狂な声を洩らした。
当然の結果だろう。
木陰は何故僕がそんなことを言ったのか理解できていないだろうから。
「言った通り、僕は不老不死なんだ。それが何を意味するかと言うと、僕と一緒にいると危険が及ぶってことだ。今回みたいに不測の事態で不老不死がバレることがあると判った。僕は木陰を危険な目に遭わせたくはない」
嘘だった。
本当は、木陰にこれ以上の感情を抱いてしまわないようにするためだ。
また大切な人を亡くしてしまわないように。
「嫌です! だって私は……私はッ!!」
木陰の目からは涙が溢れていた。
僕は木陰にその言葉の先を言わせないように彼女の口を塞いだ。
「それ以上は言うんじゃあない」
木陰は暫くの間、何かを言っていたが、疲れたのか気を失ってしまった。
「ちょっとやりすぎじゃないかしら??」
不意に、背後からそんな声が聞こえた。
そういえばここは幻想世界に近いんだったか。
僕は木陰を両手で抱えて振り返った。
「玲沙、お前にちょっと頼みがあるんだ」
「アンタ、泣いてんの??」
気付かなかったが僕の頬を涙が伝っていた。
「まぁ、いい決断だと思うわ。後は私に任せなさい」
あまりパワーに自信がある方ではないが、火事場の馬鹿力というやつか、少しやりすぎたようだ。
「おい木陰! 大丈夫か?!」
部屋に入るや否や、すぐにそう言った。
幸いにも、木陰は口をガムテープで、四肢をロープで縛られているだけで、外傷はなかった。
あの男は木陰を人質にするつもりだったのだろうか。
そんな思考が過るが、僕はとりあえず割と苦しそうにもがいている木陰を解放した。
「だ、大丈夫ですか?!?! 皐月さん!!」
ガムテープを剥がすとすぐにそんな心配の声が飛んできた。
「あぁ。大丈夫だよ」
「ほ、本当ですか?! 背中から血が滴っていますよ?!」
僕は背中を触った。
どうやらまだ傷口が完全に塞がっていないようだ。
最近、怪我をしていない所為か、回復スピードが遅くなっている。
「まぁ背中からグサッと刺されただけだ。でも、傷口は塞がりかけている。……今まで黙っていたが、僕は不老不死なんだ」
衝撃的な展開が相次いだためか、木陰の動きが時が止まったかのように静止した。
「混乱しているだろうが、一旦外に出よう。あまりここに居るとアイツが起きてしまう」
当分、起きてくる気配はないが、この場所はあまり居心地がいいとは言えなくなっていた。
そうして、僕たちは家を出た。
僕たちはあの公園にやってきていた。
ここは人気が少ない。
そのため、踏み入った話もできる。
故に僕はこの場所を選んだ。
「どうだ?? 少しは思考が整理できたか??」
優しい川のせせらぎが心を落ち着かせる。
僕は川沿いに設置されている柵にもたれながらそう言った。
「いえ、全然そんなことはありません。……ただ、皐月さんは本当に不老不死なんですね。あの出血量でこうして平然と立ってるんですから」
「それが理解できれば十分だ。……さて、この場所は僕と木陰が出会った場所だが、どうしてこの場所に来たか判るか??」
「……人気が少ないからですか??」
「それもあるが、僕がここに来た本当の理由は――」
僕はこの先の言葉を紡ぎたくなかった。
しかし、紡がなければ僕は玲沙が言った通り、同じ結末を歩むことになる。
あの借金取りのおかげで、不老不死ということがバレてしまった今、この言葉を紡ぐ理由なんていくらでも考えつく。
つまり今が運命の分岐点なのだ。
「この関係に終止符を打つためだ」
「えっ??」
木陰がそんな素っ頓狂な声を洩らした。
当然の結果だろう。
木陰は何故僕がそんなことを言ったのか理解できていないだろうから。
「言った通り、僕は不老不死なんだ。それが何を意味するかと言うと、僕と一緒にいると危険が及ぶってことだ。今回みたいに不測の事態で不老不死がバレることがあると判った。僕は木陰を危険な目に遭わせたくはない」
嘘だった。
本当は、木陰にこれ以上の感情を抱いてしまわないようにするためだ。
また大切な人を亡くしてしまわないように。
「嫌です! だって私は……私はッ!!」
木陰の目からは涙が溢れていた。
僕は木陰にその言葉の先を言わせないように彼女の口を塞いだ。
「それ以上は言うんじゃあない」
木陰は暫くの間、何かを言っていたが、疲れたのか気を失ってしまった。
「ちょっとやりすぎじゃないかしら??」
不意に、背後からそんな声が聞こえた。
そういえばここは幻想世界に近いんだったか。
僕は木陰を両手で抱えて振り返った。
「玲沙、お前にちょっと頼みがあるんだ」
「アンタ、泣いてんの??」
気付かなかったが僕の頬を涙が伝っていた。
「まぁ、いい決断だと思うわ。後は私に任せなさい」
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