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急章
借金取り
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玲沙との会話が終わり、僕は玲沙に家から近い場所まで送ってもらい、帰路についていた。
直接家まで送ってもらわなかったのは思考を整理したかったからだ。
ちょっとした散歩のつもりだったのだが、辺りはすっかり
暗くなり、街灯なしでは何も見えない程になっていた。
僕は薄暗い明かりを頼りに道を歩いていた。
冷たい風が、僕の頭を冷静にさせる。
考え事にはもってこいの夜だった。
しばらく、のんびり歩いているとやがて僕は家に着いた。
僕は家の鍵をポケットから取り出し、それを鍵穴にさして回そうとした。
そこで僕は違和感に気付いた。
「鍵が開いている……」
木陰が何処かに一度出かけて鍵を閉め忘れたのだろうか。
僕はそう考えていつも通り家に入り、リビングまで向かった。
そして、何故か付いていないリビングの照明を付けようとした。
刹那、ザシュッという肉が切られる気持ち悪い音と共に僕の背中に想像を絶する程の鋭い痛みが走った。
久々に経験した痛みに僕は前に倒れてしまった。
「……っぐ……」
突然の出来事に、思考が追いつかない。
激しい痛みに意識が飛びそうになるが、なんとか保っていた。
どうやら僕は刃物か何かで刺されたらしい。
「安心しろよ。急所は外している」
背後から僕を刺したやつの声が聞こえてきた。
その声に僕は聞き覚えがあった。
「お前は……いつぞやの……借金取りか」
「覚えていたのか。そうだ。久々だな」
背後の男の正体は木陰の借金取りだった。
「なんの用だ……木陰は……無事なのか??」
「ああ。傷一つついてないぜ。……なんの用か俺に訊くのは愚問ってやつじゃあないのか??」
「借金は全部返したはずだ」
「確かに受け取ったよ。一括で」
血がドボドボと溢れ、周囲に鉄の匂いが充満している。
僕は傷口を押さえて少しでも出血を抑えようとした。
「だがそれがいけなかった。あんな大金見せられたら誰だって目が眩むものさ。……だから俺は今ここにいる。平たくいえば強盗だな。割と綿密に計画を立てて来たんだ。さあ、金の場所を言いな! そうすりゃあ、命は見逃してやる」
「あぁそうか。つまりお前は僕が金持ちだと思ったのか。僕が一括で借金を返済した所為で。どうりでスッと返せたわけだ」
「小言はいいから、さっさと金の在処を言え!! 速くしないとお前が死ぬぞ??」
「この程度で死ねるもんなら死んでみたいな」
僕は背中を押さえながら起き上がった。
もちろん、背中に激痛が走った。
しかし、僕は相手に対してニヒルとした笑みを浮かべ、余裕を見せた。
「な、なんで立ち上がれるんだ?! 致命傷ではないが、軽傷でもないはずだぞ!?」
「僕を殺せるのは女だけだ」
僕は困惑している男に強烈な蹴りをかました。
男は油断していた所為か、もろにそれを喰らい、背後に吹っ飛ぶ。
「生憎と、僕は不老不死なんでね」
直接家まで送ってもらわなかったのは思考を整理したかったからだ。
ちょっとした散歩のつもりだったのだが、辺りはすっかり
暗くなり、街灯なしでは何も見えない程になっていた。
僕は薄暗い明かりを頼りに道を歩いていた。
冷たい風が、僕の頭を冷静にさせる。
考え事にはもってこいの夜だった。
しばらく、のんびり歩いているとやがて僕は家に着いた。
僕は家の鍵をポケットから取り出し、それを鍵穴にさして回そうとした。
そこで僕は違和感に気付いた。
「鍵が開いている……」
木陰が何処かに一度出かけて鍵を閉め忘れたのだろうか。
僕はそう考えていつも通り家に入り、リビングまで向かった。
そして、何故か付いていないリビングの照明を付けようとした。
刹那、ザシュッという肉が切られる気持ち悪い音と共に僕の背中に想像を絶する程の鋭い痛みが走った。
久々に経験した痛みに僕は前に倒れてしまった。
「……っぐ……」
突然の出来事に、思考が追いつかない。
激しい痛みに意識が飛びそうになるが、なんとか保っていた。
どうやら僕は刃物か何かで刺されたらしい。
「安心しろよ。急所は外している」
背後から僕を刺したやつの声が聞こえてきた。
その声に僕は聞き覚えがあった。
「お前は……いつぞやの……借金取りか」
「覚えていたのか。そうだ。久々だな」
背後の男の正体は木陰の借金取りだった。
「なんの用だ……木陰は……無事なのか??」
「ああ。傷一つついてないぜ。……なんの用か俺に訊くのは愚問ってやつじゃあないのか??」
「借金は全部返したはずだ」
「確かに受け取ったよ。一括で」
血がドボドボと溢れ、周囲に鉄の匂いが充満している。
僕は傷口を押さえて少しでも出血を抑えようとした。
「だがそれがいけなかった。あんな大金見せられたら誰だって目が眩むものさ。……だから俺は今ここにいる。平たくいえば強盗だな。割と綿密に計画を立てて来たんだ。さあ、金の場所を言いな! そうすりゃあ、命は見逃してやる」
「あぁそうか。つまりお前は僕が金持ちだと思ったのか。僕が一括で借金を返済した所為で。どうりでスッと返せたわけだ」
「小言はいいから、さっさと金の在処を言え!! 速くしないとお前が死ぬぞ??」
「この程度で死ねるもんなら死んでみたいな」
僕は背中を押さえながら起き上がった。
もちろん、背中に激痛が走った。
しかし、僕は相手に対してニヒルとした笑みを浮かべ、余裕を見せた。
「な、なんで立ち上がれるんだ?! 致命傷ではないが、軽傷でもないはずだぞ!?」
「僕を殺せるのは女だけだ」
僕は困惑している男に強烈な蹴りをかました。
男は油断していた所為か、もろにそれを喰らい、背後に吹っ飛ぶ。
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