僕は人を好きになれない

杜鵑花

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急章

上京のような状況

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 少しの間、そうしながら休憩し、やがて、結論がでないという結論に至ったところで、再び歩き出した。
さっきまではただ適当に歩いていたが今度はちゃんと目的地があった。
それは、愛しの我が家である。
そろそろ今日の散歩はこのぐらいにしようと思ったのである。
しかし、歩き出して数メートルのところで、僕は自分がとんでもなく大きな問題を抱えているという事実に気付いたのだ。

「はて、ここは何処だろう」

そう、迷子になったのである。
あまり知らない都会を適当に歩いていたら迷っていたのだ。
誰かに話したら間違いなく即答で自業自得と言われるだろうこの行動に、僕は自身の先見性のなさを確認した。
その場の気分で動くのはよくないと心の底から理解した。
僕はポケットからスマホを取り出そうとする。
だが、その手は虚無を掴んだ。
それが何を意味するのかがわかったと同時に血の気が引いていくのを感じた。

「家においてきたんだった……」

軽い散歩だからとか考えてスマホを仕事部屋の机上に置いたあの頃の自分を恨んだ。
ただ、そんなことをいつまでも続けていても無意味なので僕は思考を切り替えることにした。

「さ、さて、僕はこの状況をどうすればいいんだ??」

うまく頭が回らず、独り言の数がいつにもまして増えた。
僕はとりあえず深呼吸をすることにした。

「すぅ……はぁ」

何度かそれを繰り返し、ある程度落ち着きを取り戻すと、改めて解決策を考え始めた。

「立ち止まっていても……仕方ないか」

しばらく思考したが、何も案が出てこなかったため、ひとまずは歩いてみて、既視感があるものがないか探してみることにした。
もしあったらそれを目印に帰れるかもしれない。
まあ、可能性は限りなく低いかもしれないが。
後悔は行動の後に立つと聞くし、行動をしないと何も起こらないだろう。
そう考えて、僕はまた足を動かし始めた。
時間が経つに連れ、周囲の風景が見慣れないものから、さらに見慣れないものへと変化していった。

「大都会だな」

無意識の諦めなのか自暴自棄になっているのか、僕は暢気にそんなことをポツリと溢した。
その時、不意に隣に気配が現れた。
そこら辺にいる有象無象とは明らかに違う変わった気配だった。
驚いて僕は反射的にその方向を見る。
そこには、僕をこんな状況に陥れた張本人が居た。
よく考えると、このような芸当ができるのはコイツしか居なかった。
しかし、僕にはコイツの動機がわからなかった。
故に僕は目の前の奴にこう尋ねた。

「どういうつもりだ?? 玲沙……」


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