僕は人を好きになれない

杜鵑花

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急章

帰り

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 次の日、なんとか無事に予定通り起きれた僕たちは、昨日まわれなかった分の観光を済ませ、多少疲れもあるが、楽しい気分のまま帰りの電車に乗っていた。
家がある街に近づくごとに車内に乗っている客が減っていく。
行きは結構賑やかだったが帰りは蓄積した疲労の所為か静まり返っていた。
不意に、肩が何かが乗っかったように重くなった。
僕は少し驚いたが、慎重にその方向を見る。
僕の肩には眠っている木陰の頭が乗っていた。

「気持ちよさそうに寝てるし、起こすのも酷だよな」

僕は木陰を寝かせておくことにした。
そのままの状態でしばらく座っていると、僕にも睡魔がやってきた。
僕は必死にそれに抗ったが打ち勝つことはできず、僕の意識は闇の中へ落ちていった。


 電車のアナウンスが言った自分の街の名前に反応して僕は眠りから覚めた。
目をこすりながら軽く伸びをする。
木陰はまだ眠っているようだ。
アナウンス後、少ししてから電車が減速を始めた。
僕は少し思考して、木陰を担いだ。
ちょうどいいタイミングで、プシューと電車のドアが開く。
僕は木陰を担いだままその見慣れた駅に降りた。
重いとは思わないが、溜まっていた疲労の所為か中々にキツい。
しかし、いつまでも駅に滞在するわけにもいかないので僕は歩き出した。

「はぁ、はぁ……このままじゃあ道中で体力が空になって倒れてしまう……」

僕はしばし考え、やがて苦渋の決断を下した。

「仕様がないな……を使うしかないか」

そうと決まると、僕は住宅街とは明らかに逆方向を向いて歩み始めた。
そして、人気のないところに行くと、そこにあった綻びを見つけ、その中に入った。

「さて、なんとか幻想世界に来れたものの、これからどうしようか」

僕には二つの選択肢があった。
一つは、このまま家の方まで歩いていくというもの。
もう一つは、玲沙を見つけて家まで送ってもらうというものだ。
僕はここの綻びを使ってこっちに来ることがほぼないため、現在位置はわからない。
体力が限界に達しているため、できるだけ体力を使わずにいくほうがいい。
こっちに来てしまった以上、木陰を起こすわけにもいかないし、どうしようかと僕は悩んでいた。

「せめて現在位置が特定できたらな……」

こっちの世界の森の風景は何処で見ても一緒のため、位置の特定は難しい。
僕は休憩も兼ねてその場でしばらく考え込んだ。
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