僕は人を好きになれない

急章

京都旅行初日

　案外、旅行について計画立てるのは楽しく、当日までの時間は瞬く間に過ぎていった。
そして、僕たちは今、京都駅構内に居た。
ゴールデンウィークということもあってか駅構内には人が溢れている。
僕たちは、人々が生み出す喧騒を聞きながら、人混みをかき分けて迷宮のような駅を彷徨していた。。
しばらく、そうして歩いていると、ようやく人工の冷たい光ではなく、外の世界の温かい自然光が見えてきた。

「さすがは都会といったところでしょうか、ものすごい人の数でしたね」

外の新鮮な空気を吸いながら、僕たちは駅付近のベンチで休憩していた。

「田舎住みはやっぱり、人混みには慣れれないな」

「そうですよね。……さて、少し休んで体力も戻ってきたことですし、観光でもしますか？？」

「そのために旅行に来たんだしな。……じゃあ行くか」

僕はベンチから立ち上がり、軽く伸びをした。
そして、ポケットからスマホを取り出して計画していた場所までの地図を検索する。
周囲を見渡すと、僕たちが住んでいる田舎街とはまったくの別世界と思えるような景色が広がっていた。
地図アプリを見て目的地への方向を確認すると、僕たちはその異世界を歩き出した。


　日が傾き、京都市内が黄金色に照らされ始めた頃、僕たちは今日宿泊する予定の宿に到着していた。
チェックインを済ませ、その宿の予約していた部屋まで案内されるとすぐに僕は倒れるように横になった。

「あぁ、今日は楽しかったが疲れたな」

僕は身を翻し、大の字になってそう言う。

「そうですね。今日は足を酷使しましたね。その所為で、足が痛いです」

木陰が苦笑しながら言った。

「奇遇だな。僕もだ。……まあ、この部屋に付いている露天風呂に入ったら治るさ」

「……私はいいんですけど皐月さんはよかったんですか？？　私と部屋が一緒で」

「いいんだよ。家族だし。別に何も思うことはないよ」

「それは私に魅力がないってことですか？？」

「そういうことを言っているわけじゃなくてだな……」

「ふふっ、冗談ですよ」

心なしか、いつもと木陰の雰囲気が違うような気がする。
旅行効果なんだろうか。

「……そんなことより、どっちが先に風呂に入る？？」

「私は別にどっちでもいいですよ」

「じゃあ僕が先に入らせてもらうよ」

順番に、特に意味があるとは感じていないが僕が先に入ることになった。
僕は脱衣所で服を脱ぎ、露天風呂に通じている扉を開けた。
そこには、想像していたよりも何倍も美しい景観が広がっていた。