僕は人を好きになれない

杜鵑花

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急章

平安への提案

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 あれから特にこれといってトラブルが起こることもなく、時間がまるで刹那のように過ぎていった。
暇を持て余していると時間の経過を異様に早く感じることがある。
それは、人間が生み出した時間という概念の曖昧さ故である。
夏休みが八月をこえると一瞬にして終わったと錯覚するのもその所為だろう。
そんな妙なことがふと頭に浮かんだのは今日がゴールデンウィークの初日だからだろうか。
そんな思考をしながら、僕がいつも通り適当にソファでテレビで昼のバラエティ番組を見ながら暇をつぶしていると、不意に一緒にテレビを見ていた木陰が、とある提案をしてきた。
その提案はちょうど今、放送されている旅行のおすすめスポット十選というトピックに関係するもので、ゴールデンウィークには誰もが行きたいと思うようなものだった。

「何処かに旅行に行きませんか??」

「随分と唐突だな。冗談かそうじゃないかのギリギリのラインだ」

「冗談じゃあないですよ。こういうテレビを見ているとつい感化されてしまって」

「その気持ちはわからんでもないが、旅行には色んな計画が必要だからな……『思い立ったが吉日』が成り立たないんだよな」

「ゴールデンウィーク中にってのも厳しいですか??」

「……それなら、なんとかなるかもな。なんせ、連休は始まったばっかだしな」

一日二日さえあればある程度の計画や準備ぐらい容易にできるだろう。
お金だけはあるしな。

「じゃあ、行ってみるか?? 家族旅行ってやつに」

僕は自分でもわかるぐらい怠惰な性格だが、旅行は嫌いじゃない。
だからこそ木陰のその提案に乗ることにした。

「そうですね! 何処に行きますか?! テレビでは北海道が挙げらてましたけど」

見るからに、木陰のテンションが上がった。
旅行となるとテンションが上がるのはどうやら全人類共通のようだ。

「北海道か……できれば飛行機を使わずに行ける場所がいいな。どうしても苦手なんだ」

前に一度だけ、旅行に行くときに飛行機を使ったことがある。
あの揺れだけは二度と味わいたくない。

「そうなんですか……だったら京都とかはどうですか??」

「京都か……いいな。そこなら飛行機を使わずに行けるし。それに、僕は洋よりも和が好きだからな」

「じゃあ、旅行の行き先は京都府で決まりでいいですか??」

「ああ、異論はない」

「じゃあ次は宿やらなんやらを決めましょうか!」

そうして、僕たちは多少苦戦しながらも、順調に旅行のプランを組み立てていった。
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