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破章
常談みたいな冗談
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あの後、これといって変わったこともなく僕たちは店を出ていた。
「ねぇ、あの人間は危険分子に違いないわよね??」
「ああ。少なくとも、人外にとっちゃあれ以上に恐ろしい人間は居ないんじゃないか?? ある程度の権力も資産もあるようだし」
彩理はあれでも一校のトップだ。
その気になれば生徒を巻き込むようなこともできるだろう。
「じゃあ……殺すべきかしら」
殺意のようなものが込められたその言葉に、僕は少したじろんでしまう。
「おいおい、いつからそんなに野蛮になったんだ??」
「全然野蛮じゃないわ。とても合理的な手段でしょ?? 別にあの人間が死んでも私は困らないし」
「お前は困らなくても木陰が困るんだ! 校長が殺されたらあの学校がどうなるかわかったもんじゃない。それに、後始末が面倒だろ??」
「それなら不審者に殺されたってことにしたらいいじゃない。最近、この街に出没するらしいわよ??」
「お前ってやつは……」
「まあ、冗談よ。そんなことするぐらい私が野蛮だったらアンタはこの世に居ないでしょうね」
玲沙のまったく笑えない冗談に僕は無意識にため息を溢した。
その時、僕の頭に冷たい液体が当たった。
「雨か……」
「そうみたいね。……大降りになる前に私は向こうに戻るわ。あっちは晴れてるからね」
「そうか。……またな」
「またね。……あ、そうそう、不審者の話は冗談じゃないからアンタも気を付けてね」
それだけ言い残すと玲沙は空間に飲まれていった。
徐々に、地面の色が変わる速度が速くなってきている。
僕は足早に我が家に帰ることにした。
「ただいま」
木陰は帰ってきていないと知りながらも僕はそう言って家の中に入った。
僕はリビングに入るとすぐに洗濯物を干しっぱなしにしていることに気付き、洗濯物を入れに走った。
「くそっ。さっきまでは晴れてたのに……」
濡れた洗濯物を見て僕はそう悪態を吐く。
最近、やけに雨が降る回数が多い気がする。
まだ四月の後半だと言うのに。
心中でぼやきながら再びリビングまで戻り、ソファにダイブする。
「そういえばもうそろそろ木陰が帰ってくる時間だな」
時計を見ながら僕はそう呟いた。
雨音が家中に響いている。
その音を聞いて僕は一つ重要なことに気付いた。
「あれ?? 木陰って傘持ってたっけ??」
「ねぇ、あの人間は危険分子に違いないわよね??」
「ああ。少なくとも、人外にとっちゃあれ以上に恐ろしい人間は居ないんじゃないか?? ある程度の権力も資産もあるようだし」
彩理はあれでも一校のトップだ。
その気になれば生徒を巻き込むようなこともできるだろう。
「じゃあ……殺すべきかしら」
殺意のようなものが込められたその言葉に、僕は少したじろんでしまう。
「おいおい、いつからそんなに野蛮になったんだ??」
「全然野蛮じゃないわ。とても合理的な手段でしょ?? 別にあの人間が死んでも私は困らないし」
「お前は困らなくても木陰が困るんだ! 校長が殺されたらあの学校がどうなるかわかったもんじゃない。それに、後始末が面倒だろ??」
「それなら不審者に殺されたってことにしたらいいじゃない。最近、この街に出没するらしいわよ??」
「お前ってやつは……」
「まあ、冗談よ。そんなことするぐらい私が野蛮だったらアンタはこの世に居ないでしょうね」
玲沙のまったく笑えない冗談に僕は無意識にため息を溢した。
その時、僕の頭に冷たい液体が当たった。
「雨か……」
「そうみたいね。……大降りになる前に私は向こうに戻るわ。あっちは晴れてるからね」
「そうか。……またな」
「またね。……あ、そうそう、不審者の話は冗談じゃないからアンタも気を付けてね」
それだけ言い残すと玲沙は空間に飲まれていった。
徐々に、地面の色が変わる速度が速くなってきている。
僕は足早に我が家に帰ることにした。
「ただいま」
木陰は帰ってきていないと知りながらも僕はそう言って家の中に入った。
僕はリビングに入るとすぐに洗濯物を干しっぱなしにしていることに気付き、洗濯物を入れに走った。
「くそっ。さっきまでは晴れてたのに……」
濡れた洗濯物を見て僕はそう悪態を吐く。
最近、やけに雨が降る回数が多い気がする。
まだ四月の後半だと言うのに。
心中でぼやきながら再びリビングまで戻り、ソファにダイブする。
「そういえばもうそろそろ木陰が帰ってくる時間だな」
時計を見ながら僕はそう呟いた。
雨音が家中に響いている。
その音を聞いて僕は一つ重要なことに気付いた。
「あれ?? 木陰って傘持ってたっけ??」
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