僕は人を好きになれない

杜鵑花

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狂気的研究への勧誘

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 「あら?? 誰?? この人は」

「こいつは神薙彩理だ。木陰の通っている学校の校長でな。話しかけられたんだ」

とてつもなく面倒くさい状況になったと思いながら目の前の子どもの説明をする。
まったく、今日は出会いの日だな。

「そうなのね。こんな時間にこんなところに居るなんてよっぽど暇なのかしら」

「初対面の人によくそんなことが言えるね。それに、自虐ネタかな?? それは」

「聞こえてたの。別にアンタに言ったつもりはないんだけど」

二人ともどうしてこんなに喧嘩腰なんだろうか。
お互いに初対面のはずなんだが。

「そんなことより――」

会話の雰囲気に耐えかねたのか、彩理が話を切り替えるその一言を放った。
別に、そんな意図はないのかもしれないが。
彩理は続きの言葉を紡ぐ。

「君は科学者かなんかなの??」

「どうしてそんな質問をするのかしら??」

「いや、こんなお店に来るのは科学者か実験用具が切れて買いに来た校長ぐらいでしょ」

「違うわ。そんなことを訊いてるんじゃない。質問の意図を訊いているの。あの流れでわざわざそんなことを質問する意味なんてないじゃない??」

「ああ、そういう意味ね。……科学者だったら君も私の研究に誘おうかなっていう意図があったんだけど」

彩理が言う研究とは間違いなく不老不死についてのことだろう。
ということは割と大人数で研究をしているのだろうか。

「研究??」

「私の学校はちょっと特殊でね。信じられないかもしれないけど不老不死について研究してるの。私が持っている歴史書によるとどうやらこの街に居るらしいんだよ」

『不老不死』、『歴史書』、その二つの言葉に反応して玲沙がこっちに向き直る。
そして小声で話しかけてきた。

「ねぇ、アンタが前に言ってた歴史書ってもしかしてこいつが持ってるやつ??」

「ああ、間違いないだろう」

僕が小声でそう返すと、玲沙は再び彩理の方を向いた。

「あらそうなの。なんというか、非現実的でバカバカしいわね。その言葉に尽きるわ」

「……それで、最近、その研究の人手が足りなくなってきたから。君みたいな人でも喉から手が出るほど欲しいんだよ」

「そう。……そんな研究をしてなんの意味があるの??」

「意味なんて、わかりきってるよ。……不老不死を殺すため、それ以外にあると思う??」

殺す、というその容姿に反して重い一言に場の雰囲気が一瞬変わった。
その変化に臆することなく玲沙はまるで嘲笑するかのような口調で言葉を返した。

「何を言っているのかしら?? 殺せないから不老不死なんでしょ??」

「不可能を可能にするのが科学だよ。それで、誘いを受けるの?? 受けないの??」

「生憎と、私は科学者じゃないから断らせてもらうわ。アンタはああ言ったけどこの店には案外色んなやつが来るのよ??」
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