28 / 47
破章
狂気的研究への勧誘
しおりを挟む「あら?? 誰?? この人は」
「こいつは神薙彩理だ。木陰の通っている学校の校長でな。話しかけられたんだ」
とてつもなく面倒くさい状況になったと思いながら目の前の子どもの説明をする。
まったく、今日は出会いの日だな。
「そうなのね。こんな時間にこんなところに居るなんてよっぽど暇なのかしら」
「初対面の人によくそんなことが言えるね。それに、自虐ネタかな?? それは」
「聞こえてたの。別にアンタに言ったつもりはないんだけど」
二人ともどうしてこんなに喧嘩腰なんだろうか。
お互いに初対面のはずなんだが。
「そんなことより――」
会話の雰囲気に耐えかねたのか、彩理が話を切り替えるその一言を放った。
別に、そんな意図はないのかもしれないが。
彩理は続きの言葉を紡ぐ。
「君は科学者かなんかなの??」
「どうしてそんな質問をするのかしら??」
「いや、こんなお店に来るのは科学者か実験用具が切れて買いに来た校長ぐらいでしょ」
「違うわ。そんなことを訊いてるんじゃない。質問の意図を訊いているの。あの流れでわざわざそんなことを質問する意味なんてないじゃない??」
「ああ、そういう意味ね。……科学者だったら君も私の研究に誘おうかなっていう意図があったんだけど」
彩理が言う研究とは間違いなく不老不死についてのことだろう。
君もということは割と大人数で研究をしているのだろうか。
「研究??」
「私の学校はちょっと特殊でね。信じられないかもしれないけど不老不死について研究してるの。私が持っている歴史書によるとどうやらこの街に居るらしいんだよ」
『不老不死』、『歴史書』、その二つの言葉に反応して玲沙がこっちに向き直る。
そして小声で話しかけてきた。
「ねぇ、アンタが前に言ってた歴史書ってもしかしてこいつが持ってるやつ??」
「ああ、間違いないだろう」
僕が小声でそう返すと、玲沙は再び彩理の方を向いた。
「あらそうなの。なんというか、非現実的でバカバカしいわね。その言葉に尽きるわ」
「……それで、最近、その研究の人手が足りなくなってきたから。君みたいな人でも喉から手が出るほど欲しいんだよ」
「そう。……そんな研究をしてなんの意味があるの??」
「意味なんて、わかりきってるよ。……不老不死を殺すため、それ以外にあると思う??」
殺す、というその容姿に反して重い一言に場の雰囲気が一瞬変わった。
その変化に臆することなく玲沙はまるで嘲笑するかのような口調で言葉を返した。
「何を言っているのかしら?? 殺せないから不老不死なんでしょ??」
「不可能を可能にするのが科学だよ。それで、誘いを受けるの?? 受けないの??」
「生憎と、私は科学者じゃないから断らせてもらうわ。アンタはああ言ったけどこの店には案外色んなやつが来るのよ??」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説



甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる