僕は人を好きになれない

杜鵑花

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破章

実験器具専門での危惧すべき奇遇な出会い

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 「結構最近の店なんだな」

「あら、別に老舗なんて一言も言ってないわ。今は最新のものが一番よ。それに、実験器具の老舗なんてわけが分からないでしょ」

言われてみればそうである。
魔女が愛用する実験器具が売ってある店と聞いて無意識に古き良き店を想像してしまっていた。
思い込みとは恐ろしいものだ。

「最新のものが一番って言う割にはメールとか使ってないけどな」

「……それとこれは別よ。……とりあえず、店内に入りましょ」

そうして僕たちは店内に入った。
店の内装は普通の店とあまり大差なかった。
しかし、棚に並んでいる商品が異様だった。
ビーカーはもちろん、試験管やこまごめピペットまでも並んでいる。
どうやら本当に実験器具専門店のようだ。

「すごいな。三百六十度全方向に映画やドラマで見たことあるような器具が並んでる」

「品揃えが豊富だからね。この店は」

「こんなに種類があるとは思ってなかったよ。……ところで、今日はどれを買うんだ?? 割れ物しかないからできるだけ速く出たいんだが……」

僕が軽く棚を小突くだけでまるでドミノのように商品が落ちていきそうで気が気じゃない。
店内は商品棚がぎっしりと置かれているため尚更だ。

「そうね。壊れたのは顕微鏡とビーカーだから、あそこのコーナーにあると思うわ」

「一人で買ってきてくれないか?? 僕はできるだけ動きたくない」

「そう。まあわかったわ。じゃあ入口付近で待っててちょうだい」

そう言われて、僕は慎重に入口付近まで移動した。
遠くで玲沙が商品棚を華麗に避けて動いているのが見える。
何故あんな動きができるのだろうか。
そんなことを考えていると、不意に入口の自動ドアが開いた音がした。
僕は反射的に横に避ける。
意外と需要があるんだな、とそう思って入ってきた人を見て僕は驚いた。
ここで絶対に遭うことはないだろうと思っていた人物。
身長が低く、特徴的な色の髪をしているその人は神薙高等学校長、神薙彩理だった。

「あれ?? 君がどうしてここに居るの??」

「それはこっちのセリフですよ」

何故こんな時間に校長がこんな場所に来ているのだろうか。
何をしに来たのだろうか。
様々な疑問が脳内に浮かび、脳がパンクしそうになったが
僕は冷静にそう返した。

「私はちょうど学校の実験用具が切れたから買いに来ただけだよ。決してサボってるわけじゃないから勘違いしないように」

「僕もそんなところですかね」

「君、実験とかするの??」

「あ、いや、僕はしないんですけど単に知り合いの買い物に付き合――」

「お待たせ! 無事に買えたわよ」

僕の言葉を遮ってそんな声が響いた。
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