僕は人を好きになれない

杜鵑花

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破章

遭遇

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 「おはようございます。皐月さん、今日は早いですねって誰ですか?! その人は?!?!」

ドアが開いた音の次にそんな驚愕の声が響いた。

「あら、あなたが噂の??」

「う、噂??」

「木陰、こいつの話には耳を貸さないほうがいい」

「……いったいぜんたい何が起こってるんですか?!」

「別に何も混乱することじゃない。ただ僕の知り合いが早朝から来たってだけだ」

「そうよ。魔法使いの知り合いがね」

「ま、魔法使い??」

玲沙がそんなことを言った所為で木陰はさらに混乱した。
僕は玲沙を睨みつけた。

「気にするな。こいつは俗に言うイタイ子なんだよ」

今度は玲沙がこっちを睨んできた。

「そうなんですか。可哀想に」

「ちょっと! ホントだって!!」

「やめとけやめとけ、言ったってどうせ信じないよ」

木陰には聞こえない程度の声で僕は玲沙にそう言った。
すると玲沙は少し不服そうな顔をした後「隠すことにするわ。どうせ冗談ぐらいにしか思ってないでしょうしね」と返答した。

「……で、そんな人がなんの用でこんな朝早くに居るんですか??」

当たり前だが木陰はそんな質問をした。
本人は気づいていないようだが結構毒舌である。
無意識な言葉が一番効くというのを知っているのだろうか。
まあ、その矛先が僕に向いてるわけじゃないから止めないが。

「ちょっとした野暮用よ。こいつと話さないといけないことがあってね」

「話さないといけないこと、ですか。でもなんでこんなに早く??」

「予定が合わなくてね。この時間しかなかったのよ」

どうせ暇だろと小声で言うと左足の太ももをつねられた。
痛い。

「まあ、用事はとっくに済んだし私は帰るとするわ」

「あれ?? 話はすでに終わってたんですか??」

「おおかたね。続きはメールででもするわ」

「お前がメールか。珍しいもんだな。今までお前からメールが来たことなんて一度もない」

「時代にはついてってるつもりよ。……それじゃあ、またいつか会いましょう」

そう言って玲沙は家を出ていった。
本当に、嵐のような奴だ。

「なんか、不思議な方ですね。こう、普通とは違うような感じが……」

「不思議ねぇ……まあ僕も変人だとは思ってるよ」

「……っと、そうこうしているうちにもうこんな時間に……。急いで朝食を作るので待っていてください」

現在時刻は六時半になっていた。
今日は心なしか時が過ぎるのが早い気がする。
あの魔法使いが時間でもいじったのだろうか。
そんな事を考えながら、僕は朝食ができるのを待った。
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