僕は人を好きになれない

杜鵑花

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破章

先回り

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 そんなこんなで僕は家に着いたのだが……。
リビングには案の定というべきか木陰ではない先客が居た。

「おかえりなさい。さっきぶりね」

先回りするだろうとは思ってはいたが、それでも僕は顔をしかめた。
もう木陰を隠すのは諦めるしかないかもしれない。

「いやらしい能力だな。人の家に不法侵入するなんてな」

「人聞きが悪いわね。ただお邪魔してるだけよ。家主がいない間に」

「ものは言いようだな。まあお前のはどうにもなってないが」

「……それにしても、変わらないわね。アンタの家も」

僕の皮肉を無視し、部屋を見回しながら彼女はそう言う。

「ちゃんと手入れしているからな。……っと、そんなくだらない話より……」

一呼吸置いてから僕は核心を突くような質問を繰り出した。

「お前の目的はなんだ??」

「あらあら、多少強引だったから勘づかれてるとは思ってたけど、いきなりとんだ質問をしてきたものね。……まあいいわ。今更隠しても意味ないし教えてあげる。……私の目的は、アンタの秘密を暴くことよ。アンタの反応で私は確信した。アンタは何か隠しているとね」

言い訳をしようとしたが僕は言葉に詰まった。
それほど、彼女の言葉は的を射ていた。
すべてを打ち明ける、それしか打つ手がない。
いわゆる、チェックメイトなのだ。
いずれこういったことになるとは簡単に予想できていたがまさかこんなにも速いとはな。

「わかったわかった。降参するよ。お前がこうも僕のことを気にかけてるとは予測できなかった。隠し事を話すよ」

「なんというか。ショックだわ。本当に長年の知り合いに隠し事をされていたなんて」

彼女はそう落胆の声を洩らした。
しかし、僕は気にせずに話を続ける。

「……まあ、簡潔に言うと、とある自殺少女を拾ったってだけだ」

僕はまるで隠そうとなんて思っていなかったかのようにさらっとその秘密を明かした。
今まで気づかなかったがこんなにも僕のことを気にかけてくれていたのだ。
僕もそろそろこいつのことを信用しなければいけないだろう。
状況も状況だが。

「はぁ~、おおよそ予想はついていたけどアンタってほんっと懲りないわね。あの子のことを忘れたのかしら??」

「忘れるわけ無いだろ。忘れられるわけ無いだろ??」

「私からみたら、同じ運命を辿っているように見えるのだけれど」

「今度は絶対にあんなエンドにはしない。させるかよ」

「その言葉を信じるわ。運命を変えてみせなさい」

彼女がそのセリフを言い終えた瞬間、家の何処かのドアが開く音が響いた。
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