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破章
散々な散歩
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僕は静かな街をのんびりと歩いていた。
早朝のためか車通りが非常に少なく散歩にはうってつけの時間だった。
こんなにも静かな散歩は初めてかもしれない。
しばらく、無意識に任せて歩を進めていると、気づけば木陰と出会ったあの公園に着いていた。
「僕は案外気に入ってるのかもな。この場所を」
それは木陰と出会った場所だからか、それとも――
その時、不意に近くから物音が聞こえた。
別にこれといって不思議なことではないのだが僕は一応警戒しながらその方向を見る。
「あら、こんな時間に珍しい奴に出会ったわね」
早起きは三文の徳ということわざがあるが僕はそれを今日を持って信用しないことにした。
こんな朝早くからよりにもよって人外に遭うとは。
「こっちのセリフだ。人が気分良く散歩しているっていうのに」
「そういえば散歩が趣味だったわね。まさかこんな早い時間にしているとは思わなかったけど」
「今日はたまたまだよ。……それより、なんでこんなところに居るんだ??」
「ここが一番簡単に外に出られる場所なのよ。他の場所から出ようとしたら割と体力を使うからね」
「一番簡単に外に出られる?? それはどういうことだ??」
「別に、言葉の通りだけど原理を説明すると単にこの公園の存在が曖昧になっているからなのよ。人間が全然来ないから幻として処理されようとしているのかしらね。だから簡単にこっちまで来れるの」
僕はその話を真剣に聞いていたが、魔法を学んでいるわけではないので正直さっぱりわからなかった。
要するに、この公園が幻想世界に飲み込まれそうになっているということだろうか。
「そういうことか」
「……ちゃんと理解してるのかしらね」
「もちろんさ。……ところで今日はどうして外に出たんだ?? お前が幻想世界から外出することなんて滅多にないだろ??」
こいつは、魔女のため食料や水を取らなくとも生きていける。
だからわざわざこっちまで来る必要性はないと思うのだが。
「長年愛用していた実験器具が壊れてね。今日は新しいやつを買いに来たのよ」
「それはお気の毒だな。それしか言葉が見つからないよ」
「本当にそう思ってるのかしら?? まあ、そんなことより、ここで会ったのも何かの縁だし久しぶりにアンタの家に遊びに行っていい??」
「駄目に決まってるだろ?! お前は用事をさっさと済ませろよ」
とんでもないことを抜かすこいつに僕はそう即答した。
こいつが家に来ると絶対に面倒くさいことになる。
「用事なんて後からでもいいわ。やましいものがないなら別にいいでしょ??」
いつもなら割とすぐに諦める彼女だが今日は何故かしつこかった。
何が原因かはわからないが怪しまれていると僕は直感した。
「神聖なる僕の家にお前を入れることなんかできるかよ」
「前は普通に入れてくれたじゃない! やっぱり、なんか隠してるんじゃないの??」
「まさか。お前に何を隠すってんだ。……とにかく、駄目なもんは駄目だからな!!」
それだけ言うと、僕は足早にその場を去った。
不味いことになったなと考えながら――
早朝のためか車通りが非常に少なく散歩にはうってつけの時間だった。
こんなにも静かな散歩は初めてかもしれない。
しばらく、無意識に任せて歩を進めていると、気づけば木陰と出会ったあの公園に着いていた。
「僕は案外気に入ってるのかもな。この場所を」
それは木陰と出会った場所だからか、それとも――
その時、不意に近くから物音が聞こえた。
別にこれといって不思議なことではないのだが僕は一応警戒しながらその方向を見る。
「あら、こんな時間に珍しい奴に出会ったわね」
早起きは三文の徳ということわざがあるが僕はそれを今日を持って信用しないことにした。
こんな朝早くからよりにもよって人外に遭うとは。
「こっちのセリフだ。人が気分良く散歩しているっていうのに」
「そういえば散歩が趣味だったわね。まさかこんな早い時間にしているとは思わなかったけど」
「今日はたまたまだよ。……それより、なんでこんなところに居るんだ??」
「ここが一番簡単に外に出られる場所なのよ。他の場所から出ようとしたら割と体力を使うからね」
「一番簡単に外に出られる?? それはどういうことだ??」
「別に、言葉の通りだけど原理を説明すると単にこの公園の存在が曖昧になっているからなのよ。人間が全然来ないから幻として処理されようとしているのかしらね。だから簡単にこっちまで来れるの」
僕はその話を真剣に聞いていたが、魔法を学んでいるわけではないので正直さっぱりわからなかった。
要するに、この公園が幻想世界に飲み込まれそうになっているということだろうか。
「そういうことか」
「……ちゃんと理解してるのかしらね」
「もちろんさ。……ところで今日はどうして外に出たんだ?? お前が幻想世界から外出することなんて滅多にないだろ??」
こいつは、魔女のため食料や水を取らなくとも生きていける。
だからわざわざこっちまで来る必要性はないと思うのだが。
「長年愛用していた実験器具が壊れてね。今日は新しいやつを買いに来たのよ」
「それはお気の毒だな。それしか言葉が見つからないよ」
「本当にそう思ってるのかしら?? まあ、そんなことより、ここで会ったのも何かの縁だし久しぶりにアンタの家に遊びに行っていい??」
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とんでもないことを抜かすこいつに僕はそう即答した。
こいつが家に来ると絶対に面倒くさいことになる。
「用事なんて後からでもいいわ。やましいものがないなら別にいいでしょ??」
いつもなら割とすぐに諦める彼女だが今日は何故かしつこかった。
何が原因かはわからないが怪しまれていると僕は直感した。
「神聖なる僕の家にお前を入れることなんかできるかよ」
「前は普通に入れてくれたじゃない! やっぱり、なんか隠してるんじゃないの??」
「まさか。お前に何を隠すってんだ。……とにかく、駄目なもんは駄目だからな!!」
それだけ言うと、僕は足早にその場を去った。
不味いことになったなと考えながら――
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