18 / 47
破章
動機
しおりを挟む
木陰が着替えを終えて、部屋から出てきた。
僕は慌てて手に持っているハウツー本を元の場所に戻す。
これについていろいろと考察するのは後にして今は僕が本の存在を知ったということを悟られないようにするべきだ。
僕は即座にそう思考し、冷静に頭を回転させ始めた。
「あれ?? どうしたんですか?? なんか、汗かいてません??」
制服姿から部屋着姿に変わった木陰が不思議そうにそう訊いてきた。
僕は滲んだ冷や汗を近くにあったタオルで拭いながら、必死に言い訳を考える。
「最近、暑くなってきたからな。汗だってかくさ」
「そうですよね。最近は異常過ぎますもんね。エアコンじゃ足りないほど暑いです」
僕は話を逸らすことに成功していた。
内心でガッツポーズをして僕はそのまま話を続けた。
「まあ、この家にはエアコンなんてないけどな」
「前から気になっていたんですが、エアコンがないのはなんでなんですか?? 体がドロドロに溶けちゃいますよ」
「家を買った当時はそこまで暑くなかったからな。エアコンなんて必要なかったってわけだ。ただ、今年の夏は暑くなりそうだから付けようか悩んでるところだ」
「付けることを強くおすすめします!」
「まあ検討に検討を重ねて検討を加速させておくよ」
「そうですか。あまり期待しないでおきます。……っと、そんなことより私は買ってきた本を読まなきゃいけないのでそろそろ部屋に戻ります」
「お、おう。……読書を十分に満喫するといい」
「なんか、歯切れの悪い相槌ですね……。まあ、いいですけど」
そう言うと、木陰は荷物を持って再び部屋へと戻っていった。
とりあえず、一難は去ったが僕にはまだ解決すべき課題が残っていた。
「なんでいきなりあんな本を買ったんだろう」
課題とはそのことである。
もしかすると、好きな異性でもできたのかもしれない。
可能性としてはその線が一番だ。
だが、あの本にはろくでもないことが書かれていそうである。
ド偏見だと思うが、恋愛のハウツー本とはそんなもんだ。
実際に読んでみたことはないが。
まあ、あの本が未来の予言書にならないことを祈るしかない。
「……人のプライベートに首を突っ込むのは野暮か」
僕はあの本の存在をキッパリと忘れることにした。
その方が精神的にも楽だろう。
しかし、それでも気になってしまうのが僕である。
夕食のときにでもそこはかとなく話題を振ってみることにしよう。
その結論に至った後、僕はお風呂掃除やテレビなどで夕食までの時間を潰した。
僕は慌てて手に持っているハウツー本を元の場所に戻す。
これについていろいろと考察するのは後にして今は僕が本の存在を知ったということを悟られないようにするべきだ。
僕は即座にそう思考し、冷静に頭を回転させ始めた。
「あれ?? どうしたんですか?? なんか、汗かいてません??」
制服姿から部屋着姿に変わった木陰が不思議そうにそう訊いてきた。
僕は滲んだ冷や汗を近くにあったタオルで拭いながら、必死に言い訳を考える。
「最近、暑くなってきたからな。汗だってかくさ」
「そうですよね。最近は異常過ぎますもんね。エアコンじゃ足りないほど暑いです」
僕は話を逸らすことに成功していた。
内心でガッツポーズをして僕はそのまま話を続けた。
「まあ、この家にはエアコンなんてないけどな」
「前から気になっていたんですが、エアコンがないのはなんでなんですか?? 体がドロドロに溶けちゃいますよ」
「家を買った当時はそこまで暑くなかったからな。エアコンなんて必要なかったってわけだ。ただ、今年の夏は暑くなりそうだから付けようか悩んでるところだ」
「付けることを強くおすすめします!」
「まあ検討に検討を重ねて検討を加速させておくよ」
「そうですか。あまり期待しないでおきます。……っと、そんなことより私は買ってきた本を読まなきゃいけないのでそろそろ部屋に戻ります」
「お、おう。……読書を十分に満喫するといい」
「なんか、歯切れの悪い相槌ですね……。まあ、いいですけど」
そう言うと、木陰は荷物を持って再び部屋へと戻っていった。
とりあえず、一難は去ったが僕にはまだ解決すべき課題が残っていた。
「なんでいきなりあんな本を買ったんだろう」
課題とはそのことである。
もしかすると、好きな異性でもできたのかもしれない。
可能性としてはその線が一番だ。
だが、あの本にはろくでもないことが書かれていそうである。
ド偏見だと思うが、恋愛のハウツー本とはそんなもんだ。
実際に読んでみたことはないが。
まあ、あの本が未来の予言書にならないことを祈るしかない。
「……人のプライベートに首を突っ込むのは野暮か」
僕はあの本の存在をキッパリと忘れることにした。
その方が精神的にも楽だろう。
しかし、それでも気になってしまうのが僕である。
夕食のときにでもそこはかとなく話題を振ってみることにしよう。
その結論に至った後、僕はお風呂掃除やテレビなどで夕食までの時間を潰した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

平凡な高校生活を送る予定だったのに
空里
恋愛
高校生になり数ヵ月。一学期ももうそろそろ終わりを告げる頃。
僕、田中僚太はクラスのマドンナとも言われ始めている立花凛花に呼び出された。クラスのマドンナといわれるだけあって彼女の顔は誰が見ても美人であり加えて勉強、スポーツができ更には性格も良いと話題である。
それに対して僕はクラス屈指の陰キャポジである。
人見知りなのもあるが、何より通っていた中学校から遠い高校に来たため、たまたま同じ高校に来た一人の中学時代の友達しかいない。
そのため休み時間はその友人と話すか読書をして過ごすかという正に陰キャであった。
そんな僕にクラスのマドンナはというと、
「私と付き合ってくれませんか?」
この言葉から彼の平凡に終わると思われていた高校生活が平凡と言えなくなる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる